病気休職中のお金はどうする? 傷病手当金と貯蓄の取り崩しについて
傷病手当金はどんな制度?
傷病手当金は、会社員などが病気やけがで働けなくなったとき、生活を保障するために健康保険から支給される給付金です(※1)。
原則として、業務外の病気やけがで就労できず、療養中の期間に給与の支払いがない場合に支給されます。
1日あたりの支給額は、正確には支給開始日前12ヶ月間の標準報酬月額の平均額を30で割り、さらに3分の2を掛けて算出します。月収の3分の2程度、とのAさんの理解でおおむね合っています。なお、賞与は対象外なので、その分は大きく年収が落ち込みます。
支給期間は、支給開始日から通算して最長1年6ヶ月です。なお、休業中に給与が一部支払われる場合は、傷病手当金より少なければ原則として差額が支給されます(※2)。
対象となるのは、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合への加入者です。なお、公務員や教職員などが加入する共済組合の傷病手当金は、算出式等の制度が健康保険と異なります(※4)。
給付金はいつ、どこから振込まれる?
傷病手当金は、本人、事業主、医師による記入の後に健康保険側に提出されます。初回は、申請から審査を経て支給されるまで、通常2ヶ月程度要します。例えば、月初から病気欠勤や休職で無給になった場合、最初の支給まで3ヶ月近く給付を待つ状態もありえます。まず、この期間の生活費確保が最初のハードルになるでしょう。
なお、支給されるルートは、加入する健康保険や会社の事務処理によって異なります。協会けんぽでは、申請書を会社経由で提出する場合でも、給付金は原則として被保険者本人に直接支給されます。一方、健康保険組合や勤務先の制度・事務処理によっては、いったん会社が給付金を受け取り、会社経由で本人への支払いを行う場合があります。
手取りは給与の3分の2より少なくなる
給付金としてもらえると聞くと、その金額が全部使えそうな気になってしまいませんか?
休職中も、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は発生します。一般的に、事業主と折半し納付しているため、給与を支払えず天引きできなくなれば、本人分も立て替えて納付した会社から、本人負担分の精算を求められます。
あるいは、会社経由で給付される場合は、傷病手当金から会社控除金額を差し引かれた額が振込まれることもあります。
さらに、社宅利用料、グループ保険料や財形貯蓄、持株購入、DC年金掛金等々、会社としての控除項目も傷病手当金から天引きされると、3分の2どころではなく、元の月収の半分以下になることも当然考えられます。
また、住民税は前年の所得を基に課税されるため、休職して収入が減っても税額が下がるわけではありません。天引きできなくなると、市区町村から納付書が届き、自分で納める必要があります。
この「天引き」をしっかり理解し、休職後の家計に備えないと、預貯金があっという間に目減りしてしまいます。天引き以外にも、住宅ローンや教育費、奨学金返還など優先順位の高い支出額を先取りしたうえ、生活費の抑制を図る家計コントロールが必須です。
なお、傷病手当金そのものは非課税で、所得税はかかりません(※3)。
大切なのは、給付額だけで判断せず、休職中も必要となる支出を洗い出すことです。収支を把握し、預貯金で何ヶ月間生活できるかを試算しましょう。
最後に
傷病手当金は、病気休職中の生活を支える重要な制度ですが、給与の3分の2がそのまま生活費として使えるわけではありません。給付金の支給時期、社会保険料や住民税の支払い、ローン返済などを踏まえて家計を見直し、預貯金の取り崩しが長期化しても耐えられるかを確認しましょう。
今は無理に仕事のことを抱え込まず、会社の担当窓口や加入する健康保険に相談しながら、療養に専念できる環境を整えることが大切です。
なお、過重労働など仕事が原因で発症した可能性がある場合は、傷病手当金ではなく、労災保険の対象となる可能性も確認する必要があります。
出典
(※1)全国健康保険協会 健康保険の給付について「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
(※2)全国健康保険協会 給付と手続き「病気やケガで会社を休んだとき 傷病手当金」
(※3)国税庁 No.1400 給与所得
(※4)地方職員共済組合「勤務を休み報酬が支給されないとき」
執筆者 : 伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員