日経平均は続落、戻り鈍い、資金の逃げ足の速さには注意が必要

 日経平均は続落。178.46円安の20824.91円(出来高概算5億6189万株)で前場の取引を終えた。前日の米国株式市場では、貿易摩擦問題を巡り、中国が米国への対抗措置としてレアアースの輸出制限を検討していることが報じられたことが嫌気され、主要3指数は揃って続落。これにより、シカゴ日経225先物清算値は大阪比75円安の20875円となり、本日の東京市場は朝方は節目の21000円を割り込んで売り先行でのスタートになった。その後も、為替相場において前日日中比でやや円安方向に振れていたが、21000円を前に戻りの鈍い相場展開が続いた。また、前場中ごろに開始された中国・上海総合指数の軟調推移を背景に、指数先物に対する短期筋による断続的な売りなども観測された。

 セクターでは、石油・石炭製品が1%高となったほか、保険業、鉱業、海運業、ゴム製品、銀行、鉄鋼が上昇した一方で、パルプ・紙、その他製品、精密機器、医薬品、食料品、小売、電気・ガス業、サービス業は軟調。売買代金上位銘柄では、任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>、ソフトバンクG<9984>、武田薬<4502>、資生堂<4911>、花王<4452>、日立<6501>などが軟調。一方で、米半導体SOX指数の5日ぶりの反発を受けた東京エレクトロン<8035>が2%高となったほか、ファナック<6954>、SUMCO<3436>、三菱商事<8058>などは上昇。そのほか、レアアース関連として、東邦チタニウム<5727>や大阪チタ<5726>などの上昇も目立った。

 足元で話題となっている中国によるレアアースの供給制限は米産業界に大打撃となるほか、米中対立の長期化が世界経済に悪影響を与えるとの見方が市場で強まっている。これを受け、世界的に株式保有を減らして債券の持ち高を増やす動きが顕著になっている。なかでも、米10年債利回りは2017年9月以来の水準まで低下。この流れからか、4月にみられた海外投資家による日本株買いの動きにも陰りがみられており、5月以降は現物・先物ともに日本株は売り越し基調となっている。やはり、6月末に開催される主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議の場における米中トップによる会談を前に、日経平均のリバウンドの余地に目を向ける海外投資家は増加しにくいと見られる。

 他方、6月限の225オプション市場においても、プットオプションが優位な需給状況が続いている。プットサイドで最も売買高・建て玉ともに積み上がっている水準が権利行使価格20000円処となっているほか、そのほかダウンサイドにおいても19500円、19000円、18500円商いが集中している格好である。国内外の投資家が目先の日経平均に関しては下方へのリスクに備える向きが優勢になってきているようだ。本日の東京市場における個別物色としては、前述の通り、半導体関連の一角やレアアース関連などに関心が向っている。後場にかけてのこれらの動意をみせる銘柄に対して短期資金が引き続き向かう地合いは続く可能性はあるものの、相場全体の地合いとしては資金の逃げ足が速くなりやすい点にも十分留意しておきたいところである。
(雲宮 祥士)


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情報提供元: FISCO
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