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日本臨床カンナビノイド学会(理事長:新垣実、新美会新垣形成外科)は、第62回国連麻薬委員会(CND)の会合(2019年3月14日から22日)に合わせて、国際薬物政策コンソーシアム(IDPC)がまとめた「薬物政策:過去10年間を振り返って~市民社会による評価レポート~」の要約版の和訳を3月15日に公表した。
本レポートでは、2009年から2019年までの国際薬物政策の評価を行っています。
これまでの10年間の国際薬物政策は、需要削減、供給削減、国際協力というサイロ化(自己完結して孤立してしまう状態)された3本柱が中心でした。
10年間の途中で実施された2016年の国連麻薬特別総会(UNGASS)では、これら3本柱に加えて、健康(ハーム・リダクションと規制薬物へのアクセスを含む)、開発、人権、そして新たな課題という4本柱が追加されるきっかけとなりました。
この評価レポートでは、薬物が完全にない世界の実現という目標は、非現実的かつ達成不可能であることが各種データから示されています。「薬物のない世界」の追究は、健康、人権、開発、安全保障を侵害する政策や懲罰という結果をもたらしたと指摘しています。
国際薬物政策コンソーシアム(IDPC)では、10年間の国際薬物政策の欠陥と失敗を踏まえて、下記を提案しています。
2019年の国連麻薬委員会(CND)ハイレベル会議に向け、IDPCは以下を提案する。
・国際社会は持続可能な開発に向けた2030アジェンダ、国連麻薬特別総会(UNGASS)成果文書、国際的な人権保護への合意に沿った、より有効な目標の採択を検討し、違法薬物市場の根絶を追究するという目標から離脱するべきである。
・2019年以降、加盟国は、薬物規制が健康、人権、開発、平和と安全保障という国連が掲げる目標に与える影響を熟考し、特に最も周縁化され、脆弱な立場にある人々のため、持続可能な開発に向けた2030アジェンダの前進に積極的に貢献する薬物政策や戦略を採用するべきである。
・今後の、薬物に関する国際政策の議論は、現場での薬物政策の実情のプラス面とマイナス面を両方考慮し、国連の薬物規制条約と薬物規制の取り組みに関連する人権問題との間の緊張という結果について建設的な議論をするべきである。
・2019年以降、国連加盟国は懲罰的な薬物規制手段を撤廃し、人々やコミュニティを最優先にするアプローチを採用するべきだ。これには、薬物政策の設計、実施、評価、監視の全ての面で、市民社会と関連コミュニティの関与を促進することが含まれる。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000191098&id=bodyimage1】
国際薬物政策コンソーシアム(IDPC)のこれらの提案は、本学会が翻訳した資料の国連システム事務局長調整委員会(CEB)による「薬物政策に関する国連システムの共通の立場」に重なる部分が多いことがわかります。
ご参考
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=89565
国際薬物政策コンソーシアム(IDPC)がまとめた「薬物政策:過去10年間を振り返って~市民社会による評価レポート~」の要約版の和訳資料はこちらのサイトからダウンロードできます。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=89587
本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。
なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。
国連麻薬委員会(CND)
2019年3月14日から22日にかけて第62回国連麻薬委員会(CND)の会合が
オーストリア・ウイーンで実施されます。投票権をもつ53か国の加盟国、
各国議員、政府組織、市民、科学者から約2000名の参加があります。
https://www.unodc.org/unodc/index.html
国際薬物政策コンソーシアム(IDPC)
International Drug Policy Consortium(IDPC)は、 薬物製造、人身売買、および使用に関連する問題に焦点を当てている182のNGOのグローバルネットワークです 。
IDPCは、国内および国際レベルでの薬物政策の有効性、方向性、および内容に関する客観的かつ未解決の議論を推進し、薬物関連の害を軽減するのに効果的で、科学的証拠に基づく政策を支持します。
https://idpc.net/
本レポートは、国際薬物政策コンソーシアム(IDPC)が2018年10月21日に公開した“Taking stock: A decade of drug policy - A civil society shadow report”のエクゼクティブサマリー(要約)の和訳です。レポート本体は、138ページの内容あり、こちらから原文をダウンロードできます。http://fileserver.idpc.net/library/Shadow_Report_FINAL_ENGLISH.pdf
日本の大麻取締法(1948年制定):
大麻取締法による規制によって、製薬会社がつくるカンナビノイド医薬品及びハーブ(薬草)利用としての医療用大麻のどちらも違法であり、臨床試験の研究目的ですら認められていない。
日本政府の公式見解は、平成28年の第190回国会(常会)質問主意書及び答弁書に詳しい(下記参照)。
https://www.nippon-yakushokuken.com/diet_190/
日本臨床カンナビノイド学会:
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノイドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会;International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2018年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員11名、 賛助個人会員22名、合計100名を有する。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/
配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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