家計をやりくりして貯めた「100万円」。夫は「NISAで増やしたい」と言いますが、私は住宅ローンの繰り上げ返済に使いたいと考えています。「投資で増やす」のと「借金を減らす」のでは、どちらが家計にとって有利なのでしょうか?
金利1%なら投資が優勢? 100万円で生まれる利益と利息削減の差
住宅ローンの繰り上げ返済と投資のどちらが経済的に有利かを考える際には、「住宅ローンの金利」と「投資の期待リターン」を比較することが、ひとつの判断材料になります。
例えば、金利1%で借りている住宅ローンに対して手元資金100万円を繰り上げ返済した場合、将来支払うはずだった年間約1万円分の利息負担を軽減できます。一方で、この100万円を全世界株式などに連動するインデックスファンドに投資し、年5%の利回りで運用できたと想定しましょう。その場合、1年間で5万円の運用利益を得られます。
投資で5万円の増益を得てそこから1万円のローン利息を支払ったとしても、差引きで毎年4万円分手元に多く残る計算になります。住宅ローンの金利が1%から2%程度の場合、数字上の比較だけでいえば、投資のほうが有利になる可能性があります。
さらに、住宅ローンの返済初期段階であれば効果も変わってきます。
例えば、返済期間35年の住宅ローンにおいて、返済開始後10年目に200万円を繰り上げ返済した場合、金利0.8%で約41万2000円、金利1.5%なら約85万2000円、金利3.0%なら約204万7000円もの利息軽減効果が得られます。住宅ローンの金利が高い場合や、返済期間が長く残っている場合ほど、繰り上げ返済による利息の軽減効果は大きくなる傾向があります。
NISAの非課税保有限度額は1800万円! 資産運用で活用するメリットとは
投資を選択する場合、心強い味方となるのが2024年から大きく拡充されたNISAの新制度です。通常の投資では、得られた運用益や配当に対して約20%の税金がかかりますが、NISA口座を利用すればこれらの利益がすべて非課税になります。
NISAの新制度における主な概要は次の通りです。
(1)非課税保有期間が無期限化:従来の制度にあった期間制限がなくなり、無期限で非課税運用を続けられます。
(2)年間投資枠が最大360万円へ拡大:つみたて投資枠で年間120万円、成長投資枠で年間240万円まで投資でき、両方の併用が可能です。
(3)一生涯の非課税保有限度額は1800万円:生涯で合計1800万円までの投資元本に対する運用益が非課税になります。
(4)枠の再利用が可能:売却した場合、その商品の取得金額分だけ翌年以降に非課税枠が復活します。
NISA口座で一定額を定期的に積み立てることで、価格が下落した際には同じ金額でより多くの口数を購入でき、平均購入単価を抑える効果が期待できます。節税メリットを最大限に生かしながら、将来に向けた資産形成を効率よく進められるのがNISAの強みです。
繰り上げ返済の落とし穴? 団信と住宅ローン控除の盲点
繰り上げ返済には確実に借金と利息を減らせるという精神的な安心感がありますが、実は見落としがちなデメリットや考慮すべき制度が存在します。
まず1つ目は住宅ローン控除の影響です。入居から一定期間は、年末のローン残高の0.7%程度が所得税等から控除される仕組みになっています。繰り上げ返済によって住宅ローンの年末残高が減ると、住宅ローン控除の適用額も小さくなる場合があります。
そのため、控除期間中は、繰り上げ返済による利息の軽減効果と控除額の減少を比較し、返済のタイミングを検討することが大切です。金利や控除の適用状況によっては、繰り上げ返済を急がないほうが経済的に有利になる場合もあります。
2つ目は団体信用生命保険の保障額です。多くの住宅ローンには、契約者に万が一の事態が生じた際、残りのローンを全額弁済してくれる保険がついています。繰り上げ返済によって住宅ローンの残高が減ると、万が一の際に団体信用生命保険で保障される金額も、その分少なくなることになります。
また、繰り上げ返済に充てた資金は手元からなくなるため、急な病気による医療費や教育費などの支出が必要になった場合でも、すぐに取り戻すことはできません。確実性がある反面、流動性を失う点には注意が必要でしょう。
まとめ
住宅ローンの繰り上げ返済とNISAを活用した資産運用は、どちらか一方が必ずしも有利とは限りません。繰り上げ返済は将来の利息負担を確実に減らしてくれるため、元本割れのリスクを取らずに家計の固定費を下げたい場合に最適です。
一方、資産運用には相場の変動による元本割れのリスクがあるものの、住宅ローンの金利を上回るリターンが得られる場合もあります。また、運用資産は必要に応じて売却できるため、繰り上げ返済と比べて資金を活用しやすいという側面もあります。
どちらを選ぶか判断する際には、まず住宅ローン控除の適用期間が残っているか、今後数年以内に必要となる教育費や、急な支出に備えるための生活防衛資金を十分に確保できているかを確認するとよいでしょう。
控除期間中であったり手元資金に不安があったりする場合は、焦って繰り上げ返済を行わず、NISAを活用した積立投資に回すか手元に現金として残しておく選択が合理的といえます。
数字上の損益計算だけでなく、リスク許容度や精神的な安心感について夫婦でじっくり話し合い、ご家庭のライフプランに最も適したバランスの良い活用方法を見つけてみてください。
出典
一般財団法人住宅金融普及協会
金融庁 NISA特設ウェブサイト NISAを知る
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー