75歳の母は「金融資産3000万円」なのに“年金月10万円”だから「住民税非課税」…会社員の私より“余裕がある”のに、入院費の自己負担上限は「月2万5700円」だけ! 所得でなければ課税されないのですか?
金融資産が「3000万円」あっても、住民税非課税になることはある
住民税が課税されるかどうかは、預貯金や株式などを「いくら持っているか」ではなく、基本的に前年の所得などで判断されます。
例えば、75歳の母が受け取っている年金が月10万円なら、年間では120万円です。日本年金機構によると、65歳以上の単身者が住民税非課税となる年金収入の限度額は、居住地の級地区分によって年148万円~155万円です。
ほかに課税対象となる所得がないなどの条件を満たせば、年金収入120万円の母は住民税非課税になり得ます。では、評価額3000万円の株式や投資信託はどう扱われるのでしょうか。
まず、値上がりしているだけの含み益は、NISAかどうかにかかわらず所得になりません。所得として問題になるのは、売却して利益が出たときや配当を受け取ったときです。
NISA口座では、一定の条件のもと、上場株式や投資信託の配当や分配金、売却益が非課税になります。そのため、NISA内の資産を売却して生活費に充てても、その利益は所得に加算されない仕組みです。
なお、新NISAには取得金額ベースで1800万円の非課税保有限度額があり、資産の一部を課税口座で保有している人も多いでしょう。課税口座で売却益や配当が出た場合は、所得として住民税の判定に影響する場合があります。
年金月10万円の母なら、自己負担上限は月2万5700円
高額療養費制度では、1ヶ月の医療費の自己負担に上限が設けられており、その金額は年齢や所得によって異なります。
2026年8月から2027年7月までの期間について、70歳以上で住民税非課税世帯の人は、外来を含めた月単位の自己負担上限が2万5700円または1万5700円です。2万5700円の区分では、直近12ヶ月で高額療養費に3回以上該当し、4回目以降となる「多数回該当」では2万4600円です。
母が75歳で住民税非課税世帯に該当するなら、例えば保険診療の医療費が1ヶ月に100万円かかったとしても、対象となる自己負担は原則として2万5700円までに抑えられます。
ただし、入院時の食事代や差額ベッド代など、高額療養費の対象外となる費用は別途負担が必要です。
注意したいのは、この区分が「世帯全員が住民税非課税」であることを条件としている点です。会社員の子どもと住民票上同じ世帯であれば、母本人が非課税でも区分が変わり、上限は大きく上がります。今回は、母と子どもが別世帯で暮らしている前提です。
また、住民税非課税世帯のうち、さらに所得が一定以下の人には月1万5700円の区分も設けられていますが、母は年金が年120万円あるため、2万5700円の区分にあたります。
年収500万円の会社員なら、同じ医療費100万円でも約9万3000円
一方、70歳未満の会社員は、所得区分も計算方法も異なります。例えば年収500万円程度で、標準報酬月額が28万円~50万円の区分に該当する会社員の場合、2026年8月以降の自己負担上限は次の式で計算します。
8万5800円+(医療費-28万6000円)×1%
医療費が100万円なら、次のとおりです。
8万5800円+(100万円-28万6000円)×1%=9万2940円
図表1
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへより筆者作成
図表1のように、母は2万5700円、会社員の子どもは約9万3000円となり、同じ100万円の医療を受けても3倍以上の差が出ます。これは金融資産の額ではなく、年齢や所得区分を基に高額療養費の上限が決まるためです。
まとめ
株式や投資信託の評価額が3000万円あっても、その金額自体を理由に住民税が課税されたり、高額療養費の所得区分が引き上げられたりするわけではありません。
年金月10万円で、ほかに課税対象となる所得がない75歳の母であれば、子どもと別世帯であることなどを条件に住民税非課税世帯となり、高額療養費の月額上限は2万5700円です。
「資産3000万円」と聞くと余裕があるように見えますが、税金や高額療養費では資産残高ではなく、制度ごとに定められた所得や世帯の基準で判定されます。
金融資産の残高と、所得や世帯による負担区分を分けて考えることがポイントです。
出典
日本年金機構 住民税の非課税限度額基準について
国税庁 株式の売却をした方や配当等を受け取った方へ
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー