友人が50歳で「退職金5000万円」の早期退職を打診されたそうです。本人は「これだけもらえるなら辞めてもいいかも」と乗り気ですが、「5000万円」という金額だけで退職を決めてしまってもよいのでしょうか?
早期退職と定年退職では退職金の手取りが変わる
退職金は退職所得として、所得税と住民税の課税対象です。ただし、基本的にほかの所得とは合計せず退職金のみで計算します。国税庁によると、退職所得にかかる所得税の求め方は次の通りです。
(1)退職所得控除を求める
(2)収入から退職所得控除を差し引く
(3)(2)の金額を2分の1にする
(4)(3)の計算結果に所得税率をかけ、控除額を差し引く
(5)(4)の金額に、復興特別所得税率2.1%をかけ、所得税額と合算する
このうち、退職所得の金額は勤続年数に応じて変動する仕組みです。同じ退職金額でも、早期退職より定年退職の方が、手取り額は多くなるでしょう。
なお、「退職所得の受給に関する申告書」の提出の有無で源泉徴収税額の計算方法が変わるため注意が必要です。申告書を提出している場合は、職場側で退職所得に合った所得税率で計算します。一方、申告書が未提出の場合は、一律で「支払われた退職金額×20.42%」です。
住民税は(3)の金額に対し、市県民税率などをかけると求められます。
退職金が5000万円のときの手取りの違いはいくら?
今回は、以下の条件で退職金の手取りを試算しましょう。
・退職金額が5000万円
・申告書は提出済み
・退職金は一括払い
・勤続年数は28年(50歳早期退職)と43年(65歳定年退職)で比較
・東京都北区在住
まず、勤続年数が28年の場合、退職所得控除額は1360万円です。退職金額から退職所得控除を差し引き、2分の1にした1820万円が課税対象になります。
1820万円のとき、所得税額は448万4000円、復興特別所得税は9万4164円です。また、東京都北区の場合、退職金にかかる住民税率は特別区民税6%、都民税率4%です。計算をすると、住民税額は合計182万円になります。退職金額から税金を引くと、手取り額は4360万1836円です。
一方、勤続年数が43年になると、退職所得控除額は2410万円で、課税対象となるのは1295万円です。所得税と復興特別所得税の合計は279万4987円、住民税は129万5000円で、退職金額の手取り額は4591万13円になります。
この条件では、定年退職したときの方が、手取り額が230万8177円多くなることが分かります。
退職金の手取り以外で50歳での早期退職と65歳での定年退職で影響があるもの
早期退職をすると再就職をしない限り、給与はその時点からもらえません。50歳と65歳の退職では、15年分の差が生じます。
50歳時点の月収が40万円で65歳まで一定だと仮定すると、15年間で7200万円です。実際には賞与なども加わるため、50歳で早期退職した場合と65歳での定年退職時には、給料の総額に大きな差が出るでしょう。
さらに、厚生年金に加入している人の場合、老後の老齢厚生年金額は、加入期間や給料を基に算出される標準報酬額などによって変動する仕組みです。早期退職をすると、加入期間が短くなるため、定年退職した場合よりも老齢厚生年金額が少なくなります。
そのため、早期退職を判断する際は、退職金額だけでなく、給料の総支給額や老後の年金額が減っても生活できるのかなども考慮したうえで決めることが大切です。
退職金額だけでなくほかの要素も考慮して判断する必要がある
早期退職で退職金を多く受け取れる場合でも、勤続年数が定年退職よりも短くなるため、差し引かれる税額も増える場合があります。そうなると、同じ金額を定年退職で受け取ったときよりも手取りが少なくなる可能性があるため注意が必要です。
また、早期退職では老後の年金額が減少することが考えられます。早期退職を判断する際には、年金など減少する項目を理解し、退職後に生活できるかなどをよく考えたうえで決めましょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和8年度版) 退職金と税
東京都北区 退職所得にかかる住民税
日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー