「通勤税」とは? 通勤手当と社会保険料の関係を解説


「通勤税」は正式な税金の名称ではありません。通勤手当が社会保険料の算定対象に含まれることを指して、SNSなどで使われている表現です。通勤手当は、所得税と社会保険料で扱いが異なります。

 

所得税では、電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合、最も経済的かつ合理的な経路・方法による通勤手当は原則として月15万円まで非課税です。マイカー通勤などの場合は、通勤距離などに応じた非課税限度額が設けられています。

 

一方、健康保険料や厚生年金保険料を計算するときは、通勤手当も給与の一部として扱われます。

 

日本年金機構によると、社会保険料の計算に使う「標準報酬月額」には、基本給だけでなく通勤手当や残業手当なども含まれます。標準報酬月額とは、毎月の給与などを一定の金額ごとに区分したものです。

 

つまり、通勤手当を交通費として全額使っていても、社会保険料の計算対象からは除かれません。ただし、通勤手当が多くても、標準報酬月額の区分が同じであれば保険料は変わりません。

 


通勤手当が月5000円と3万円では社会保険料はいくら違う?


例えば、基本給がどちらも月30万円で、残業手当などはないと仮定します。通勤手当が5000円の人は、社会保険料の計算対象となる報酬が月30万5000円です。一方、通勤手当が3万円の人は月33万円になります。

 

この場合、厚生年金保険の標準報酬月額は、それぞれ30万円と34万円です。厚生年金保険料率は18.3%で、会社と従業員が半分ずつ負担します。そのため、本人負担額は表1のようになります。

 

表1
































通勤手当5000円通勤手当3万円
基本給30万円30万円
通勤手当5000円3万円
標準報酬月額30万円34万円
厚生年金保険料2万7450円3万1110円

※筆者作成

 

厚生年金保険料だけで月3660円、年間では4万3920円の差が生じる計算です。さらに、健康保険料も標準報酬月額に応じて決まるため、負担に差が生じる可能性があります。

 

ただし、健康保険料率は加入する健康保険や地域などによって異なります。なお、今回の金額は一定の条件を設けた試算です。実際の保険料は、加入する制度や標準報酬月額などによって変わります。

 


通勤手当によって社会保険料が増えると将来の年金も増える?


通勤手当が多いことで社会保険料が増えると、手取りが少なくなる場合があります。ただし、厚生年金保険料の負担が増えることには、将来の年金額にも関係するという側面があります。

 

厚生年金の受給額は、加入期間や加入中の給与水準などをもとに計算されます。そのため、通勤手当によって標準報酬月額が高くなれば、将来受け取る老齢厚生年金も増える可能性があります。

 

ただし、支払った保険料がそのまま将来返ってくるわけではありません。実際の年金額は加入期間や報酬の推移などによって変わります。また、標準報酬月額は、原則として毎年4月から6月の給与などをもとに見直され、9月から適用されます。

 

自分の社会保険料が気になる場合は、給与明細を確認しましょう。標準報酬月額が分からない場合は、勤務先の給与担当者に問い合わせる方法もあります。

 


まとめ:通勤手当が多いと社会保険料が高くなる場合がある


通勤手当は、一定の範囲まで所得税が非課税になる一方、社会保険料の計算には含まれます。そのため、基本給が同じでも、通勤手当が月5000円の人と3万円の人では、社会保険料に差が生じる可能性があります。

 

ただし、通勤手当が多いからといって、必ず保険料が増えるわけではありません。また、厚生年金保険料が高くなることは、将来の年金額が増える要因にもなります。

 

通勤距離による負担の違いが気になる人は、まず給与明細や標準報酬月額を確認してみましょう。制度の仕組みを理解することで、自分の手取りや将来の年金について、より具体的に考えられるようになります。

 


出典


国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当

日本年金機構 厚生年金保険の保険料

日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和8年度版)

 

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー


情報提供元: ファイナンシャルフィールド
記事名:「 「通勤手当は交通費として全部使うのに…」SNSで“通勤税”が話題に。会社の近くに住む同僚は通勤手当「5000円」、郊外から通う私は「3万円」です。通勤距離が長いだけで社会保険料にも差がつくのでしょうか? 」