日経平均は続落。256.82円安の28791.20円(出来高概算4億7000万株)で前場の取引を終えている。

 週明け28日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、150ドル安となった。バイデン政権と超党派議員で合意したインフラ計画の実現に懐疑的な見方が広がり、航空機のボーイングの下落なども重しとなった。一方、長期金利の低下でハイテク株比率の高いナスダック総合指数は1.0%の上昇となり、過去最高値を更新。本日の東京市場でも半導体関連などの値がさハイテク株に買いが入ったものの、NYダウの下落が嫌気され、日経平均は120円安からスタートした。朝方には28735.81円(312.21円安)まで下落する場面があり、その後も週末の米6月雇用統計など各種経済指標の発表を前に積極的な押し目買いの動きは限られ、軟調な展開だった。なお、6月末の配当権利落ちの影響がおよそ28円ある。

 個別では、ソフトバンクG<9984>が2%の下落となっており、ファーストリテ<9983>、トヨタ自<7203>、三菱UFJ<8306>などのメガバンク株も軟調。配当権利落ちのJT<2914>は3%超、原油安が嫌気されたINPEX<1605>は4%超下落している。象印マホービン<7965>は好決算ながら業績修正済みとあって売りに押され、ヒマラヤ<7514>も材料出尽くし感から東証1部下落率上位に顔を出している。一方、レーザーテック<
6920>、任天堂<7974>、ソニーG<6758>、東エレク<8035>は小じっかり。独通信大手から5G(次世代通信規格)通信網を受注したNEC<6701>は4%超、決算が好感されたしまむら<8227>は6%近く上昇している。外資系証券の投資判断引き上げが観測されたシスメックス<6869>も上げ目立つ。また、アジア投資<8518>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。

 セクターでは、鉱業、ゴム製品、ガラス・土石製品などが下落率上位で、その他も全般軟調。上昇したのは精密機器と電気機器の2業種のみだった。東証1部の値下がり銘柄は全体の79%、対して値上がり銘柄は18%となっている。

 本日の日経平均は29000円を下回ってスタートすると、200円超の下落で前場を折り返した。なぜか日本では報道が少ないものの、米インフラ計画を巡って早くもさや当てが始まったようだ。インフラ計画と民主党の要求するその他支出案が「一体でないと署名しない」などとバイデン大統領が発言。共和党上院トップのマコネル院内総務が合意順守を要求し、バイデン氏は釈明に追われることとなった。25日の当欄で述べたとおり、独立記念日に伴う休会入り(25日)より前に合意したい事情があったとみられ、今後も財源などを巡って紆余曲折があることは容易に想像できる。当初の2.3兆ドルから1兆ドル規模まで縮小した計画でこの有り様なら、やはり大規模な経済対策は期待しづらい。

 新型コロナウイルス感染再拡大への懸念も相まって、世界経済拡大への期待は失速気味なのだろう。日経平均は29000円台を維持できず、また上値を切り下げる格好となった。底堅さを強調していた市場関係者には残念な動きかもしれない。今週は月末月初とあって米6月雇用統計など経済指標の発表が多く、これらの内容を見極めたいという思惑はもちろんあるだろう。しかし、いつも「~~待ち」という説明を繰り返しているうちに、日経平均は4カ月以上も年初来高値を更新できずにいる。

 改めて強調するが、仮に強めの経済指標が飛び出してきたとしても、コロナ禍からの回復ペース鈍化や経済対策効果の息切れから「これがピーク」と受け止める向きが増えてきたのが重要なのである。また、先の米連邦公開市場委員会(FOMC)を受け、
「米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に動く可能性がある」と意識された点ももう1つのポイントだ。結果、「衆目一致で」景気高揚に期待することは難しくなってしまった。日経平均は上値切り下げトレンドを脱せず、底堅くとも「アップサイドに乏しい」なら投資家は積極的に買い参加してこない。堅調なのは世界的にインターネットサービスを席巻する米ハイテク企業ばかりである。

 相場全体のアップサイド期待が低下している影響を顕著に受けているのはIPO(新規株式公開)かもしれない。6月後半のIPOラッシュ終盤に入り、買い疲れ感も相まって需給主導で初値を飛ばす銘柄は限られるようになった。こうしたなか、前日から人気化しているのが25日上場の日本電解<5759>であり、本日堅調な初値を付けたのがOPS<7699>だ。日本電解は電解銅箔を、OPSはプラスチック製品を手掛ける。公募・売出規模などには大きな違いがあるが、両社共通しているのは新興株として上場しながら大手企業並みの株価バリュエーションで公開価格設定されたことだろう。

 つまり、IPO銘柄を積極取引する投資家もバリュエーション重視に舵を切りつつあるということだ。昨年10月までのマザーズ指数の上昇局面では、PER(株価収益率)を100倍超まで切り上げるIT関連のIPO銘柄がざらにあった。それも「市場全体にバリュエーションの一段の向上が期待できる」との見方が背景にあったからこそだろう。こうした期待が薄れつつあるなか、「IPO銘柄の価格設定のあや」に活路を見出す投資家が増えてきたのだと考えられる。

 ちなみに日本電解は公開価格(1900円)が仮条件(1800円~2480円)の上限に決まらず、価格決定過程を人気度そのものと捉える向きから「不人気」とのレッテルが貼られていた。しかし、公開価格は需要家(投資家)と発行企業双方への配慮のバランスから決まるもので、「仮条件のどこで決まったか」というのはそのバランスをどのようにとったか考察するうえでの材料の1つに過ぎない。人気度そのものと捉えるのは誤りだろう。今後のIPO改革のためにも、幅広い価格帯を提示して投資家にゆだねるやり方への理解が進むことに期待したい。
(小林大純)
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情報提供元: FISCO
記事名:「 日経平均は続落、IPOに見る「相場観」と「投資機会」