「NISA口座は一度開いたら変えられない」と思っていました。10月1日から金融機関を変更できるそうですが、今持っている投資信託はどうなるのでしょうか?
1. 「何となく」から「今の私」へ。ライフスタイルに合わせた見直し
50代・60代は、子どもの独立やご自身の退職、親の介護など、暮らしを取り巻く環境が大きく変化する時期です。NISA口座を開設した当初は、「勧められて何となく」「普段使っている金融機関だったから」といった理由でスタートした方もいらっしゃるでしょう。
しかし、退職を機にお付き合いする金融機関や担当者が変わったり、お金に関する興味や知識が深まったりすることで、「もう少し相談しやすいところにしたい」「自分に合った商品を選びたい」「使い勝手のよい金融機関にしたい」と考えるようになることもあります。金融機関を選ぶ基準は、手数料や商品の多さだけではありません。
「困ったときに相談できるか」「自分にとって使いやすいか」「これからの資産形成を安心して続けられるか」など、今の暮らしや価値観に合っているかという視点も大切です。NISA口座を見直すことは、これからのセカンドライフに向けて、お金との付き合い方を改めて考えるきっかけにもなります。
2. 誤解しがち! これまで買った資産はどうなる?
金融機関を変更すると聞くと、「今持っている投資信託を全部売らなければならないの?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その必要はありません。これまでNISAで購入した商品は、金融機関を変更した後も、元の金融機関のNISA口座に残して非課税で保有を続けることができます。
NISAの金融機関変更は、これまで保有してきた資産を新しい金融機関へ丸ごと移す手続きではなく、これからNISAで新しく買い付ける金融機関を変更する手続きだからです。
過去の資産を動かしたい場合は注意
「せっかくなら、今持っている商品も新しい金融機関にまとめたい」と思われるかもしれません。しかし、制度上、NISA口座で保有している商品を、非課税のまま変更後の金融機関のNISA口座へ移すことはできません。
たとえば、現在保有している商品をいったん売却し、新しい金融機関のNISA口座で同じ商品などを買い直すことはできます。ただし、その場合は新たな買付となるため、その年の年間投資枠を使うことになります。
そのため、金融機関を変更したからといって、これまで保有してきた商品まで無理に動かす必要はありません。「これまでの資産は元の金融機関で非課税保有を続け、これからの買付は新しい金融機関で行う」という方法も選択肢の一つです。
3. 10月1日から翌年分の手続き開始! 口座変更のルール
NISAの金融機関変更は、いつでも自由にできるわけではありません。税制上、変更したい年の前年10月1日から、その年の9月30日までが手続き期間となっています。
ここでポイントになるのが、「その年にすでにNISAで買付をしているかどうか」です。
■今年すでにNISAで買付をしている場合
その年分については金融機関を変更できません。そのため、10月1日以降に手続きを行い、翌年分から金融機関を変更することになります。
■今年まだ一度もNISAで買付をしていない場合
9月30日までであれば、その年分の金融機関変更が可能です。一方、10月1日以降に手続きをする場合は、翌年分からの変更となります。
つまり、10月1日は「翌年からNISAをどの金融機関で利用するか」を考える一つのタイミングといえます。
4. 金融機関変更の基本的な3ステップ
手続きの基本的な流れも確認しておきましょう。
■ステップ1:現在の金融機関で変更手続きをする
現在NISA口座を利用している金融機関に、金融機関を変更したい旨を伝えて手続きを行います。手続き後、「勘定廃止通知書」などの必要書類が交付されます。
■ステップ2:新しく利用したい金融機関に申し込む
変更先の金融機関で、NISA口座の金融機関変更を申し込みます。
■ステップ3:必要書類を提出する
現在の金融機関から交付された書類などを変更先の金融機関へ提出します。その後、必要な確認手続きを経て、新しい金融機関でNISAを利用できるようになります。
金融機関によって手続き方法や必要な期間は異なります。翌年1月から新しい金融機関で買付を始めたい場合は、年末ぎりぎりではなく、余裕を持って手続きを進めておくと安心です。
結論:これからの自分に合ったNISAとの付き合い方を
NISAは「始めること」がゴールではありません。50代・60代になると、収入や家族構成、これから必要になるお金、そして資産形成に対する考え方も変わってきます。
数年前には自分に合っていた金融機関でも、今の自分にとって最適とは限りません。「何となく」で始まった資産形成から、今の自分のライフスタイルや考え方に合わせた「意思のある口座選び」へ。
10月1日から始まる翌年分の金融機関変更手続きをきっかけに、「今の自分にとって、このNISA口座は使いやすいだろうか」と一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
金融機関を変えること自体が目的ではありません。これからのお金との付き合い方を、自分に合った形へ少しずつ整えていく。その一つの選択肢として、NISA口座の金融機関変更を考えてみるのもよいでしょう。
執筆者 : 福本知輝
福本FP事務所 代表、広島県相続診断士 会長、寺院コンサルタント