欧州や英国の中央銀行は依然、異例な緩和策を維持している。そんな中、ユーロ安やポンド安の支援もあり、今年に入り両地域での景気やインフレ動向に改善が目立つ。こういった中、欧州中央銀行(ECB)は早くて9月の定例理事会で現在実施している資産購入規模の縮小(テーパリング)に動くとの見方が広がりつつある。

実際、ECBのドラギ総裁も27日の演説で、強く、広範にわたる経済の回復を強調したほか、デフレからリフレに移行しつつあると指摘。また、インフレを抑制している要因は「一時的なもの」との見解を示した。この発言は、ECBのテーパリング観測を強めた。一方、ECBの関係者はトラギ総裁の演説を受けた市場の反応は行き過ぎとの見方を示した。トラギ総裁の演説はあくまでも、ユーロ圏経済の力強さの認識を強調する一方で、金融面での支援がなお必要だと警告する中立的な姿勢を示しているとした。しかし、市場の思惑は完全に払拭せず。

また、英国の中央銀行も、直近の金融政策会合で利上げを主張した委員が予想外に増えたことから年内の利上げ観測が浮上。一方、カーニー総裁は、「英国のEU離脱が経済に与える影響が不透明で引き締め協議は時期尚早」との姿勢を維持していた。しかし、カーニー総裁は28日のフォーラムで態度を一転。金融緩和の解除が必要となる可能性に言及した。

市場はECBや英中銀の総裁の発言を受けて混乱。ただ、中央銀行が異例な緩和策を正常化することが容易ではないことは、米連邦準備制度理事会(FRB)がすでに証明済みだ。まず、当時のバーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が2013年5月に異例の量的緩和の縮小を示唆したことにより、国際金融市場に大きな波乱(動揺)を巻き起こした。債券相場は急落。10年債利回りは半年間で2%手前から、3%台へ急伸した。この現象は、テーパー・タントラム(Taper tantrum、市場の癇癪)と呼ばれている。

その後、米国経済の回復が思ったようなペースで続かず、FRBが2015年12月に10年ぶりの利上げに踏み切ったあとも、利回りの低下が続き、FRBが緩和策解除を示唆する前の水準を下回り1.47%まで低下するという経緯をたどった。ユーロやポンドも今後、金融政策の行方を巡る憶測に乱高下が予想される



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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:中央銀行の異例な緩和策転換の道のりは険しく