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コア技術の確立、市場開拓、海外戦略、組織改革……革新的なタイヤ加硫機用バルブを開発し、世界トップシェアを築いたものづくり企業の挑戦の軌跡。
1978年、国内では未曾有のマイカーブームが起こり、世帯あたりの自動車保有台数が50%を超えようとしていた時代に、わずか4畳ほどの小さな設計室で一つのバルブが誕生しました。
それは業界の常識を覆し、のちに世界トップシェアを獲得する革新的な製品として不動の地位を築くものとなりましたが、その道のりは平坦ではありませんでした。
著者が経営する会社は、タイヤ製造に使用する加硫機用バルブや設備機器などを作るニッチな業界のメーカーです。もともと鉄工所で自動化設備などを設計していた著者の父が、故郷に戻って起業したのが始まりでした。
「加硫機用バルブ」は、自動車のタイヤを製造する過程で、ワイヤーなど複数の部材を組み合わせるために熱や圧力を加える「加硫機」を調整する部品の一つです。以前は米国の大手メーカー製が主流でしたが、壊れやすく修理しにくいという難点があり、それが当たり前とされていました。加硫機用バルブはニッチな製品であるため作り手が少なく、品質、構造、仕様などを改良する人がいなかったのです。
著者の父は改良の余地があるものだからこそ商機があるという考えから、価格を抑え、壊れにくく、メンテナンスしやすい加硫機用バルブの開発をスタートさせます。
その結果、それまでの「高価な割に壊れやすい」というバルブの常識を覆す、革新的な製品を生み出すに至ったのです。この新製品は、国内はもちろん海外からも注目を浴び、注文が殺到するようになりました。
しかしその後も、安価な類似品を作る他社との競争や、長時間労働、人手不足、在庫不足といった中小企業につきものの経営リスクなど、企業として解決すべき多くの問題に見舞われ、必死にそれを乗り越えてきたと著者はいいます。
革新的なバルブの誕生から45年ほど経った現在、加硫機用バルブの市場において、著者の会社は推計で国内90%以上、海外30%前後のシェアを占めています。
開発に端を発し、さまざまな波にもまれながら、小さな町工場だった会社は世界に認められるニッチトップ企業へと成長してきたのです。
本書は、名もない地方の町工場がニッチトップの座をつかみ、その地位を不動なものにするまでの軌跡をまとめたものです。トップへ上り詰める過程で、どのような問題に突き当たり、それを解決してきたのかも詳しく説明しています。
地方の中小企業やものづくりに情熱を傾ける企業にとって、さらなる発展と成長のヒントとなる一冊です。
【書籍情報】
書 名:『ニッチの頂点 地方メーカー世界一への軌跡』
著 者:市丸寛展(イチマル ヒロノブ)
発売日:2023年8月28日
定 価:1600円(税込価格 1760円)
体 裁:四六判・並製/198ページ
ISBN :978-4-344-94702-3
【目次】
第1章 1970年代、「品質が悪くて当たり前」の時代…… 小さな町工場が見出した商機
第2章 タイヤ製造の転換期に対応した技術革新 創業者がたった一人で生み出した「リーズナブルで壊れにくいバルブ」
第3章 初の海外展示会で認められた圧倒的な耐久性 “バルブ先進国”の欧米市場を開拓
第4章 主力製品の品質改良、製品ラインナップの拡大 世界トップシェアの座をつかみ、さらなる「攻め」の戦略を立てる
第5章 長時間残業、在庫不足……成長の裏側で浮き彫りになった経営リスク 世界トップの座を不動にするため断行した組織改革
第6章 時代に合わせたアップデートでニッチの頂点を極める 求められるのはサステナブルなものづくり
【著者プロフィール】
市丸寛展(イチマル ヒロノブ)
株式会社ROCKY-ICHIMARU 代表取締役社長
1970年生まれ。94年、東京工業大学・大学院を卒業。住友金属工業株式会社(当時)に入社。設備部で生産設備の改善や新設に携わった後、子会社の鹿島プラント工業株式会社(当時)で設計製造に従事。98年、父が創業した株式会社市丸技研(当時)に入社。2017年、4代目社長に就任。事業拡大、社内改革、理念経営の実現などに取り組む。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000286047&id=bodyimage1】
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