「原因を作った人が必ず払う」とは限らない


民法709条では、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、損害を生じさせた人は、その損害を賠償する責任を負うとされています。

 

したがって、特定の人がごみ出しのルールを繰り返し無視し、その結果としてカラス被害が発生し、防鳥ネットの破損や清掃費用が生じたことを示せるのであれば、損害賠償を求められる可能性はあります。

 

一方で、「前夜にごみを出した人がいた」「その後カラスに荒らされた」というだけでは、直ちに6000円のネット代や年間1万円の清掃用品代を全額請求できるとは限りません。

 

ネットがもともと古くなっていた、ほかの人のごみも荒らされていた、カラス対策そのものが地域全体に必要だった、といった事情があれば、どこまでがその人の行為による損害なのかを切り分ける必要があります。

 


まず確認したいのは「前夜出し」が本当にルール違反か


ごみを出せる曜日や時間は自治体や集合住宅、自治会などによって異なります。そのため、最初に確認したいのは、問題となっている前夜のごみ出しが、その地域のルールに反しているかどうかです。

 

もし「収集日の朝○時まで」などのルールが定められていて、前夜から出すことが明確に禁止されているにもかかわらず、注意後も繰り返しているのであれば、過失を判断するうえで重要な事情になります。

 

逆に、時間について明確な決まりがない場合は、個人の責任を追及する前に、自治会でごみ出し時間や防鳥ネットの使い方を明文化するほうが現実的です。

 


共同設備なら、自治会費で負担すること自体は不自然ではない


防鳥ネットが地域のごみ置き場全体を守るための共同設備であれば、自治会費などから購入すること自体は不自然ではありません。ネットは特定の一人だけではなく、利用者全員のごみをカラスから守る役割を持つためです。

 

例えば6000円のネットを30世帯で負担するなら、1世帯あたり200円です。共同で使う設備については、このように全体で負担したほうが管理しやすいケースもあります。ただし、「共同負担にする=原因となった行為を放置してよい」という意味ではありません。原因が改善されなければ、ネットを何度買い替えても同じ費用が発生する可能性があります。

 


年間1万円の清掃用品も、すべて個人請求できるとは限らない


清掃用品に年間1万円かかっているとしても、その全額が特定の人の前夜出しによって必要になったのかは慎重に考える必要があります。通常のごみ置き場の清掃でも一定の費用はかかるためです。

 

例えば通常は年間3000円程度だった清掃費が、カラス被害後に1万円へ増えたのであれば、「増えた7000円」を被害額として考えるほうが実態に近い場合もあります。実際に請求を検討するのであれば、購入した用品のレシート、被害の写真、発生日時、注意した記録などを残しておくと話し合いの材料になります。

 


いきなり請求するより、ルール整備と記録から始める


近所同士でいきなり「ネット代を払ってください」と請求すると、別のトラブルに発展する可能性があります。まず自治会や管理者を通じて、地域のごみ出しルールを再周知し、問題が続く場合は個別に注意してもらう方法が考えられます。

 

それでも明確なルール違反が続き、同じ人の行為によって具体的な損害が繰り返されているのであれば、その段階で費用負担について話し合うほうがよいでしょう。重要なのは、「迷惑だから払って」ではなく、どの行為によって、いくらの損害が生じたのかを示すことです。

 


まとめ


前夜からごみを出す人が原因でカラス被害が生じているとしても、防鳥ネット代6000円や年間1万円の清掃用品代を当然にその人へ全額請求できるとは限りません。個人に負担を求めるには、ルール違反や過失、実際の損害との因果関係を確認する必要があります。

 

一方、防鳥ネットのような共同設備を自治会費で負担することにも合理性があります。ただし、同じ原因で費用が繰り返し発生するなら、共同負担だけで終わらせず、ごみ出しルールの明文化、注意、被害記録を進めることが重要です。

 


出典


e-Gov法令検索 民法

 

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー


情報提供元: ファイナンシャルフィールド
記事名:「 近所の人が前夜からゴミを出すたびカラスに荒らされ、防鳥ネットの買い替えに「6000円」、清掃用品にも年「1万円」ほど使っています。夫は「自治会で負担すればいい」と言いますが、原因を作っている人が払わなくてもよいのでしょうか? 」