年金「月15万円」を70歳から「月21万3000円」に増やす予定が…“税金・社会保険料”の急増で、手取り「月16万5000円」にしかならない落とし穴! 繰り下げの意味はない? 81歳が損益分岐点になる理由
年金繰下げで額面は42%増の「月21万3000円」になる仕組み
公的年金は原則65歳から受給が始まりますが、希望すれば受給開始時期を66歳から最長75歳まで繰り下げることができます。
繰下げ受給を選択した場合、受給を1ヶ月遅らせるごとに「0.7%」増額されます。65歳で受け取るはずの年金を、5年間(60ヶ月)待って70歳から受給開始した場合の増額率は42%です。
65歳時点での年金支給額が「月額15万円(年間180万円)」の人が、70歳まで受給を繰り下げたとします。額面の年金額は42%増額され、「月額21万3000円(年間255万6000円)」となります。
繰下げ受給をすることによって受給額が大きく増額されますが、増額した年金が全額口座に振り込まれるわけではない点に注意が必要です。
税金と社会保険料の負担増で「手取り月16万5000円」に目減りするカラクリ
年金の振込額は、額面の金額から所得税、住民税、国民健康保険料、介護保険料が天引きされた残りの金額となります。
所得税は、所得が多くなるほど税率が高くなる「累進課税制度」を採用しています。公的年金等の課税関係において、年金受給額が増えれば公的年金等控除を差し引いた後の雑所得も増加する仕組みです。
65歳から月15万円(年180万円)を受給する場合、各種控除が適用されるため、税金や社会保険料の引去り率は額面の約13.3%程度に収まります。この場合の実際の手取り額は「月約13万円(年156万円)」です。
一方、70歳まで繰り下げて額面が月21万3000円に増えた場合、所得税や住民税の課税対象額が増え、国民健康保険料や介護保険料の負担が増える恐れがあります。
その結果、引去り率は約22.5%へ上昇し、実際の手取り額は「月約16万5000円(年198万円)」にとどまる計算になります。額面では月6万3000円増えているにもかかわらず、手取りでは月3万5000円しか増えないという、「手取りの目減り」が発生するのです。
損益分岐点は「81歳11ヶ月」。65歳受給と70歳繰下げ受給を比較
手取り額の増加幅が圧縮されることで、繰下げ受給の「損益分岐点」は大きく先送りされます。65歳で受給した場合と70歳で繰下げ受給した場合で、比較してみます。
65歳から月15万円を受け取り続けた場合、70歳時点での受給額は900万円です。70歳から月21万3000円を受給開始した場合、繰下げ受給によって受け取れなかった900万円の差が埋まるタイミングは、11年11ヶ月の「81歳11ヶ月」となります。
ただし、それぞれ額面上の計算であり、各種税金や保険料などが含まれていないため、働き方や配偶者の有無などによって変化する点に注意が必要です。自身の状況によっては、81歳11ヶ月よりも損益分岐点が遅くなる可能性があります。
額面の増額率に惑わされない!「手取りの目減り」を踏まえた後悔しない年金戦略
年金の繰下げ受給は、「額面」だけで判断すると、増税と社会保険料アップによる手取りの目減りで後悔する恐れがあります。65歳時点で月15万円の年金を70歳まで繰り下げて月21万3000円に増やしても、実際の手取り額は月16万5000円程度です。
また、損益分岐点である「81歳」まで生きなければ、トータルでプラスにはなりません。
受給開始年齢を決定する際は、見かけの増額率に惑わされることなく、税引き後の「手取り額」と自身の健康寿命やライフプランを照らし合わせて、最も現実的な選択をすることが重要です。
出典
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー