米国株ETF「VYM」の分配金と外国税額控除の基本


米国株や米国ETFから支払われる分配金には、米国現地で10%の税金が課税されます。さらに、日本国内でも所得税・住民税などが課税されるため、海外と日本で二重に課税されることを調整するために用意されているのが「外国税額控除」です。

 

特定口座(源泉徴収あり)で受け取った分配金も、確定申告で外国税額控除を適用できます。

 

年間50万円の分配金であれば、米国現地税は約5万円となります。一見すると、海外で引かれた税金を取り戻せるため、お得な制度に見えますが、この「確定申告をする」という行為自体に注意が必要です。

 


確定申告で配当所得が自治体に把握される仕組み


特定口座(源泉徴収あり)を選択している場合、上場株式などの配当を確定申告しなければ、源泉徴収によって課税関係を完結させることができます。この場合、原則として、その配当所得は、国民健康保険料などの算定に反映されません。

 

一方、外国税額控除を受けるために確定申告を行い、配当所得を申告すると、その所得が自治体にも把握されることになります。確定申告した上場株式の配当所得は、国民健康保険料などの算定に影響する場合があります。

 

そのため、年間50万円の配当所得を申告すると、源泉徴収だけで課税関係を完結させていた場合と比べて、翌年の国民健康保険料などが上がる可能性があるのです。

 


税制改正により所得税と住民税の「分離」ができなくなった影響


以前であれば、「所得税は確定申告をして外国税額控除を受け、住民税は申告不要を選択する」といった方法が可能でした。これにより、所得税では外国税額控除を受けながら、住民税側では配当所得を申告しない選択ができたのです。

 

しかし、2024年度分の確定申告から、上場株式などの配当所得などについて、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できなくなりました。

 

そのため、所得税で確定申告をして配当所得を申告すると、住民税も同じ課税方式が適用され、国民健康保険料などにも影響する場合があるので注意が必要です。

 


保険料増額? 手取りを減らさない判断


公的年金などの所得に加え、確定申告によって50万円の配当所得を申告した場合、国民健康保険料などの算定に使われる所得が増えるため、保険料が上がる可能性があります。

 

それまで年間10万円程度だった国民健康保険料や介護保険料が、配当所得を申告したことで年間25万円近くまで上がったと仮定しましょう。

 

外国税額控除によって手元に戻る税金が約5万円であるのに対し、保険料の増額が15万円になれば、差し引きで10万円以上の負担増です。税金だけを見ると得をしているように感じても、社会保険料まで含めると、かえって手取りが減るケースがあります。

 

また、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度では、所得に応じて医療費の窓口負担割合が1割、2割、3割に分かれています。上場株式などの配当所得を確定申告することで所得が増えると、窓口負担割合や保険料に影響する場合があります。

 

そのため、外国税額控除によって戻る税金だけを見るのではなく、保険料や医療費の自己負担への影響まで含めた判断が大切です。場合によっては、あえて外国税額控除を受けず、「確定申告をしない(特定口座内で源泉徴収を完結させる)」ほうが、結果として手元に残る金額が多くなるでしょう。

 


外国税額控除と国民健康保険料のバランスを見極める


特定口座で保有する米国株ETF「VYM」の分配金について、外国税額控除を使って米国現地で課税された税金を取り戻す確定申告は、一見するとお得な節税手法に思えるかもしれません。

 

しかし、確定申告によって配当所得を申告すると、翌年の国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、介護保険料などに影響する可能性があるため、注意が必要です。

 

税制改正により、所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなった現在では、取り戻せる税金だけで判断すると、保険料の増額分によって、かえって手取りが減ってしまうケースもあります。

 

特に、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している年金生活者の人は、外国税額控除による還付額だけで判断せず、保険料や医療費の自己負担への影響も含めて比較し、最終的に手元に残る金額を守る視点を持って判断してください。

 


出典


国税庁 No.1240 居住者に係る外国税額控除

厚生労働省 後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)

 

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー


情報提供元: ファイナンシャルフィールド
記事名:「 特定口座の「米国株VYM」で“年50万円”の分配金! 確定申告で「外国税額控除」を受けたら、国民健康保険料が「10万→25万円」に急増!?“年金月15万円”の手取りが削られる落とし穴 」