同じ金ETFでも、買った時期で明暗が分かれた


2023年に金ETFを80万円分買った同僚は、「1年で1.5倍、3年で2.6倍の208万円になった」と話します。

 

その成功談を聞いたAさんの夫は、2025年12月に100万円分を購入しました。ところが、もうすぐ1年を迎える2026年10月14日時点の評価額は98万5750円で、1.6倍どころか購入額を1万4250円ほど下回る元本割れとなっています。夫は「金は安全資産だから」と考えていたため、値下がりに戸惑っています。

 

しかし、安全資産という呼び名は、購入価格を下回らないという意味ではなく、値上がりし続けるという意味でもありません。

 

同僚の成果は、価格が大きく上がる時期に保有していたからこそ得られたものです。同じ金ETFでも、買う時期が違えば結果は変わります。

 


金ETFの価格が大きく上昇してきた背景


金は、世界の先行きが見えなくなるたびに、資金の逃げ場として買われてきました。リーマンショックでは株や債券から資金が流れ、新型コロナの流行時にも不安から買いが広がりました。近年の上昇を支えた主な要因は、次の4点です。




・世界情勢の不安定化:ウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫など、地政学リスク(国際情勢の変化が経済や市場に及ぼすリスク)が意識されるたびに資金が流入

・中央銀行による金購入:有事に備える動きが続き、需要を下支え

・低金利と円安:政策金利の引き下げ局面では利息のつかない金の魅力が高まり、円安は円建ての価格を押し上げ

・採掘量の減少:供給不足への懸念が価格を支える要因に



 

異例ともいえるスピードで上昇してきましたが、これらはあくまで価格を押し上げてきた背景です。このペースが今後も続く保証にはなりません。

 


金ETFが元本割れする理由の1つは、収入を生まない資産だから


金は、株式の配当や預金の利息のような収入を生みません。収益を再投資して資産が雪だるま式に増える複利の効果も、株式のようには働きません。

 

利益となるのは価格差だけで、買った後に価格が下がれば、そのまま評価額に響きます。「中央銀行も買っているから大丈夫」という見方だけでは、購入後の値動きまでは読めません。

 

また、金は、金利と逆の動きをしやすい資産です。利下げの局面では追い風になりますが、利上げが進めば逆風になり得ます。

 

為替の影響も見逃せません。円建ての価格は円安で上がりやすい反面、円高に傾けば、評価額が下がる場合もあります。加えて、価格の振れ幅(ボラティリティ)が大きくなりやすい点も、金特有の特徴です。

 


値上がり目的ではなく、ヘッジ(分散)として持つ


金が役立つのは、株価の下落やインフレに備える場面です。株価が大きく下がるとき、金も一緒に売られることはありますが、その後の回復の速さは株式と異なる場合があります。

 

また、金は現物資産のため、物価が上がる局面では上昇しやすい傾向があります。ただし、過去の上昇率がそのまま続くとは限りません。株式と金が常に逆に動くわけでもないため、持てば損失を防げるとも言い切れません。

 

そこで、保有前に次の3点を整理しておきましょう。




・保有目的:値上がり益ではなく、株価下落やインフレへの備えとして持つ

・配分割合:資産全体のうち、金に回す割合を決める

・許容金額:値動きがあっても保有し続けられる額にとどめる



短期の上下に振り回されず、目的に照らして持ち続けられるかどうかが、金との付き合い方のポイントと言えるでしょう。

 


まとめ


金ETFで元本割れすることは、十分に起こり得ます。金は、値上がりを目的に保有する資産には適さないかもしれません。株式とは異なる値動きをする資産であり、株価下落やインフレへの備えとして持つものだと理解しておくことが大切です。

 

保有する目的を明確にしたうえで、短期の上下に一喜一憂せず、資産の一部として向き合いましょう。同僚の成功談はあくまでも過去の結果であり、これから買う人の成果を保障するものではありません。金という資産の特徴を理解した上で、保有することが重要と言えるでしょう。

 

※金ETFの価格や評価額は変動します。本文中の金額は事例であり、実際の取引価格や将来の運用成果を示すものではありません。

 

執筆者 : 藤田寛子

1級ファイナンシャルプランニング技能士、証券外務員二種


情報提供元: ファイナンシャルフィールド
記事名:「 2023年「金ETFを80万円分」買った同僚から「1年で1.5倍、3年で2.6倍の208万円になった」と聞き、夫が昨年末「100万円分」購入→約1年で98万円の“元本割れ”にショック! 金は安全資産じゃなかったの? 」