日本臨床カンナビノイド学会(理事長:新垣実、新美会新垣形成外科)は、米国コロラド州立大学医学部准教授のエドワード・マー博士の講演及び質疑応答の動画を会員限定サイトにて9月28日に公開をしました。本動画は、9月9日(日)に行われた第4回学術集会の医療従事者向けの講演記録です。

マー博士は、米国で医療用大麻が早く合法化したコロラド州で、てんかん治療にカンナビノイド(大麻由来成分)を使用する患者を診てきた医師です。米国でカンナビノイド治療が注目されるきっかけとなった2013年8月のCNNの医療番組WEEDのてんかんの少女シャーロットも診てきました。

動画では、米国FDA(食品医薬局)で初めて承認されたカンナビノイド医薬品エピディオレックスについての臨床データやカンナビノイドの1つであるカンナビジオール(CBD)のオイルに関する患者の症例報告などの最新情報を紹介しています。

エピディオレックスがFDA承認申請時には、他の薬剤と併用する補完療法でしたが、単独で処方できる第一選択薬に格上げされたとこと、患者による月間発作の数を40%~50%減少したこと、CBD単体と全草抽出液の違い等のエピソードや参加者の関心の高かった費用についても触れていました。

マー博士によると、エピディオレックスの費用は、体重70kg当たりの1日の標準摂取量を1400mgとし、費用が1000mg当たり約64ドル(約7400円)であり、てんかんの少女シャーロットが使っていたCBDオイルが1000mg当たりで換算すると50~110ドル(約5750~12650円)と価格的に変わらないという。

講演の中で、カンナビノイド医薬品エピディオレックスが今年6月25日のFDA承認から90日以内に、米国DEA(麻薬取締局)が物質規制法上のスケジュールの位置づけを決めることが紹介されていました。

エピディオレックスを製造するGW製薬の9月27日の発表によると、スケジュールVに位置づけられました。米国の物質規制法は、1961年の麻薬単一条約、1971年の向精神薬条約に対応した国内法であり、タバコ、ビールやワインなどのアルコール類を除いた薬物の危険度を分類したものです。「乱用の可能性」「医学的用途の有無」を評価基準としています。

大麻草は、ヘロインやLSDと同じスケジュールIの最も乱用性が高く、医学的用途がないに位置づけられています。合成THC医薬品のマリノール(制吐剤)は、当初スケジュールIIでしたが、1996年からのカリフォルニア州などの医療用大麻の合法化の波を受けて、2002年からスケジュールIIIに下げています。

今回のスケジュールVは、物質規制法の中で最も乱用性が低い位置づけとなり、大麻由来成分の安全性と有効性を科学的評価した最初の事例となりました。当初はスケジュールIIIまたはIVと考えられていたが、予想よりも低い位置づけでした。但し、今回のスケジュールVは、エピディオレックスのみが対象であり、CBD成分及びCBDオイルなどの他の製品の評価ではありません。

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大麻由来成分を使ったカンナビノイド医薬品には、先行事例があります。ナビキシモルス(商品名:サティベックス)と呼ばれるTHCとCBDを1対1で含む多発性硬化症の痛み改善薬は、2005年にカナダで承認を受けてから、21か国(2018年4月現在)で承認されています。

しかし、米国では、規制物質法で天然の大麻草がスケジュールIとなっていることから未承認のままです。サティベックスは、日本の大塚製薬と共同で米国で末期がんの疼痛治療薬として2007年から臨床試験を実施していましたが、治療効果が限定的であったことと、スケジュール変更の予定が立たないことから2015年で終了しています。

本学会では、日本の医療従事者向けに今後もカンナビノイドの医療利用に関する先進事例を紹介するために、マー博士のような海外ゲストを招聘していく予定です。

医療従事者向け(会員限定)の動画視聴はこちらから
http://cannabis.kenkyuukai.jp/

一般向けの動画視聴はこちらから
https://www.youtube.com/watch?v=YEW0RQXUqfw

カンナビノイド医薬品エピディオレックス(Epidiolex):
GW製薬の米国子会社Greenwich Biosciencesが開発した難治性てんかんの一種であるレノックス・ガストー症候群(LGS)またはドラベ症候群に関連する発作の治療のための抗てんかん薬(AED)である。Δ9-THCをほとんど含まず、CBD含有率が高い大麻草のクローン株からCO2抽出された植物性原液(BDS)から作られたものであり、1本100ml中に10000mg(10%濃度)のCBDを含有する。2歳以上の患者を対象とし、20mg/kg/日を標準摂取量としている。

Δ9-THC:
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。121種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。

CBD:
カンナビジオール。121種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告している。

日本の大麻取締法(1948年制定):
大麻取締法による規制によって、製薬会社がつくるカンナビノイド医薬品及びハーブ(薬草)利用としての医療用大麻のどちらも違法であり、臨床試験の研究目的ですら認められていない。
日本政府の公式見解は、平成28年の第190回国会(常会)質問主意書及び答弁書に詳しい(下記参照)。
https://www.nippon-yakushokuken.com/diet_190/

日本臨床カンナビノイド学会:
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会;International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2018年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員11名、 賛助個人会員22名、合計100名を有する。


情報提供元: Dream News
記事名:「 大麻成分由来のカンナビノイド医薬品が最も危険度が低いスケジュールVに位置づけ。専門家による解説動画を会員限定サイトに公開。