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非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)は、1月30日(木)、2020年版の「地球規模課題への国際協力の評価」を発表しました。これは、気候変動、サイバー、通商、核軍縮など世界的な課題10分野に対する2019年の国際協力の進展への評価や、2020年におけるそれぞれの課題の重要度、解決に向けた見通しを明らかにするものです。
【大国間競争や地政学的対立が世界の分断の危険を高め、多くの世界的課題解決の障害に】
その結果、2019年の地球規模課題10分野への国際協力の総合評価は、5段階評価で上から4番目のD(やや後退した)となり、前年2018年に言論NPOが評価した「C(変わらない)」から悪化しました。
この要因としては、米中対立を中心に激化する大国間競争や、自国第一主義に伴う保護主義の動き、地政学的な対立が、多国間の取り組みの障害になっているどころか、世界の分断の危険性を高め、世界課題の解決を難しいものにしていることが挙げられます。これは国際貿易面だけではなく、サイバーガバナンス、核不拡散、国際開発など様々な分野の評価で減点要因になっています。
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言論NPOは、ルールに基づく世界の自由秩序や多国間主義の維持・発展に日本外交がリーダーシップを発揮するため、日本自身として世界の課題解決に対する主張を発信すると同時に、日本の社会にも、世界の課題を多くの人が考える舞台をつくることを目指しています。
「地球規模課題10分野への国際協力評価」は、2015年より米外交問題評議会(CFR)や英チャタムハウスをはじめとした世界25カ国のトップシンクタンクネットワーク「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」が行っているもので、言論NPOは日本を代表し、この作業に参加してきました。言論NPOが実施した評価・見解は、外交問題評議会のホームページに毎年取り上げられ、国際課題に対する日本の意見が注目されてきました。
言論NPOはこの実績を踏まえ、2020年より、まず日本として独自で評価を行い、世界に発表することにしました。日本のシンクタンクが地球規模課題に対する国際協力の進展を評価し、世界に発信するのは初めてのことになります。
評価結果は、主に、(1)日本国内の約40名の専門家や政府関係者との会議、並びに、(2)言論NPOに参加する有識者2,000氏へのアンケート結果(回答者:307名)を基に決定されました。
評価の詳細は、1月30日13時45分より、言論NPOウェブサイトで公開いたします。
報道関係者の皆様には、この取り組みをぜひご報道いただきたく、お願い申し上げます。また、代表・工藤への個別取材も承っております。
地球規模課題10分野に対する2019年の国際協力の進展は、最も評価が高い「グローバルヘルスの促進」でも「B(一定程度前進した)」にとどまり、「A(大きく前進した)」はありませんでした。一方、米中対立が色濃く出た「国際貿易」や「国際経済システム」、また北朝鮮の非核化交渉の停滞や、イランによる核合意での履行義務の段階的停止があった「核拡散防止」など、D(やや後退した)が10分野中6分野に上りました。
米中対立などの地政学的な対立が地球規模課題への国際社会の取り組みに大きな影響を与えた2019年にあって、グローバルヘルスや気候変動は、国境を越えて多くの人々が直接利害に関係する課題であり、こうした問題の解決に向けた国際的な動きがどう機能したか、という視点からの評価が可能な数少ない分野でした。国境を越え多くの人が利害を共有し、国際的な課題の解決に向けた国際社会の取り組みが、地政学的な対立を乗り越えることを私たちは強く期待しますが、現状ではまだそうした共通の危機感が、対立を乗り越えるほど広がっているわけではありません。そのため、2019年の地球規模課題10分野への国際協力の評価は、言論NPOが過去5年間にわたって行った評価結果(B~C)と比較しても非常に厳しいものとなり、地球規模課題への国際協力は後退したという評価を行うことになりました。
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2020年の最優先課題は「核拡散抑止」次いで「気候変動」
一方、地球規模課題10分野の中で、2020年において最も優先されるべき課題は「核拡散防止」となり、これに近年世界中で異常気象が多発し脅威が増している「気候変動」問題が続きました。
また、2019年により激化した米中対立を受けて、「国際経済システム」や「国際貿易」の優先度も増しています。
さらに、2020年1月の1か月間で一気に中国・武漢から広がった新型肺炎の脅威から、「グローバルヘルス」の分野の優先度も上昇しました。
