定年退職した父は年金「月15万円」で、貯金もあります。それでも「時給1500円なら稼げる」とコンビニ夜勤を始めるとのこと…。生活に困っていなくても、働いて収入を増やすメリットはあるのでしょうか?
60代男性の6割以上が働く時代! 年金月15万円や貯金があってもシニアが就労を選ぶ理由
定年を迎えた父親が、十分な年金や貯金があるにもかかわらずコンビニの夜勤などを始めようとすると、家族としては「生活に困っていないのになぜわざわざ働くのだろう」と疑問に思うかもしれません。
しかし、現在の日本社会において、定年退職後も働き続けるシニア世代は決して珍しくありません。
内閣府が公表している「令和7年版高齢社会白書」によると、令和6年の労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.6%に達しており、長期的にも上昇傾向を続けています。
具体的に男性の就業状況を見ていくと、60歳から64歳で84.0%、65歳から69歳で62.8%、さらに70歳から74歳でも43.8%の人が働いています。60代後半の男性では6割以上が何らかの仕事に就いており、65歳を過ぎても多くの人が働く生活を選択している状況です。
また、同資料によると、現在収入のある仕事をしている60歳以上の者のうち、約3割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しています。70歳くらいまで、あるいはそれ以上働きたいという回答を含めると、約8割のシニアが高い就労意欲を維持していることが分かります。
定年後に働く理由としては、「生活費を得るため」という理由だけでなく、「社会とのつながりを保つため」や「身体的健康を維持するため」といった理由も多いようです。
つまり、単に金銭的な困窮だけが働く理由ではなく、生活をより充実させるために自発的に就労を選ぶシニアが多いと考えられます。
夫婦の生活費に備える! 定年後の就労で老齢厚生年金増額や繰下げ受給を生かす経済的メリット
現時点で生活費に困っていない場合でも、定年後に働いて収入を得ることは、貯蓄の取り崩しを抑えることにつながります。将来の医療費や介護費など、予期せぬ支出に備える余裕を持ちやすくなる点もメリットのひとつです。
厚生労働省が公表している「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均受給額は、厚生年金保険で月額15万1142円、国民年金で月額5万9431円です。
一方で、総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦2人・無職世帯では1ヶ月の消費支出はおよそ26万円とされており、公的年金の給付だけで毎月の生活費すべてを賄うのは容易ではありません。
さらに、金融経済教育推進機構が公表している「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、50代の貯金額の中央値は単身世帯で120万円、2人以上世帯で700万円にとどまっており、十分な老後資金を確保できていない世帯も存在します。
このような状況下において、定年後に時給1500円などで働くことは毎月の家計の助けになるだけでなく、将来受け取れる年金額そのものを増やす機会になります。
厚生年金には満70歳まで加入できるため、定年後も企業などで就労して給与収入を得ることで、将来の老齢厚生年金の受給額を引き上げることが可能です。
加えて、働いて定期的な収入を得ることで、公的年金の「繰下げ受給」を活用しやすくなる点もメリットです。公的年金は受給開始を65歳から1ヶ月遅らせるごとに0.7%ずつ支給額が増額されます(最大84%)。
まとめ
定年退職を迎えた父親が、年金や貯金を持ちながらも「時給1500円なら稼げる」とコンビニ夜勤などの仕事に挑戦すると、家族としては「無理をしてまで働かなくてもよいのでは」と心配になるかもしれません。
しかし、定年後に働くことには、収入を得るだけでなく、社会とのつながりを保ったり、生活にメリハリをつけたりする側面もあります。
生活費に余裕がある場合でも、自分の体調や生活リズムに合わせて無理のない範囲で働くことは、老後の選択肢のひとつです。収入面だけでなく、働く目的や健康状態なども踏まえ、本人が納得できる働き方を選ぶことが大切でしょう。
出典
内閣府 令和7年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向(17、19、21ページ)
厚生労働省年金局 令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 II. 厚生年金保険 (2)給付状況 表6 厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額の推移(8ページ)、III. 国民年金 (2)給付状況 表20 国民年金 受給者の平均年金月額の推移(19ページ)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2025年(令和7年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支<参考4>65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2025年-(18ページ)
金融経済教育推進機構(J-FLEC) 家計の金融行動に関する世論調査 2025年 二人以上世帯、単身世帯
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー