業者が壊したら賠償する決まり。ただし、「直接生じた損害」まで


国土交通省が定めた標準引越運送約款では、業者は荷物の受け取りから引き渡しまでの間に荷物が壊れたとき、注意を怠らなかったことを証明できない限り、損害を賠償する責任を負います。業者が落として壊したのなら、賠償の対象です。

 

ただし、賠償するのは「荷物の滅失又は損傷により直接生じた損害」とされています。国土交通省の引越Q&Aでは、家具などが壊れた場合は修理が原則で、修理できないときは業者が時価相当額で賠償し、購入時からの経過期間をもとに賠償額を算出するのが一般的、と説明しています。

 

つまり、6年使った冷蔵庫の損害は、新品を買い直す代金ではなく、壊れた時点での価値で考えるのが決まりです。夫が言う全額請求に、約款上の根拠はありません。

 


6年使った20万円の冷蔵庫は、なぜ4万円になるのか


時価の出し方に法律で決まった式はありませんが、目安の1つが国税庁の減価償却資産の耐用年数です。国税庁の耐用年数表では、電気冷蔵庫の耐用年数は6年とされています。

 

・20万円÷6年=約3万3333円(1年あたりの価値の減り方)

 

この考え方では、6年使った冷蔵庫の帳簿上の価値はほぼゼロです。業者が提示した4万円は購入額の2割にあたり、耐用年数だけで見れば低い額ではありません。

 

もちろん、冷蔵庫は6年で使えなくなるわけではなく、まだ何年も使えたはずという気持ちは自然でしょう。業者によっては、同じ型の中古相場や、修理できる場合の修理費で算定することもあります。提示額の根拠を聞き、修理の見積もりを取ってもらうことで、額が変わる余地はあります。

 


3ヶ月以内に通知し、1年以内に決着をつける


約款で押さえておきたいのが、期限です。荷物の一部の損傷についての業者の責任は、荷物を引き渡した日から3ヶ月以内に通知を発しない限り消滅します。

 

今回のケースは、作業中に壊れたとその場で分かっているため問題ありませんが、箱を開けて初めて気づく破損もあるため、引っ越し後は早めに荷物を確かめましょう。通知は電話でも構いませんが、日付が残るメールや書面のほうが後で確かめやすくなります。

 

さらに、業者の責任は引き渡しの日から1年以内に裁判上の請求がされないときは消滅します。話し合いが長引いた場合も、この期限は意識しておきたいところです。

 

提示額に納得できないときは、まず業者に算定の根拠を書面で求めるのが第一歩です。それでも折り合えないなら、消費者ホットライン(188)で最寄りの消費生活センターに相談ができます。購入時の領収書や保証書、壊れた状態の写真を残しておくと、交渉がしやすくなります。

 


まとめ


今回のケースでは、引っ越し業者が落として壊した冷蔵庫について、20万円で買った物に4万円の補償が示されました。標準引越運送約款では、業者に賠償責任がありますが、賠償は直接生じた損害が対象で、修理できないときは時価相当額です。

 

国税庁の減価償却資産の耐用年数表では、電気冷蔵庫は6年のため、6年使った冷蔵庫の時価は低く見られます。

 

新品代を請求するのは難しいものの、算定の根拠や修理できるかを確かめる余地はあります。通知は3ヶ月以内、請求は1年以内という期限を意識して進めてください。

 


出典


国土交通省 標準引越運送約款(平成二年運輸省告示第五百七十七号)

国土交通省 引越における消費者向けQ&A

国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表

 

執筆者 : 高橋祐太

2級ファイナンシャルプランナー技能士


情報提供元: ファイナンシャルフィールド
記事名:「 引越業者が「20万円の冷蔵庫」を落として故障! 夫は「業者のミスだから全額補償されるだろ」と言いますが、提示されたのは“4万円”だけ…「6年前に買ったもの」ですが、新品代は請求できないんですか!? 」