母の介護費「月9万円」を私が全額負担しています。兄は「相続は2人で半分ずつでしょ」と言いますが、3年間なら私の負担は「324万円」…不公平に感じるのですが、本当に同じ割合で分けるしかないのでしょうか?
介護費を多く払っても自動的に相続分は増えない
親の介護費を兄弟のうち一人が多く負担しても、それだけで法律上の相続分が自動的に増えるわけではありません。
相続では、まず民法で定められた法定相続分があります。子どもが2人なら、原則として2分の1ずつです。介護費を多く出した人がいる場合でも、何も話し合いをしなければ、基本は同じ割合で遺産を分けることになります。
もちろん、兄弟で話し合い、「介護費を多く払ってくれた分、遺産を多く渡そう」と合意できれば、その内容で遺産分割をすることは可能です。相続人全員が納得していれば、法定相続分どおりに分ける必要はありません。
問題は、兄が相続のときに「介護費はあなたが勝手に払ったものだ」と主張するケースです。そうなると、感情的な対立になりやすく、遺産分割が進まなくなることがあります。
寄与分が認められるには特別な貢献が必要
相続で多く受け取る考え方として「寄与分」があります。寄与分とは、相続人の中に、亡くなった人の財産を維持したり増やしたりするために特別な貢献をした人がいる場合、その貢献を相続分に反映する仕組みです。
たとえば、母の介護費を負担したことで母の預金を減らさずに済んだ、施設費や医療費を長期間肩代わりした、介護のために仕事を減らして母の生活を支えた、といった事情がある場合です。
ただし、親子には扶養義務があります。通常の範囲の手助けや、短期間の負担だけでは、寄与分として認められにくいことがあります。寄与分が認められるには、「通常期待される家族の助け合い」を超えた特別な貢献だったと説明できることが大切です。
月9万円の介護費をどれくらいの期間、誰が、何のために支払ったのかも重要です。数ヶ月なのか、数年なのかで重みは変わります。母本人に年金や預金があったのに、なぜ自分が負担したのかも整理しておきましょう。
支払い記録と兄弟間の合意を残しておく
介護費を多めに負担するなら、将来の相続トラブルを防ぐために記録を残すことが欠かせません。
まず、介護施設の請求書、医療費の領収書、銀行振込の記録、母の口座から払った分と自分の口座から払った分を分けて保管しましょう。現金で渡すと証明が難しくなるため、できるだけ振込やカード払いなど記録が残る方法にするのがおすすめです。
次に、兄弟間で負担のルールを決めておくことも大切です。たとえば、「母の年金で足りない分は兄弟で半分ずつ負担する」「兄は今払えないので、将来の相続時に精算する」「自分が立て替えた分は母への貸付金として扱う」などです。
特に、母への貸付金として扱う場合は、母本人の意思確認も必要です。借用書を作り、金額、返済方法、日付を残しておくと、相続時に説明しやすくなります。
また、母に判断能力があるうちなら、遺言書で介護費を負担した子に多めに財産を残す方法もあります。兄弟間の合意だけでは不安な場合は、公正証書遺言を検討するのも一つの方法です。
まとめ
母の介護費を月9万円、自分が多めに負担していても、それだけで相続分が自動的に増えるわけではありません。相続で多く受け取るには、兄弟の合意や、寄与分として認められるだけの特別な貢献が必要です。
寄与分は、通常の親子の助け合いを超えた貢献があった場合に考慮されます。長期間にわたり施設費や医療費を肩代わりし、母の財産を維持したと説明できるなら、相続時に主張できる可能性があります。
ただし、証拠がなければ話し合いは難しくなります。請求書、領収書、振込記録、兄弟との合意メモを必ず残しましょう。母に判断能力があるうちなら、遺言書や貸付金の整理も有効です。
介護費の負担は、放置するとお金だけでなく家族関係の問題にも発展します。今のうちに兄弟で話し合い、誰がいくら負担するのか、将来どう精算するのかを決めておくことが、相続トラブルを防ぐ一番の対策です。
【FPコメント】
介護費を多く負担したとしても、必ずしも寄与分が認められるわけではありません。寄与分が認められるには「特別の寄与」があり、それによって被相続人の財産が維持・増加するという、過程から結果までが求められます。
また、兄弟間で「兄は今払えないから相続時に精算する」という債権債務関係があったとしても、それをもって当然に相続財産から差し引けるわけもありません。
もし、立替分を母への貸付として精算することを希望するのであれば、母本人の意思・借用書・振込記録・支出目的をメモ書きでもいいので残しておきましょう。
そのうえで、精算については無理に相続時にしようとせず、場合によっては相続とは別の機会にしてもらうというくらいの心づもり対応するのがよいでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー