夫は自営業で、年収は1000万円ちょっとあります。ただ、退職金はなく、年金も月5万円ほど。収入は高くても老後が不安です。老後資金はいくらあれば安心でしょうか?
自営業者は年収1000万円でも老後資金が不足する可能性がある
自営業者は、現役時代の年収が高くても、必ずしも老後の収入が多いとはかぎりません。
会社員は原則として国民年金と厚生年金に加入しますが、自営業者は国民年金のみの場合が一般的です。そのため、会社員として厚生年金に加入していた期間が短ければ、将来受け取る年金額も少なくなりやすい傾向があります。
日本年金機構によると、2026年度の老齢基礎年金の満額は月7万608円です。ただし、満額を受け取るには、原則として20~60歳までの40年間、国民年金保険料を納める必要があり、未納期間などがあると受給額が減る場合もあります。
自営業者が受け取れる年金額には限りがあり、今回の夫の年金では月5万円、年間で60万円にとどまります。そのため、現役時代に年収1000万円を超えていても、年金だけで現在と同じ生活水準を維持するのは難しいでしょう。
また、自営業者には会社員のような退職金が必ずしも用意されているわけではありません。廃業後は事業収入も途絶えるため、老後の生活を安定させるには、現役時代から計画的に資金を準備しておくことが大切です。
夫の年金が月5万円なら老後資金はいくら必要?
必要な老後資金を考える際は、夫婦の年金収入と生活費の差額を把握することが大切です。総務省の「家計調査報告(2025年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、毎月の消費支出が平均26万3979円となっています。
仮に夫の年金が月5万円、妻の年金が月7万円なら、夫婦の年金収入は合計12万円です。この場合、平均的な生活費と比べて月約14万4000円が不足する計算となります。この不足額が65~95歳までの30年間続くと仮定すると、約5184万円(14万4000円×12ヶ月×30年)の老後資金が必要です。
ただし、この金額は毎月の消費支出をもとに算出した金額であり、税金や社会保険料などが含まれていません。また、住宅の修繕費や医療・介護費用なども考慮する必要があるため、実際にはより多くの老後資金が必要になる可能性があります。
一方、老後の生活費を見直すことで、必要な資金を減らすことも可能です。例えば、夫婦の生活費を月20万円に抑えた場合、年金収入との差額は月8万円となります。この不足額が30年間続くと仮定すると、必要な老後資金は2880万円(8万円×12ヶ月×30年)まで減少します。
このように、必要な老後資金は生活水準や年金以外の収入によって大きく変わるため、一律に2000万円や3000万円あれば安心とはいえません。そのため、自分たちに必要な老後資金を把握するには、夫婦それぞれの年金見込額を確認し、老後に必要な生活費を試算することが大切です。
自営業者が退職金なしでも老後資金を準備する方法
自営業者が老後資金を準備する方法として、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。
小規模企業共済は、個人事業主などが廃業・退職後に備えて資金を積み立てる制度です。掛金は月1000~7万円まで設定でき、全額が所得控除の対象となります。ただし、実際に受け取る金額は加入期間や受け取り条件などによって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
一方、iDeCoは毎月の掛金を自分で運用し、老後資金を形成する制度です。自営業者などの国民年金第1号被保険者は、2026年10月時点で原則月6万8000円を上限に拠出できます。ただし、国民年金基金などとの合算上限であるほか、運用商品によっては元本割れのリスクもあるため、注意が必要です。
これらの制度は、どちらも税制上の優遇を受けられる点が魅力ですが、資金を自由に引き出せるわけではありません。そのため、収入が変動しやすい自営業者は、生活費や事業資金を確保したうえで、無理のない金額から積み立てを始めるとよいでしょう。
老後資金は年収よりも年金額と生活費を基準に準備しよう
自営業で年収1000万円を超えていても、退職金がなく、年金が月5万円程度の場合は、まとまった老後資金が必要になる可能性があります。ただし、必要額は夫婦の年金収入や生活水準、保有資産によって異なるため、それぞれの状況に合わせた資金計画が大切です。
老後に備えるには、「ねんきんネット」で夫婦の年金見込額を確認し、生活費との差額から必要な資金を把握する必要があります。そのうえで、収入に余裕があるうちから小規模企業共済やiDeCoなどを活用し、計画的に資金を準備していきましょう。
出典
日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度
日本年金機構 令和8年4月分からの年金額等について
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構) 小規模企業共済
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト 加入希望者の方へ 加入手続きについて
日本年金機構 「ねんきんネット」による年金見込額試算
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー