「管理職は残業代ゼロ」を実質採用している会社は多いが合法なの?


課長という肩書だけで、会社は残業代を支給しなくてもよいわけではありません。

 

労働基準法41条2号の「管理監督者」に該当すると、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されず、原則として時間外・休日労働の割増賃金の対象外となります。

 

厚生労働省によると、管理監督者かどうかは役職名ではなく、主に職務内容や責任・権限、勤務態様、賃金などの待遇を踏まえて判断されます。

 

一方、管理監督者でなくても、一定時間分の残業代を給与に含める「固定残業代制度」が適法に導入されている場合があります。ただし、固定残業代を超える時間外労働があれば差額の支払いが必要です。

 

また、管理監督者であっても22時から翌5時までの深夜割増賃金は必要で、年次有給休暇も付与されます。

 


残業代がなくなる代わりに手当がつくと給料はどう変わる?


管理職への昇進で残業代が支給されなくなっても、基本給や役職手当の増加額が残業代の減少分と同程度であれば、総支給額は大きく変わりません。

 

例えば、昇進前に月5万円の残業代を受け取っていた人が、昇進によって基本給と役職手当の合計で5万円増えれば、単純計算で総支給額は同程度です。増額が8万円なら3万円増え、3万円なら総支給額は2万円減ります。

 

つまり、基本給が上がったかどうかだけでは、昇進による収入の増減は判断できません。昇進前の残業代と、昇進後の基本給・役職手当を合計して比較する必要があります。

 

ただし、総支給額がほぼ同じでも、実際の手取りまで同じになるとは限りません。社会保険料や住民税などの控除額によって、手元に残る金額は変わるためです。

 


基本給がアップしても手取りが下がるパターンとは?


基本給が上がっても、それ以上に残業代が減れば、総支給額が昇進前を下回り、手取りは減る可能性があります。

 

例えば、昇進によって基本給と役職手当が月3万円増えても、それまで月5万円受け取っていた残業代がなくなれば、総支給額は月2万円減ります。基本給だけを見ると昇給でも、給与全体では減額となるケースです。

 

さらに注意したいのが、社会保険料です。健康保険や厚生年金の保険料は、「標準報酬月額」をもとに計算されます。昇給などで固定的賃金が変わり、その後3ヶ月の報酬平均から算出した標準報酬月額が、従来と2等級以上変わるなどの要件を満たすと、原則として4ヶ月目から標準報酬月額が改定されます。

 

ただし、「基本給は上がったが、残業代が大きく減って報酬全体は下がった」というケースでは、固定的賃金と報酬全体の変動方向が逆になります。この場合、2等級以上下がっても、原則として随時改定による標準報酬月額の引き下げ対象にはなりません。

 

そのため、総支給額が減ったのに、社会保険料はすぐには下がらず、昇進後の手取り減を大きく感じるケースがあります。標準報酬月額は、毎年4~6月の報酬をもとに行う定時決定などによっても見直されます。

 

反対に、昇進後の報酬全体が増えて標準報酬月額が上がれば、健康保険料や厚生年金保険料の負担は増えます。この場合、総支給額は増えていても、手取りの増加幅は小さくなります。

 

厚生年金保険料率は18.3%で労使折半です。協会けんぽの健康保険料率は都道府県によって異なります。また、2026年4月分からは子ども・子育て支援金率0.23%が加わり、会社員は事業主と折半して負担します。

 

住民税は、前年の所得をもとに計算され、原則として6月から翌年5月まで給与から天引きされます。そのため、昇進後に残業代が減っても、前年の所得が高ければ住民税はすぐには下がりません。

 


まとめ


課長に昇進しただけで、残業代がなくなるわけではありません。労働基準法上の管理監督者に該当するかどうかは、肩書ではなく仕事内容や権限、勤務態様、待遇などで判断されます。

 

また、「基本給が上がったのに手取りが減った」ときは、基本給だけを見るのではなく、残業代を含めた総支給額が昇進前後でどう変わったのかを確認することが重要です。

 

そのうえで、標準報酬月額、社会保険料、住民税を確認すれば、手取りが減った原因を整理しやすくなります。管理監督者としての扱いに疑問がある場合は、就業規則を確認したうえで労働基準監督署などに相談する方法もあります。

 


出典


厚生労働省 「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A

 

執筆者 : 高柳政道

FP1級、CFP、DCプランナー2級


情報提供元: ファイナンシャルフィールド
記事名:「 課長昇進で「基本給が年100万円増える」と喜んでたら、社会保険料“等級アップ”で「手取り32万→29万円に減」にショック! しかも管理職は“残業代ゼロ”!? 昇進後に手取りが変わる仕組み 」