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2020年に「前進」が予想される分野はゼロ
また、2020年に解決に向かう可能性について、「前進する」あるいは「一定程度前進する」と評価された分野は、10分野中ゼロとなりました。地政学的対立が影響する通商や核拡散防止など分野は引き続き評価が低くなっています。その他の分野は、一部の進展が見込まれるものの、多国間で合意を作り、実行・継続することが難しい面が多いため、「現状のまま変わらない」との評価になりました。
気候変動の分野は、異常気象の拡大や平均気温上昇など状況の急速な悪化に対し国連方式の全会一致の意思統一が時間的に間に合わず、たとえ温室効果ガスの対策が進んだとしてもゴールがさらに遠のくという問題が起こり、前進する見通しが下がっています。
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【評価方法について】
言論NPOは、2020年1月11~19日に、言論NPOの活動に参加する全国の有識者2,000人を対象にアンケートを実施し(回答者数:307人)、世界的課題10分野の「2019年における進展」と「2020年に解決に向かう可能性」をそれぞれ5段階評価してもらいました。
このアンケート結果を基に、アンケートの前後に行った専門家・政府関係者約40氏との議論や、直近の情勢変化も加味し、言論NPOとしての評価を決定しました。
【評価にご協力いただいた専門家の皆様(順不同、敬称略)】
川口貴久(東京海上日動)、小宮山功一朗(JPCERT)、原田有(防衛研究所)、戸崎洋史(日本国際問題研究所)、増田雅之(防衛研究所)、宮坂直史(防衛大学校)、菅原淳一(みずほ総合研究所)、河合正弘(東京大学公共政策大学院)、中川淳司(中央学院大学)、細川昌彦(中部大学)、神保謙(慶應義塾大学総合政策学部)、志賀裕朗(JICA研究所)、内野逸勢(株式会社大和総研)、押谷仁(東北大学)、伊藤融(防衛大学校)、下斗米伸夫(法政大学)、江守正多(国立環境研究所)、亀山康子(国立環境研究所)、藤野純一(地球環境戦略研究機関)など約40氏
地球規模課題に対する言論NPOの取り組み
言論NPOは、2012年より米国の外交問題評議会が主催する世界25カ国の主要シンクタンクによる国際会議「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」に日本から唯一の常設メンバーとして参加し、日本の主張を継続的に発信しています。その中で痛感しているのは、ルールに基づく世界の自由秩序を維持・発展させるために日本への期待が高まっている一方、世界の課題解決に対する日本の発信力は弱いものにとどまっており、同時に、自身の専門領域を超えて世界の様々な課題領域を横断的に捉え、主張を形成できる専門家や実務者が、日本には極めて少ないということです。
そこで、言論NPOは、2016年に国内の専門家・経済人・ジャーナリスト等でつくるワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)を立ち上げました。WACでは、各分野に点在する専門家を横断的につなぎ、政府の国際交渉担当者を招いた定期的な意見交換や、最新の重要テーマにおける公開座談会を継続的に実施しています。これにより、日本国内において世界の課題に挑むオピニオンの形成や、その発信を通し、多くの人が世界の課題を考える舞台づくりに努めています。
また、2017年には、自由と民主主義の価値を共有するG7にインド、ブラジル等を加えた10カ国の有力シンクタンクトップが毎年東京に集まる「東京会議」を発足し、国際秩序と多国間主義の未来をG7議長国と日本政府に提案する仕組みをつくり上げました。
今年2月29日(土)~3月1日(日)に開催する「東京会議2020」には、こうした10カ国のシンクタンクトップに加え、ドイツのヴルフ元大統領やフランスのヴェドリーヌ元外相ら言論NPOの取り組みに賛同する各国の首脳・閣僚経験者が、言論NPOの呼びかけに応じて東京に集まり、世界経済を分断させず、自由や多国間協力の規範のもとで米中が共存する国際秩序の在り方をどう描くのかで議論を行います。
今回発表した「地球規模課題への国際協力の評価2020」の内容は、この「東京会議2020」の議論にも反映されることとなります。
【言論NPOとは】
言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。世界的課題を巡る取り組みのほか、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。
配信元企業:認定NPO法人 言論NPO
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