日経平均は9日ぶり反落。274.96円安の25245.92円(出来高概算6億7000万株)で前場の取引を終えている。

 12日の米株式市場でNYダウは続落し、317ドル安となった。全米で新型コロナウイルス感染者数の増加が続き、入院患者数も2日連日で過去最多に上った。シカゴ市長が市民に外出を控えるよう勧告を出し、景気回復に影響するとの懸念から売りが出た。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も反落し、0.7%の下落。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで115円安からスタートすると、下げ幅を広げる展開となった。
前日までの8日続伸で2500円超上昇していたことから、短期的な過熱感に伴う売りが出て、前場引けにかけて25225.10円(295.78円安)まで下落する場面があった。

 個別では、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、ダイキン<6367>などが軟調。
ソフトバンクGは出資先である中国アリババ集団傘下の金融会社の上場中止を習近平国家主席が決めたと報じられ、売り材料視されているようだ。前日に10月工作機械受注の改善を受けて買われたファナック<6954>が本日は3%超下落し、キーエンス<6861>
や日本電産<6594>もやや下げが目立つ。決算発表銘柄では博報堂DY<2433>や丸井G<
8252>が急落した。一方、ソニー<6758>、ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、東エレク<8035>などは堅調。7-9月期の赤字幅が大幅に縮小した日産自<7201>は7%を超える上昇となっている。中小型の決算発表銘柄ではブイキューブ<3681>が活況。また、コーア商事HD<9273>やLITALICO<6187>が東証1部上昇率上位に顔を出している。

 セクターでは、全33業種がマイナスとなり、不動産業、ゴム製品、空運業などが下落率上位。ただ、その他製品は小幅な下げにとどまった。東証1部の値下がり銘柄は全体の88%、対して値上がり銘柄は11%となっている。

 前日のNYダウは続落、時間外取引のNYダウ先物もやや軟調に推移し、本日の東京市場では幅広い銘柄で利益確定の売りが出ている。前日に続き景気敏感系の大型バリュー(割安)株の軟調ぶりが目立ち、前引けの日経平均の下落率が1.08%だったのに対し、東証株価指数(TOPIX)は1.67%と下げが大きい。半面、任天堂など「ウィズコロナ」関連の値がさグロース(成長)株には投資資金が向かっている。

 米製薬大手ファイザーなどが開発する新型コロナワクチンへの期待から一時1%近くまで上昇した米長期金利は、足元で0.8%台後半まで押し返された。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は12日の討論会で、ワクチン開発に期待を示しつつも、経済見通しに反映させるのには時期尚早であるとし、新型コロナの更なる感染拡大に警鐘を鳴らした。イングランド銀行(英中銀)のベイリー総裁や欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁もこうした考えに呼応したという。FRBを含む主要中央銀行が当面、緩和的な金融政策を維持するとの見方が米長期金利を押し下げた。

 FRBは日本で見られたようなイールドカーブ(利回り曲線)の平たん化による金融機関のダメージを警戒し、長期金利のある程度の上昇は許容するとの見方が一般的な市場の見方だ。しかし、新型コロナ再拡大の懸念がくすぶるなか、政策効果を減殺させかねない長期金利の過度な上昇をFRBが許容するかというと疑問符が付く。「米長期金利の上昇に伴いグロース株相場は終焉」との声が増え始めたが、時期尚早だろう。なにせエムスリーなどはなお上昇基調が続いている。前日の当欄で述べたとおり、当面は新型コロナ感染状況とワクチン開発動向を睨み、景気敏感系バリュー株と「ウィズコロナ」グロース株の短期リバーサルを繰り返す相場展開が続くとみられる。

 日本株全体としても、リスクシナリオが顕在化した際の主要中銀による追加緩和への期待、それに日銀の上場投資信託(ETF)買い入れによる下支えで底堅く推移するだろう。本日も前引け時点でのTOPIX下落率を考慮すると、日銀のETF買いが実施される公算は大きい。やや上値追い機運が乏しくなってきただけに、日経平均はまたぞろ25000~26000円あたりでこう着する可能性もありそうだ。
(小林大純)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 日経平均は9日ぶり反落、「緩和的な金融政策継続」が支え