株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、世界のワイドバンドギャップ半導体単結晶市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1. 市場概況

Si(シリコン)を代替する半導体材料として、ワイドバンドギャップ半導体単結晶はパワー半導体(デバイス)を中心に採用が進んでおり、市場も年々拡大している。2022年のワイドバンド半導体単結晶世界市場(メーカー出荷金額ベース)を182億7,100万円と推計、2023年の同市場は前年比147.1%の268億8,500万円になると予測する。
材料別に2023年の市場をみると、炭化ケイ素(以下 SiC)が202億9,300万円(構成比75.5%)、窒化ガリウム(以下 GaN)は46億4,700万円(同17.3%)、酸化ガリウム(以下 Ga2O3)が5億3,100万円(同2.0%)、窒化アルミニウム(以下 AlN)は10億8,000万円(同4.0%)、ダイヤモンドが3億3,500万円(同1.2%)の見込みで、多くのアプリケーションに採用されているSiCが市場の4分の3を占める見通しである。

材料別の市場動向は以下の通りとなる。
SiCは本格的な成長ステージに差し掛かっており、市場は2025年以降、車載アプリケーションへの本格的な採用が急成長のポイントとなる見込みである。
GaNは足元状況ではLEDやLDなどの照明用途が中心であるが、パワーデバイスや高周波用途では非常に優れた特性を持ち、これまでの課題であった大口径化や大量供給に目途が立ち、GaN on GaN デバイスとして展開されるタイミングが近づきつつある。
Ga2O3はSiCデバイスと比較しコスト・性能等のポテンシャルが高く、参入プレーヤーも増えてきている。研究・開発期間の短さをカバーする成果が次々と発表されていることから、後発ながらもパワーデバイス市場に食い込む勢いである。
AlNは深紫外線のLED用単結晶として、コロナ禍の影響もあり、一定の需要を底堅く獲得している。しかし、サファイア基板を用いたタイプの深紫外線LED性能が向上しており、AlN基板の強みを出せる領域への展開が課題とされる。
ダイヤモンドは急成長の兆しがある。国内単結晶メーカーはIPOで資金調達し生産能力を上げており、大学など研究機関による世界最高性能のデバイスも開発されている。

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2.注目トピック~【ダイヤモンド】ウエハーメーカーのIPOや共同研究他成果が増え、材料・デバイス開発のスピードが早まる

2023年現在、Orbray(オーブレー)からは直径2インチのダイヤモンドウエハーの供給が始まろうとしている。また、大熊ダイヤモンドデバイスでもダイヤモンドを使用した電子デバイスの量産化が準備されている状況にある。
次世代半導体材料のウエハーとして市場拡大するためには、優れた物質特性を持つダイヤモンドは、他の材料が対応しきれない、ニッチであるが非常に付加価値の高いニーズのデバイスに搭載されることが必須となる。それはダイヤモンド基板でしか実現できないデバイスであり、そこでの活躍は規模こそ小さいが、極めて重宝されるポジションに位置付けられ、そのプレゼンスを不動のものにすると考える。

3.将来展望

ワイドバンドギャップ半導体単結晶世界市場は今後のパワーデバイスの採用拡大に伴い、市場は拡大で推移する見通しである。2030年のワイドバンドギャップ半導体単結晶市場(メーカ―出荷金額ベース)を3,176億1,200万円と予測する。材料別市場規模をみると、SiCが3,073億4,800万円、GaNは52億8,000万円、Ga2O3が30億5,600万円、AlNは13億5,000万円、ダイヤモンドが5億7,800万円と予測する。また、材料別構成比はSiCが96.8%を占めており、量産・普及時期となる材料とそれ以外の差が顕著になる見込みである。
SiCでは口径6インチウエハーが市場のほとんどを占め、8インチの市場投入も始まるタイミングが見えつつある。商流の川上川下含む提携や関連する企業も増えており、また、ワイドバンドギャップ半導体単結晶同士での競争も激しくなりつつあり、性能やコストの戦いの中から新規材料の将来が決まることになる。

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調査要綱
1.調査期間: 2023年4月~7月
2.調査対象: ワイドバンドギャップ半導体単結晶メーカー、関連企業、研究機関等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)
4.発刊日: 2023年7月31日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】ワイドバンドギャップ半導体単結晶世界市場に関する調査を実施(2023年)~2030年のワイドバンドギャップ半導体単結晶世界市場を3,176億円と予測~