株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の医療情報システム市場を調査し、セグメント別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

医療情報システム(EMR:Electronic Medical Record、EHR:Electronic Health Record)は、業務効率化や情報連携を図るシステムとして、医療施設(病院や一般診療所)に導入されている。市場は、電子カルテを中核に形成されており、地域医療連携・地域包括ケアにおいて医療情報の電子化が重要視されるだけでなく、院内においてもチーム医療・クリティカルパスなど、医療における大きな変革にIT化は不可欠なツールとなっている。
また、2010年には診療録の外部保存が解禁されたことで民間事業者側のデータセンター等での診療情報の保管が認められ、クラウド型の電子カルテや医用画像管理システム(PACS)の市場も形成されており、普及が進んでいる。

医療情報システム市場は、多くのシステムで普及率が高まったことで新規導入中心からリプレイス中心の市場に移り、近年の市場規模は概ね前年度比1~2%増の推移となっていた。しかしながら、2020年度はコロナ禍の影響により、システムベンダーの営業機会の損失や院内での導入検討会議や導入作業などの遅延といった事態が顕在化した。その影響から、2020年度の医療情報システム市場規模(事業者売上高ベース)は前年度比3.8%減の2,676億7,000万円と減少となり、2021年度はそこからの回復過程になっており市場規模は前年度比2.5%増となっている。

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2.注目トピック~クラウド型電子カルテの導入が進む

医療情報システムの中核となる電子カルテにおいて、引き続き存在感を高めているのがクラウド型電子カルテである。
クラウド型電子カルテは、従来医療施設内に設置する必要のあるサーバー等のハードウェアやアプリケーションを、サービス提供側やデータセンター事業者のデータセンターからインターネット経由で利用するサービスである。医療施設内に高額なサーバー等を設置する必要がないため、電子カルテ導入にかかる初期費用を大幅に削減できるだけでなく、これらハードウェアのメンテナンスが不要となるなど人的負担も大幅に軽減できるメリットがある。さらに、診療情報などのカルテデータは外部の堅牢なデータセンターで保管されるため、災害時のデータ消失のリスク軽減やデータ復旧などにも大きな期待が寄せられている。

クラウド型電子カルテは、電子カルテの新規導入(新規開業施設での導入を含む)を後押ししていることに加え、電子カルテのシステム更新時にクラウド型へと切り替えがみられるなど、導入が進んでいる。後者については2025年度頃から本格化し、中長期的には多くの医療施設でクラウド型が採用されると予測する。

3.将来展望

前述した通り、新型コロナウイルス感染拡大の影響は徐々にゆるやかになっており、2022年度の医療情報システム市場規模はコロナ禍前の2019年度を若干上回る水準に回復すると予測する。しかしながら、医療情報システムの多くでリプレイス中心の市場であることは変わらず、2023年度以降の市場成長率は、前年度比1%程度の低い水準で推移する見通しである。
但し、医療情報システムの中核である電子カルテは、小規模病院や一般診療所においては未導入施設が多い。そこで、初期費用を抑えられる等のメリットがあるクラウド型電子カルテが注目されている。一般診療所や小規模病院における電子カルテ化が進むことで、医療情報システム市場は低水準ながらも成長は継続すると予測する。

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調査要綱
1.調査期間: 2022年6月~8月
2.調査対象: 国内の医療情報システムベンダー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに電話取材調査併用
4.発刊日:2022年08月31日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】医療情報システム(EMR・EHR)市場に関する調査を実施(2022年)~2021年度の医療情報システム市場規模は、前年度比2.5%増の2,744億9,400万円と推計~