給料は3万6000円増えた。それでも「同じ生活」には届かない?


まずは、給料と物価全体を比べてみましょう。

 

総務省の消費者物価指数を見ると、2015年から2025年までの10年間で、モノやサービス全体の価格はおよそ14%上昇しています。一方、平均賃金の上昇率は約12%です。

 

つまり、大まかに見ると、給料よりも物価のほうがやや速いペースで上がったことになります。

 

例えば、2015年に30万4000円で購入できたモノやサービスと同じ量を2025年に購入すると仮定すると、単純計算では約34万6000円が必要です。

 

しかし、2025年の平均賃金は34万600円です。差は約5000~6000円となります。

 

実際に何を購入するかは人それぞれなので、これだけで個々の生活水準を判断することはできません。それでも、「月給は3万円以上増えたのに、余裕が増えた感じがしない」という感覚には、一定の理由があると考えられます。

 

では、もっと身近な商品で比べるとどうなるのでしょうか。

 


1万円で「お米4袋」が買えた10年前


変化が特に大きいのがお米です。

 

総務省の「小売物価統計調査」によると、東京都区部におけるコシヒカリ5キログラムの価格は、2015年12月には2312円でした。これが2025年12月には5366円になっています。10年間で約2.3倍です。割合にすると、約132%の上昇となります。

 

数字だけでは分かりにくいので、1万円を持ってスーパーへ行ったと考えてみましょう。2015年なら、コシヒカリ5キログラムを4袋購入してもお釣りがありました。ところが2025年は、1万円では2袋購入できません。

 

同じ「1万円」でも、買えるお米の量は大きく変わっています。

 

平均賃金の上昇率が約12%なのに対し、お米は約132%上昇しているため、日常的に購入する人ほど値上がりを強く感じやすいでしょう。

 

ただし、ここで注意したいのは、すべての商品がお米ほど値上がりしているわけではないことです。

 


ハンバーガーは4割増。でも中華そばは約8%増


例えば、東京都区部のハンバーガーの価格は、2015年12月の174円から2025年12月には243円になっています。上昇率は約40%です。鶏卵10個も263円から316円となり、約20%上昇しました。

 

一方、中華そば1杯は、2015年1月には563円でしたが、2025年1月には599円、同年12月には607円となっています。10年間の上昇率は約8%です。

 

お米が約132%、ハンバーガーが約40%、卵が約20%、中華そばが約8%。同じ10年間でも、価格の動きにはかなり差があります。

 

つまり、「物価が約14%上昇した」という平均値だけを見ても、自分の家計への影響をそのまま把握できるわけではありません。

 

例えば、お米をよく購入する家庭であれば、物価全体の上昇率以上に家計への負担を感じる可能性があります。反対に、値上がり幅が比較的小さい商品やサービスへの支出が多ければ、感じ方はまた違ってくるでしょう。

 

「物価が何%上がったか」だけでなく、自分が普段何にお金を使っているのかも重要ということです。

 

そして、生活の豊かさを考えるうえでは、もう一つ見落とせないポイントがあります。

 


そもそも「34万円」を全部使えるわけではない


平均賃金が30万4000円から34万600円へ増えたと聞くと、その差額をそのまま自由に使えるお金の増加分として考えてしまいがちです。

 

しかし、実際には給与から税金や社会保険料などが差し引かれます。家計にとって重要なのは、額面の給料だけではなく、最終的に手元に残るお金です。

 

総務省の「家計調査」によると、二人以上の勤労者世帯における可処分所得は、2015年平均の42万7270円から2025年には53万2408円へ増えています。

 

ただし、これは個人の月給ではありません。共働きなどを含む世帯全体の数字であるため、先ほどの平均賃金とそのまま比較することはできません。

 

さらに、2025年の可処分所得は、物価変動の影響を除いた実質ベースでは前年比1.7%減少しています。

 

つまり、額面上の「使えるお金」が増えていたとしても、物価まで考慮すると、そのお金で買えるモノやサービスが前年より減っている場合もあるということです。

 

「受け取る金額が増えること」と「実際に使えるお金の価値が高まること」は、必ずしも同じではありません。

 


10年前と今、豊かなのはどっち?


今回の数字だけで比べると、「今のほうが豊かになった」とは言いにくく、むしろ10年前のほうがお金の「買う力」はやや強かったと考えられます。

 

2015年から2025年までの10年間で、一般労働者の平均賃金は約12%増えました。しかし、その間に物価全体は約14%上昇しています。

 

平均賃金の伸びよりも、物価の伸びのほうがやや大きかったことになります。

 

さらに、お米は約2.3倍、ハンバーガーは約40%、卵は約20%上昇するなど、日常生活で購入する商品の中には、給料よりもかなり速いペースで値上がりしたものもあります。

 

もちろん、実際の「豊かさ」は収入や物価だけで決まるものではありません。家族構成や住居費、税金や社会保険料、何にお金を使うかなどによっても生活実感は変わります。

 

それでも、「10年前は30万円、今は34万円だから、今のほうが4万円分豊かだ」とは単純にはいえないでしょう。

 

同じ1万円でも買える量が変われば、お金の「買う力」も変わるためです。

 

給料を見るときに重要なのは、額面が何円増えたかだけではなく、その給料で実際にどれくらいのモノやサービスを買えるのかという視点だといえます。

 


まとめ


10年前と比べて、平均賃金そのものは増えています。

 

2015年の30万4000円から、2025年には34万600円となり、約12%の上昇です。一方、この10年間で物価全体は約14%上昇しました。

 

さらに、コシヒカリ5キログラムは約2.3倍、ハンバーガーは約40%、卵は約20%値上がりするなど、身近な商品の中には賃金を大きく上回るペースで価格が上昇したものもあります。

 

そのため、「給料が上がった=その分だけ生活が豊かになった」と考えるのは難しいでしょう。

 

自分の暮らしが10年前より豊かになったのかを考えるなら、給与明細に書かれた金額だけではなく、「そのお金で何がどれだけ買えるのか」まで見てみることが大切です。

 

数字としての給料は増えていても、お金そのものの「買う力」まで同じように増えているとは限らないのです。

 


出典


厚生労働省「賃金構造基本統計調査 結果の概要」

厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

総務省統計局「消費者物価指数(CPI) 結果」

総務省統計局「小売物価統計調査(動向編) 調査結果」

総務省統計局「小売物価統計調査(動向編) 年平均-年次・報告書」

総務省統計局「家計調査報告 2025年(令和7年)平均結果の概要」

 

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー


情報提供元: ファイナンシャルフィールド
記事名:「 夫から「10年前より平均給料が増えているんだから、今のほうが豊かでしょ」と言われました。私は「でも1万円で買えるお米は4袋→1袋よ」と反論…実際、10年前と今ではどちらが“生活に余裕がある”のでしょうか? 」