株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内eラーニング市場について調査を実施し、BtoB、BtoC各市場の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

2022年度の国内eラーニング市場規模は、提供事業者売上高ベースで前年度比4.3%増の3,705億円を見込む。内訳は、法人向け(企業・団体内個人を含む)のBtoB市場規模が1,075億円(前年度比10.7%増)、個人向けのBtoC市場規模が2,630億円(同1.9%増)であり、両市場ともに引き続き市場拡大が見込まれる。ただし、コロナ禍を背景に大きく市場を拡大させた2020~2021年度と比較すると成長率は鈍化しており、特にBtoC市場の伸びに落ち着きがみられている。

BtoB市場は、2022年度も企業研修におけるeラーニング需要が堅調な状況で推移したとみられるが、コロナ禍当初における急速な需要拡大からは沈静化が進んでいる。また、eラーニングサービス全般で顧客の裾野が拡大し、中堅・中小企業での小規模導入が増加した結果、顧客単価の低下に伴い市場全体の伸びは鈍化傾向にある。

BtoC市場は、コロナ禍の沈静化などを背景に当該市場を構成する学習ジャンルの多くにおいて需要の停滞がみられている。また、コロナ禍を経て子どもの学習意欲の低下(校外学習需要の低迷)が指摘されるなど市場拡大に対する阻害要因(課題)も散見されており、当該市場の2022年度の伸び率は、2020年度および2021年度における急成長から一転して微増推移に留まるものとみる。

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2.注目トピック~リスキリングをキーワードとした需要の高まり

DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進される社会環境もあって、これに対応した人材育成の必要性の高まりからリスキリングが注目を集めている。 リスキリングは、個々の学習者のレベルに応じた学習の提供が求められることや、働きながら新たな知識・スキルを習得する必要があることから、これらを機能として解決する手段(AI技術を用いた学習レコメンド、時間・場所に制約がない学習が可能など)を有するeラーニングとの親和性が高い。そのため、今後はリスキリングを求める需要の多くがeラーニングによる学習を志向させていくものと考えられ、関連サービスを提供する主要事業者各社においてもリスキリングをキーワードとした需要の高まりを感じている状況にある。

なお、リスキリングがきちんと機能するためには、業務上必要となるスキルの体系化や、個人が有するスキルの可視化・データ化などが必要であり、学習機能の提供のみならず、これらに対応したサービスの提供も増加していくことが考えられる。

3.将来展望

2023年度の国内eラーニング市場規模は、3,773億円(前年度比1.8%増)を予測する。

BtoB市場は、企業のDXやリスキリングを求める需要が牽引する形で、引き続き堅調な需要で推移していくものと考える。ただし、顧客の裾野拡大による小規模導入の増加からなる顧客単価の下落の進行や、競合状況の激化、対面教育の復調によるeラーニング利用機会の縮小などの影響により、引き続き市場拡大となるものの、その伸びは鈍化傾向に進むものと予測する。

BtoC市場は、コロナ禍の沈静化によって全般的に需要の落ち着きが想定されるものの、学習ツールとしてeラーニングの一般化が進んでいることや、学習塾を中心に講師・指導者の人的リソースをeラーニングでカバーする需要は引き続き堅調な推移が考えられること、働き方がリモートワークに代わったことで生じた余暇時間を学習にあてる社会人の増加が一般的にもみられていること、eラーニングを組み込んだ学習サービスの増加によってサービスの多様化が進行していることなどを受けて、微増ながらも拡大を予測する。

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調査要綱
1.調査期間: 2023年1月~3月
2.調査対象: eラーニングシステム開発・構築・販売事業者、eラーニングコンテンツ開発・製作・販売事業者、 eラーニングを介した研修や講義を提供・運営する事業者(学習塾、語学学校、研修事業者等)、 学習ソフトウェア開発・製作・販売事業者等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・FAX・メールによるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2023年3月27日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】eラーニング市場に関する調査を実施(2023年) 2022年度の国内eラーニング市場規模は引き続き拡大が見込まれるものの、成長率は鈍化