株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のフェーズフリー市場を調査し、市場規模、市場動向、今後の課題や対策、将来展望を明らかにした。ここでは、フェーズフリー商品小売市場規模推移・予測について、公表する。

1. 市場概況

フェーズフリーとは、日常(平常時)と非常(災害時)を分け隔てるのではなく、どちらの状況でも価値や機能を発揮する商品やサービス等をデザインする考え方、取り組みである。これにより災害等が発生しても生活が完全に停止することなく、日常の延長線上で対応が可能となり、被害を最小限に抑え、より安全で持続可能な社会の構築に寄与することを目的としている。
一般社団法人フェーズフリー協会では、フェーズフリー認証制度を2019年に開始し、そうしたフェーズフリーの理念に合致する「商品」「サービス」「ファシリティ(施設)」を認証している。

本調査では、フェイズフリー認証をされた商品を対象としており、 2024年度の国内フェーズフリー商品市場規模を、小売金額ベースで232億円と推計した。市場規模は前年度比125.4%と大きく伸長している。
その要因は、既存の生活用品(日用品、文具、雑貨、キッチン用品・家電など)をフェーズフリーとして再定義した商品が好調な売れ行きを示したことや、主力販売チャネルの直販や卸売に加えてECチャネルなど販路が多様化したこと、日常の延長として防災を捉えるフェーズフリーの考え方が生活者に浸透して新たな消費行動として広がりつつあること等が挙げられる。

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フェイズフリー認証制度についても、食品や家具、住宅・住宅設備、公共設備など多様な業種・業態に広がっている。フェーズフリー協会によると、2024年12月末時点における認証商品は約100件に達しており、2025年以降も増加が続いている。また、消費行動としての広がりに加えて、BCP(事業継続計画)対策として法人や自治体による採用も拡大している。
今後も認証商品ジャンルの広がりとともに、認証取得の動きが一層活発化することが見込まれ、フェーズフリー商品小売市場規模のさらなる拡大が期待される。

2.注目トピック~公共施策の新たな標準へ

近年、少子高齢化や人口減少、財政制約といった構造的課題を背景に、自治体における公共施策の在り方が大きく問われている。そのようななかで、日常と非常(災害時)を分け隔てるのではなく、平時のくらしのなかで自然と備えができるという新たな視点「フェーズフリー」が全国の自治体政策の中に広がりを見せている。

フェーズフリーの理念が、行政や自治体において発注仕様書や総合計画に盛り込まれるケースが増えている。「日常に自然に備えを組み込む」という価値観は、特定の層に限らず幅広い生活者にとって理解しやすく共感が得やすいため、今後の都市政策や公共整備における新たな標準となりつつある。これに伴い、民間企業側の開発・生産インセンティブが高まることで、フェーズフリー認証商品の量産化や普及へと進むと考えられる。

3.将来展望

2025年度の国内フェーズフリー商品小売市場は前年度比135.8%の315億円、2026年度は同149.2%の470億円と急拡大を予測する。
フェーズフリー認証制度の認知度向上および信頼性が高まり、生活用品から公共設備まで対象が広がっていること、BCPやサステナブル経営を背景に、備えをコストではなく“バリュー”と考える企業が増加することなどにより、2025年度から2026年度は、民間企業から公共、個人から組織へと広がる「普及フェーズへの移行期」となると考えられる。

フェーズフリーが進化した社会では、災害が発生しても生活が完全に停止することなく、日常の延長線上で対応が可能となる。結果として、災害時の被害を最小限に抑え、より安全で持続可能な社会の構築に寄与していく。年齢や障害の有無、家族構成などに関わらず、誰もが使いやすい商品やサービスが増え、フェーズフリーは“防災の選択肢”から“未来の生活文化”へとスケールアップしていく見込みである。

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調査要綱
1.調査期間:2025年3月~6月
2.調査対象:フェーズフリー参入企業
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話による取材、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2025年7月8日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】フェーズフリー市場に関する調査を実施(2025年)~2024年度の国内フェーズフリー商品小売市場規模は前年度比125.4%と大きく伸長、生活者や国・行政に考え方が浸透~