70代の両親に同居を提案し、「月5万円だけ生活費を入れてほしい」とお願いしました。夫は「年60万円も親から取るの?」と言いますが、食費や光熱費も増えます…負担はどこまで求めるのが妥当なのでしょうか?
「月5万円」が高すぎるかどうかは、金額だけでは判断できない
まず、親子で同居する場合に「親は月○万円負担すべき」という基準があるわけではありません。住宅ローンを子世帯だけで払っているのか、両親にも専用の部屋を用意するのか、食事を一緒にするのかなどによって必要な費用は大きく変わります。
例えば、両親2人から合わせて月5万円を受け取るなら、1人あたりでは月2万5000円です。この中に食費、電気・ガス・水道代、日用品代などを含めると考えれば、必ずしも「家賃として5万円を取っている」と考える必要はありません。
むしろ「同居によって増えた生活費の一部を負担してもらう」と考えたほうが実態に近いでしょう。
高齢夫婦は実際に毎月どのくらい生活費を使っている?
総務省統計局の2025年の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1ヶ月の消費支出は平均26万3979円でした。このうち食費が29.9%、光熱・水道費が8.9%を占めています。単純計算すると、食費は月約7万9000円、光熱・水道費は約2万3000円です。
もちろん、両親が子世帯と同居したからといって、この約10万円がそのまま家計に上乗せされるわけではありません。
例えば冷蔵庫や照明、エアコンなどは家族が増えても支出が2倍になるとは限らず、住宅費も同じ家に住むなら新たに家賃が1軒分発生するわけではありません。
一方で、食事の量、入浴、洗濯、冷暖房の使用時間などが増えれば、毎月数万円単位で家計負担が増えることは十分考えられます。そのため、両親2人で月5万円という金額だけを見て、「高すぎる」「安すぎる」と判断するのは難しいでしょう。
両親の収入から見て無理のない金額かも確認する
もう一つ重要なのが、両親側の家計です。同じ家で暮らす以上、子世帯の負担だけでなく、両親が無理なく支払える金額かどうかも考える必要があります。
同じ家計調査では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の実収入は月平均25万4395円、税金や社会保険料などを除いた可処分所得は22万1544円でした。
仮に可処分所得が月22万円程度の夫婦が月5万円を生活費として出すとすれば、手元には約17万円残ります。
ただし、そこから医療費、スマートフォン代、衣服代、趣味、交際費などを支払う必要があります。さらに、将来の介護費用などに備えて貯蓄を残しておきたい家庭もあるでしょう。
年金額や貯蓄額は家庭によって大きく違うため、「月5万円なら誰でも問題ない」とはいえません。
「5万円を払って」ではなく、増えた費用を見える化して話し合う
夫から「年60万円も親から取るの?」と言われたのであれば、一度、同居前後の家計を比べてみるとよいでしょう。
例えば同居前の食費が月6万円だったのに、同居後は9万円になったとします。さらに光熱費が月1万円、日用品費が5000円増えれば、それだけで月4万5000円の負担増です。この状態なら、両親から月5万円受け取ったとしても、そのほとんどが実際に増えた生活費へ消えることになります。
逆に、同居しても家計が月2万円程度しか増えないのであれば、「なぜ5万円なのか」を改めて考える余地があります。
最初から「親は5万円」と決めるより、「実際に増えた食費や光熱費を見て、3万円~5万円程度で調整しよう」と決めておく方法もあります。
お金以外の負担も含めて考えることが大切
同居では、現金だけで公平さを判断できない場合もあります。
例えば両親が料理や掃除、孫の世話などを日常的に担ってくれるなら、それも子世帯にとって大きな助けになります。
一方、将来的に通院の付き添いや介護などが必要になれば、子世帯側の時間的な負担が増える可能性もあります。そのため、「親からいくら取るか」という話だけではなく、「誰が何を負担するか」という家族全体の役割分担として考えるほうが、長く同居するうえでは現実的です。
なお、親子などの扶養義務者の間で、通常の日常生活に必要な生活費として、その都度実際に生活費へ充てる金銭については、原則として贈与税の対象になりません。生活費名目でも貯金や投資などに回す場合は扱いが異なるため注意が必要です。
まとめ
70代の両親と同居する際、2人合わせて月5万円の生活費を求めることが、直ちに高すぎるとはいえません。
2人増えれば食費や光熱費、日用品費なども増えるため、月5万円を「親から取るお金」ではなく、「家族4人などで暮らすための生活費の分担」と考えることもできます。
ただし、最適な金額は家庭によって異なります。
まず同居によって実際にいくら家計が増えるのかを確認し、そのうえで両親の年金収入や貯蓄、家事の分担なども考慮して決めるのがよいでしょう。「月5万円」と先に金額を固定するのではなく、同居後に実際の支出を確認してみましょう。
【FPコメント】
親子で同居する際における生活費の負担に関する取り決めをすることは一般的なことです。
ただ、その負担額における正解はありません。同居によって実際に増える子世帯の支出と親世帯における資産余力の両面を考慮して決めるのが適切です。税制面においても家賃や生活費という名目だけで贈与扱いされたり、相続分の前渡しと判断されるわけではありません。
親自身の食費や光熱費など通常必要な生活費として負担しているのであれば、その結果年間で基礎控除の額を超える金銭の授受があったとしても、贈与税は発生しません。
親からの金銭の授受は、たとえ生活費でもあってもきちんと記録を残しておくと他の兄弟や親族との争いを防ぐことができるはずです。
出典
総務省統計局 家計調査報告 2025年平均結果の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー