年収「800万円」の兄に昇給の話が。本人は「税金が増えるなら年収は上がらないほうが得」と言いますが、収入が増えるほど手取りで損をするのでしょうか…?
年収800万円から昇給すると所得税率は上がる?
日本の所得税には、所得が多い人ほど高い税率が適用される「累進課税」という仕組みがあります。
国税庁によると、所得税率は5~45%の7段階に分かれています。例えば、課税所得が330万円以上695万円未満の場合は20%、695万円以上900万円未満の場合は23%です。
ここで注意したいのは、税率が決まる基準は年収ではなく「課税所得」だという点です。
課税所得とは、年収から給与所得控除や基礎控除、社会保険料控除などを差し引いた金額です。そのため、年収800万円すべてに所得税がかかるわけではありません。
また、課税所得が増えて税率の区分が変わっても、所得全体に高い税率が適用されるわけではありません。
例えば、課税所得が690万円から700万円に増えた場合、695万円を超えた5万円の部分に23%の税率が適用されます。それまでの所得に対する税率が、すべて23%に変わるわけではないのです。
つまり、昇給によって適用される所得税率が上がったとしても、税率の上昇だけで手取り額が減ることは基本的にありません。
年収800万円から850万円・900万円になると手取りはいくら増える?
それでは、仮に年収800万円から850万円、900万円に昇給した場合、手取りはどの程度増えるのでしょうか。実際の手取り額は、年齢や扶養家族の有無、社会保険の加入先などによって異なります。
ここでは、増えた給与に対する社会保険料の本人負担を15%、所得税率を20%、住民税率を10%と仮定して計算します。なお、復興特別所得税や細かな控除の変化は省略した概算です。
年収が50万円増えた場合、社会保険料の増加額は約7万5000円です。残りの42万5000円に所得税と住民税が合計30%かかるとすると、税金の増加額は約12万7500円となります。
したがって、手取りは約29万7500円増える計算です。同じ条件で年収が100万円増えた場合は、社会保険料が約15万円、税金が約25万5000円増えるため、手取りは約59万5000円増えます。
このように、昇給額のすべてを受け取れるわけではありませんが、税金や社会保険料を差し引いても、手取りは増えると考えられます。ただし、実際の金額は給与と賞与の配分などによって変わるため、あくまで目安として考えましょう。
昇給すると社会保険料や住民税も増える?
昇給によって増える負担は、所得税だけではありません。住民税や社会保険料も増える場合があります。
住民税の所得割は、原則として課税所得に対して合計10%の税率が適用されます。また、住民税は前年の所得をもとに計算されるため、昇給の影響が翌年度の税額に反映される点にも注意が必要です。
例えば、今年昇給した場合、翌年6月から住民税が高くなる可能性があります。そのため、昇給直後だけでなく、翌年以降の手取りも確認しておきましょう。
一方、社会保険料には、健康保険料や厚生年金保険料などがあります。これらの保険料は、原則として給与を一定の幅で区分した「標準報酬月額」などをもとに計算されます。
昇給によって標準報酬月額が上がると、社会保険料も増えるため、想像していたほど手取りが増えない場合もあるでしょう。
ただし、厚生年金保険料が増えることは、将来受け取る老齢厚生年金の額が増える要因にもなります。目先の手取りだけでなく、将来の保障も含めて考えることが大切です。
まとめ
年収800万円から昇給すると、所得税や住民税、社会保険料の負担が増える可能性があります。しかし、所得税は増えた所得に応じて段階的に課税されるため、税率が上がっただけで手取りが減るわけではありません。
ただし、昇給によって勤務先の手当などが減る場合は、手取りに影響する可能性があります。昇給後の税金や社会保険料を確認し、実際に手取りがどの程度増えるのかを試算したうえで判断するとよいでしょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.2260 所得税の税率
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー