株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、放熱ベイパーチャンパーや放熱ギャップフィラー、放熱シート、放熱接着剤・封止剤、放熱基板等の放熱部材世界市場を調査し、アプリケーション別市場動向や研究機関の動向、将来展望などを明らかにした。ここでは、放熱ベイパーチャンバー世界市場予測について、公表する。

1.市場概況

ベイパーチャンバーは、ヒートシンクのベースを中空構造にし、その中に揮発しやすい液体等を封入した構造となっている。熱源からの熱によって液体が気化した蒸気が空間内を移動し、ヒートシンク側に到達すると熱が放出されて液体に戻る。この繰り返しで、通常のヒートシンクよりも効率よく放熱することが可能になる。ベイパーチャンバーの原理は、同種の放熱部材であるヒートパイプと概ね同じであるが、ヒートパイプよりも小型化が可能という長所がある反面、コストが高いのが欠点となっている。

ベイパーチャンバーの小型化という長所を活かした典型的なアプリケーションとしてスマートフォンがある。5Gサービスの開始により、デバイスの高性能化が進む中、いかに効率的に放熱処理を施すかがスマートフォンメーカーの共通の課題となっているが、ベイパーチャンバーを採用することで可能になった。
2021年の放熱ベイパーチャンパー世界市場(メーカー出荷金額ベース)を前年比123.5%の400億円と推計した。全体の約45.0%をスマートフォン向けが占める。

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2.注目トピック~放熱を中心とする熱制御対策は重要な課題へ

スマートフォンやノートPC、タブレットPC などの小型電子機器や、パワー半導体デバイスと電子制御ユニット(ECU)、さらに大型の産業機器等の設計においても、放熱を中心とする熱制御対策は重要な課題となっている。しかも、近年の電子機器の性能向上にともない、その放熱設計の難易度も年々上がっている。なぜ電子機器の放熱設計が難しいのか。その主な理由には、次の3つが挙げられる。

1) 冷却のターゲット温度がとても低い
2) 消費電力の増大にともない発熱量も増大
3) 発熱密度が非常に高い

一番目の点については、電子機器のCPUなどに用いられるシリコン系半導体は熱に弱く、120℃程度の温度に達すると電子回路としての動作が不安定になる。そのため動作温度の上限を100℃程度として安定動作可能な状態に保つ必要があり、そのことが放熱設計を難しくしている。
二番目の点については、電子機器に搭載されるCPUやICはモーターなどに動作指令を出しているが、モーターのように回転して物を動かすような仕事をしない。それゆえ投入されたエネルギーは、そのほぼすべてが熱という形に変わることになる。電子機器の消費電力は歴史的に見れば上がる一方で、今後も増加することは間違いない。
三番目の点については、同じ量のエネルギーでも狭い範囲に集まれば集まるほど高温になるので、電子機器の放熱設計においても、半導体の集積度が増大するにつれて発熱密度が高くなる傾向が強まっており、一層対策が難しくなっている。

3.将来展望

電子部品が発熱しながらもその機能を維持するためには、放熱部材を通して速やかに熱を逃がす設計が重要となる。放熱を目的としたさまざまな熱伝導部材の必要性は高まり、2025年の放熱ベイパーチャンバー世界市場規模を2020年比287.7%の932億円になると予測する。アプリケーション別にみると、最も高い成長率を示すのがスマートフォン向けで全体市場のほぼ過半数を占める見通しである。

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調査要綱
1.調査期間: 2022年1月~4月
2.調査対象: 放熱ベイパーチャンバー関連の生産・販売・取り扱い企業、研究機関
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2022年08月29日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】放熱ベイパーチャンバー世界市場に関する調査を実施(2022年)~2025年の放熱ベイパーチャンバー世界市場規模は932億円と予測~