[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;27754.36;+60.71TOPIX;1988.04;+8.82


[後場の投資戦略]

 米国の雇用統計とISM非製造業景気指数の大幅な上振れによって、先週高まった米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ停止期待は後退しており、2日に3.39%まで低下した米10年債利回りは6日、3.64%まで大きく上昇してきた。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)直後まで4.9%程度にとどまっていた金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)も、6月頃のピークを目途に5.11%程度まで切り上がってきた。

 こうした中、今晩はワシントン・エコノミッククラブにおいてパウエルFRB議長のインタビューが予定されている。大幅に上振れた雇用統計後の初めての発言とあって注目度は高い。先週の記者会見でパウエル議長は、(1)「ディスインフレ」に度々言及したことに加え、(2)年始からの金利低下・株高をけん制せず、また、(3)年内の利下げを否定しつつも、市場の利下げ期待を明確に一蹴しなかった、(4)利上げ休止後の利上げ再開を検討していないと発言、などと全体的にハト派に転換したことを示唆したような印象を市場に与えた。

 しかし、雇用統計の上振れを受けて、アトランタ連銀のボスティック総裁はターミナルレートが、最新のドットチャート(政策金利見通し)が示す5.125%を超える可能性が高まったことや、場合によっては利上げ幅を0.25ポイントから0.5ポイントへ戻す可能性などに言及した。足元でFRBの再タカ派化を警戒する動きが強まる中、今晩のパウエル議長の発言に注目だ。仮に、先週の記者会見後の内容を大きくタカ派寄りに修正してこなければ、再び利上げ長期化懸念が後退する形で、株式市場の上昇が再開しそうだが、マイナスサイドの振れに警戒しておいた方がよいだろう。

 ほか、国内の金融政策動向も気掛かりだ。前日は、政府が日本銀行の次期総裁として雨宮氏に打診する方向で調整と報じられた。雨宮氏は黒田総裁とともに金融政策運営を長期にわたって担ってきたため、他の総裁候補と比較して、金融政策運営の修正が劇的に変化する可能性は低いとみられている。これを受け、前日は国債長期金利の先高期待が一時低下し、米雇用統計後の為替のドル高・円安がもう一段進んだ。株式も前日の東京市場では買いが先行した。しかし、為替の円安は進展したとはいっても、足元のドル円は1ドル=132円台前半と、米雇用統計後と比べてさほど大きな変化はない。また、株価も結局、前日は午後に大きく伸び悩んだ。

 本日午前に発表された昨年12月の毎月勤労統計調査(速報)によると、現金給与総額(名目賃金)は前年同月比+4.8%と、1997年1月(同+6.6%)以来、25年11カ月ぶりの高い伸びとなり、市場予想(+2.5%)を大幅に上回った。こうした材料も後押しする形で、結局、日銀の新総裁が誰になっても、国内金融緩和の修正路線は変わらないと考えられていることが、さほどドル高・円安が進まない要因として影響しているのかもしれない。

 他方、米アップルが、スマートフォン「iPhone」の最新機種「iPhone14」の上位機種「Pro」を中国で800元(約1万5500円)値引いて販売している実態が伝わっている。
今回、「iPhone Pro」で見られている値下げ率7−9%は通常、低価格モデルに適用されるもののようで、また、発売後わずか数カ月での大幅値引きは異例なことであるという。需要の弱さが上位機種にも及んでいることを示唆していると報じられている。

 また、モルガン・スタンレー証券はファクトセットなどのデータを基に、S&P500種株価指数を対象とした予想一株当たり利益(EPS)の前年比伸び率が、2000年以降で5度目となるマイナス圏に陥ることを指摘。過去のパターンから、今後、株価の下落が訪れることを警告している。

 今後、米企業の業績落ち込みや、日銀新体制後の緩和修正路線への思惑継続により、米株の下落と円高が進めば、日本株も厳しい展開になりそうだ。ただ、目先は今晩のパウエル議長発言とその後の為替動向を見極めたい。なお、今晩はバイデン米大統領の一般教書演説も予定されている。
(仲村幸浩)
<AK>
情報提供元: FISCO
記事名:「 業績悪化と円高リスクが懸念材料