誰も住んでいない実家について「月9万円で貸せる」と言われました。ただし修繕に「180万円」かかるそうです。売却せず賃貸にするほうが、本当に得なのでしょうか?
月9万円の家賃収入なら180万円を何年で回収できる?
実家を月9万円で貸し出せた場合、年間の家賃収入は108万円になります。単純に家賃収入だけで計算すると、180万円の修繕費を回収するまでの期間は次のとおりです。
180万円÷108万円=約1.67年
つまり、約1年8ヶ月分の家賃収入に相当します。ただし、これは入居者が途切れず、家賃収入をすべて修繕費の回収に充てられると仮定した場合です。
実際には、入居者が見つからない期間や、退去後に次の入居者を募集する期間が発生することもあります。
例えば、年間12ヶ月のうち10ヶ月しか入居者がいなかった場合、年間の家賃収入は90万円です。この場合、180万円の修繕費は家賃収入の2年分に相当します。
さらに、賃貸経営では固定資産税や火災保険料、管理委託料、設備の修理費なども発生します。そのため、家賃収入だけで修繕費を割った期間よりも、実際の投資回収には時間がかかると考えられます。
また、月9万円という家賃が実際に見込めるかどうかも重要です。周辺の賃貸物件と比較して家賃が高すぎる場合、入居者が見つかりにくくなる可能性があります。
不動産会社には、周辺の類似物件の募集状況や、想定する入居者層なども確認しましょう。
維持費や空室を考慮すると手元に残る金額は変わる
実家を賃貸に出した場合の収支を、もう少し具体的に考えてみましょう。ここでは、月額家賃9万円、年間の入居期間を10ヶ月と仮定します。
年間家賃収入は90万円です。一方、年間の費用として、固定資産税・都市計画税が12万円、管理委託料が5万円、火災保険料や実際に発生した小規模な修繕費が8万円かかると仮定します。
この場合、年間の支出は25万円です。
90万円-25万円=65万円
年間の収支は65万円となります。初期修繕費180万円を、この年間65万円で回収すると考えた場合、約2.8年かかる計算です。
ただし、この試算には所得税や住民税、将来の大規模修繕、入居者募集時の費用などを含めていません。
また、実際の空室期間や修繕費によって収支は変動します。築年数の古い住宅では、給湯器やエアコン、水回りなどの設備が故障し、追加の修繕費が必要になることも考えられます。
なお、国税庁によると、不動産所得は原則として家賃などの総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。
固定資産税や損害保険料、一定の修繕費などは必要経費に該当しますが、建物の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする工事は、資本的支出として減価償却が必要になる場合があります。そのため、180万円の修繕費を税務上すべて一度に経費にできるとは限りません。
賃貸と売却のどちらが得かは保有期間も重要
実家を賃貸に出すか売却するかを判断する際は、毎月の家賃収入だけでなく、将来の資産価値も考える必要があります。
例えば、実家を1500万円で売却できると仮定します。売却すれば、仲介手数料や税金などを差し引いた金額を一度に受け取れる可能性があります。
一方、賃貸に出せば、毎月の家賃収入を得ながら土地と建物を保有し続けられます。先ほどの年間収支65万円が10年間続くと仮定すると、累計の収支は650万円です。
ここから初期修繕費180万円を差し引くと470万円になります。ただし、これは10年間の賃貸収支を単純計算した金額であり、将来の売却代金は含まれていません。また、10年間の途中で設備交換や大規模修繕が必要になれば、実際に残る金額はさらに少なくなります。
賃貸に出した後で売却する場合は、入居者がいる状態での売却になることもあり、買主の対象や売却条件が変わる場合があります。
さらに、相続した実家については、一定の要件を満たせば、売却時に譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例があります。ただし、2024年1月1日以後の売却で、対象となる家屋や敷地などを取得した相続人が3人以上の場合は、控除額の上限が2000万円となります。
この特例には売却期限や建物の条件などがあり、相続後に賃貸として利用した場合は、原則として適用対象外となります。そのため、将来的に売却する予定がある場合は、賃貸を始める前に税制上の条件を確認することも大切です。
賃貸と売却のどちらが得になるかは、売却価格、家賃収入、維持費、保有期間などを組み合わせて判断しましょう。
まとめ
実家を月9万円で貸し出せれば、年間最大108万円の家賃収入が見込めます。ただし、180万円の修繕費に加えて、固定資産税や管理費、空室による収入減少なども考慮する必要があります。
また、賃貸に出すことで将来の売却条件や税制上の特例に影響する可能性もあります。
まずは複数の不動産会社に賃貸と売却の両方を査定してもらい、修繕費の見積もりも確認しましょう。短期的な家賃収入だけでなく、将来の手取りまで比較することが大切です。
出典
国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
国税庁 No.1379 修繕費とならないものの判定
国税庁 No.2107 資本的支出を行った場合の減価償却
国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー