彼女は、コロナ禍において演奏活動が様々な制約を受ける中、自身が運営する 「Sing the Wind (風をうたう)」と名付けたYouTubeチャンネルにおいて、いくつもの風のうたを惜しげもなく公開してきた。また、2020年に自主制作したファーストアルバム「風の音」の中でも、日本の四季に彩られた様々な風をうたっている。それらの演奏を聴くと、ややもすると打楽器的にさえ捉えられがちなトランペットという楽器が、まさにWind Instrumentであるということを思い出させられる。
そんな彼女が、ついにメジャーレーベルから最初のCDをリリースする。「ROMAN」と題されたそのアルバムに収められるのは、バッハ/目覚めよと呼ぶ声あり、スパーク/Song for Ina、久石譲/Angel Springs、アンダーソン/Waltzing Cat、セヴラック/ロマンティックなワルツ、ラヴェル/道化師の朝の歌、ドビュッシー/月の光、久石譲(直江香世子編)/星をのんだ少年~人生のメリーゴーランド(「ハウルの動く城」より)、スコットランド民謡(堀越亮編)/The Water Is Wide、の9トラック。彼女自身のベースはクラシックにあるが、ここにはその枠にとらわれない多様な楽曲が並べられている。そこに通底するのは、生きることへの強い意思、そして自らが生きるこの世界に向けられた温かな愛情である。