「空」の枠に入ったら、フラップ板が車の底に接触


判決の解説によると、利用者がバックで駐車しようとした際、枠内のフラップ板と車の底面が接触して車が損傷しました。フラップ板の下には緑色のビニール袋のようなものが挟まっており、事故前から下限まで下がっていなかったと認定されています。

 

利用者は駐車場の設備を所有・占有する会社に対し、修理費16万2393円と弁護士費用1万6000円などの支払いを求めました。一方、場内の看板には「万一車両が破損した場合一切責任を負いません」との記載があり、駐車場側はこれを理由に責任を負わないと主張しました。

 


裁判所は駐車場側の「土地工作物責任」を認めた


民法717条1項では、土地の工作物の設置や保存に瑕疵(欠陥)があって他人に損害が生じた場合、工作物の占有者などが賠償責任を負うと定めています。これを「土地工作物責任」といいます。

 

判決では、フラップ板を含む装置は車底の高さに合わせてフラップ板の上昇が自動調節される仕組みとされていたのに、駐車動作中に上昇して車の底に接したと認定し、通常備えるべき安全性を欠いているとして駐車場側の責任を認めました。

 


看板の「一切責任を負いません」は契約の内容にならない


駐車場の利用のように、不特定多数の人と画一的な条件で行う取引のルールは、民法上の「定型約款」にあたり、契約の内容とする旨が表示されていれば、利用者が個別の条項を読んでいなくても合意したものとみなされます。

 

ただし、相手方の権利を制限する条項のうち、信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものは「合意をしなかったものとみなす」とされています(民法548条の2第2項)。

 

判決は、免責規定は利用者がフラップ板の上昇を容易に認識できることが前提だと指摘しました。そのうえで、駐車場が「空」の表示で利用者を誘っていたこと、ほかの枠には車が停まっていて見比べられなかったこと、毎回降車して確認するよう求めるのは現実的でないことなどを考慮しています。

 

看板には最低地上高15センチメートル未満の車の駐車を禁じる記載もありましたが、利用者の車の最低地上高が14センチメートルだったことは事故の原因とは認められませんでした。

 

こうした事情から、駐車場側が責任を免れるのは利用者に予期せぬ不相当な不利益をもたらすとして、免責規定は契約の内容にならないと判断されました。

 


利用者にも3割の過失。地裁の1つの判断である点にも注意


一方で判決は、バックモニターの映像でフラップ板が下がり切っていない状態は認識できたのに、下がっていると思い込んで進入した点に利用者の過失があるとし、過失割合を3割(30%)としました。

 

民法722条2項では、被害者に過失があったときは、裁判所がこれを考慮して損害賠償の額を定めることができるとされています。

 

仮に修理費16万2393円に当てはめて単純計算すると、駐車場側の負担は7割の約11万4000円、利用者自身の負担は約4万9000円です。なお、この金額は筆者の試算であり、判決で認められた金額そのものではありません。

 

また、今回は地方裁判所による1つの判断で、看板の免責文言が常に無効になるわけではありません。個別の事情によって結論が変わる可能性があります。

 


事故直後にやっておきたいこと


事故直後は、次のような対応をしておくとよいでしょう。






・フラップ板の状態や挟まっている異物、車の損傷を写真や動画で記録する

・看板の文言や「空」表示の様子も撮影する

・看板に記載された管理会社に連絡し、状況を伝える

・バックモニターやドライブレコーダーの映像を保存する

・修理の見積もりを取り、自動車保険の補償内容も確認する




話し合いがまとまらない場合は、消費者ホットライン「188」に電話すると、身近な消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえます。

 


まとめ


看板に「一切責任を負いません」とあっても、それだけで請求をあきらめる必要があるとは限りません。神戸地裁の判決では、免責規定は契約の内容にならないとされ、駐車場側の責任が認められました。

 

ただし、利用者も3割の過失を問われており、入庫時の確認は欠かせません。泣き寝入りと決めつけず、まずは現場の記録を残し、管理会社や相談窓口に相談してみましょう。

 

執筆者 : 上野梓

FP2級、日商簿記3級、アロマテラピー検定2級、夫婦カウンセラー、上級心理カウンセラー、整理収納アドバイザー


情報提供元: ファイナンシャルフィールド
記事名:「 コインパーキングで「空の枠」にバッグで入ったら“下がり切っていないフラップ板”で車の底に傷が!「修理代16万円」でも、看板に「破損は一切責任を負いません」の文字…夫は「泣き寝入りだ」と言いますが、仕方ないでしょうか? 」