〇不安定要因続くも、東南アジア期待見直しの公算〇

市場を揺さ振る三つの要因、トランプ「ロシアゲート」疑惑、米利上げシナリオ、北朝鮮情勢は、展開予測を立て難い。突発的ニュース(見方の変動)に即応体制を取る動きと考えられるが、局面としては、チョットした「谷間」となる可能性があり、日本株は反発力を試す展開が想定される。

トランプ混乱に対し、FRB関係者の初のコメントが伝えられた。セントルイス地区連銀のブラード総裁は19日、「政府・議会での主要政策課題の膠着はほぼ当たり前となっているため、様々なイベントによって主要政策の決定が引き続き妨げられたとしても、現在の見通しが変更されることはない」と述べた(ロイター)。「型破りの大統領が誕生することは想定されていた」とし、「通常より不安定な展開となるだろう」が、「少なくとも17年については、見通しに影響することは想定していない」。FRBの総意かどうかは分からないが、問題に距離を置き、経済統計を睨みつつ金融政策を遂行する姿勢と考えられる。現状では、6月利上げが依然有力(雇用統計が焦点)だ。

コミ—前FRB長官の議会証言を進める方向で動くと思われるが、トランプ大統領は外遊で不在。世論調査で「支持率38%、就任以降で最低」と報じられたが、元々約4割しかない。遅れていた予算教書を23日に発表予定で、「今後10年で2000億ドルのインフラ支出提案」(民間から8000億ドル—日本など海外含む—の具体化プランを含むかどうかは不明)とされ、政策期待が戻るかどうかが注目点になる。

ドルは大統領選前に戻り、「トランプ相場のドル高」は幻となりつつある。不安定な動きが続くと見られるが、投機筋のショートポジションは円とカナダドルに戻った(5/16時点のIMM通貨先物取組は、円6万8枚の売り越し、前週比2万3701枚の売り越し増、カナダドル9万8000枚売り越し、同1万1785枚増)。ユーロは買い越し増、英ポンドは売り越し減、メキシコペソは買い越し微増。ブレグジット協議は6月19日からと伝えられており、6月中旬(6/8英総選挙)までは円高リスクは比較的小さいと想定される。

先週末19日にジャカルタ総合指数が最高値を更新、ホーチミン市場は9年超ぶりの高値、インド株も最高値圏にある。インドネシアやベトナムは格付け会社の「格上げ」が材料だが、ブラジルの波乱などと明暗を分けている。企業業績集計で、16年度18.3%増益(製造業4.8%増益)、17年度予想9.2%増益(同16.6%増益)。内訳は分析されていないが、海外での稼ぎで押し上げられていると見られる。とりわけ、アジアの拡大が安定基盤として考えられる。東南アジア市場を積極的に取り込むための「TPP11」は、空中分解が避けられたところと受け止められるが、官民共同での「国際医薬協力推進機構」の旗揚げなどが計画されている。日本式医療・介護を主に東南アジア市場に普及させる狙いだ。インフラ投資なども含め、経済協力が深耕する公算がある。日本型人材交流を行えれば、移民ではない人手不足対応にも資すると考えられる。東アジアは不安定だが、東南アジアの成長取り込みが注目点になる公算があろう。



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出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/5/22号)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆東南アジア成長期待は戻るか◆