[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;29841.26;+64.46TOPIX;2056.37;+7.85

[後場の投資戦略]

 決算発表が一巡し、12月のIPO(新規株式公開)ラッシュを控えたこの時期は新興株に物色の矛先が向きやすい。前日のマザーズ売買代金は2033億円で、3月2日以来の2000億円台乗せとなった。アスタリスクの上値追いなどを見ると、株式需給は良好で、個人投資家の売買回転もうまく利いているのだろう。もっとも、株価指標面で正当化しづらい水準まで急騰している銘柄も少なくなく、米インフレ・金利上昇の逆風を跳ね返し続けられるかも見極めたいところ。

 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.76%(+0.03pt)へ一段と上昇。いったんは落ち着きつつあった10年物国債利回りも1.61%(+0.05pt)まで上昇した。製造業景況感が改善し、インフラ投資法案が成立したとはいえ、インフレへの懸念がくすぶるうちは素直に好感しづらいかもしれない。足元で複数の前地区連銀総裁から政策金利目標を最終的に3~4%
に引き上げることになるとの発言が出てきている。

 また、サマーズ元財務長官はインフレ抑制に失敗すればトランプ前大統領の返り咲きをもたらす可能性があるなどと述べた。12日に発表された11月のミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は予想に反して低下し、10年ぶりの低水準だった。製造業の回復や巨大ハイテク企業の成長で恩恵に浴する人々がいる一方、インフレにあえぐ人々が多いのも事実だろう。

 25日の感謝祭前後から始まる年末商戦の行方が気掛かりなほか、来年の中間選挙を前に経済的な分断が進む恐れもありそうだ。まずは今晩発表される10月小売売上高を見極めたい。

 日本では、引き続き日経平均の3万円台回復に期待する声が根強くある一方、9日の当欄「3万円台回復に向けた買い手は誰?」で述べたように、3万円に向けて上値を買う投資家が少ないとの見方がじわりと広がってきた印象を受ける。米中の緊張緩和を期待材料に挙げる向きもあるが、そもそも足元で投資論点としてそれほど重要視されていただろうか。本日の値動きを見ても買いを入れているのはヘッドラインに反応して機械的に売買するタイプの投資家に限られる印象を受ける。

 米金利上昇や円安進行を日本株の追い風と捉える向きもあるが、(1)自動車各社の値動きなどを見るとクオリティ重視が鮮明で、日本株全体に追い風となるバリュー
(割安)株シフトは限られる。また(2)原材料高や円安進行による交易条件の悪化も重要な投資論点として浮上しており、素直に円安を好感しづらい。

 それに後日改めて取り上げたいと思うが、(3)7-9月期決算発表を通過しても日経平均の予想EPS(1株利益)増額は限定的だった。これらも踏まえ、日経平均の3万円台回復はまだまだ「近くて遠い」とみておきたい。
(小林大純)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 日経平均は4日続伸、それでも「3万円が遠い」理由