情報流通支援サービスの株式会社オークネット(本社:東京都港区/代表取締役社長:藤崎清隆/https://www.aucnet.co.jp/ )は、1月15日より、『オークネット総合研究所』を通じて「中古車流通に関するニュースレター(http://www.aucnet.co.jp/aucnet-reseach/)」を配信開始いたします。第1回のテーマは「日本における中古車のBtoB流通」。モビリティジャーナリスト森口将之氏の取材・調査によりお届けします。

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第1回:日本における中古車のB to B流通について



1. 日本における中古車市場の概況

 自動車の流通経路は、新車の場合は自動車メーカーの工場で生産された車両がディーラー(販売店)に運ばれ、それをユーザーが手に入れるという明確なルートが確立されている。中古車のそれは多種多様ではあるが、現在は、多くの中古車がオートオークションを経由して取引されているのが実情である。オートオークションとは、中古車販売店、買取店、新車ディーラー等によるBtoB(業者間取引)の市場で、全国に130(入札会を含む)ある会場中古車流通の85%がここを介していると言われる。
中古車事業者が中古車を売り買いする市場が存在するのだ。


 一般社団法人 日本自動車販売協会連合会と一般社団法人 全国軽自動車協会連合会が発表した2016年の統計によると、我が国の中古車の登録台数は約675万台で、新車登録台数の約497万台を上回る。
 日本に中古車市場が確立したのは1950年代後半、高度経済成長が始まった頃と言われる。経済成長によって自動車の販売が急激に増えたことで、一部のユーザーはそれまで乗っていた車両を下取りに出して別の新車を購入することになった。これにより中古車の数が急激に増えてきた。
 これらの中古車は当初、ディーラーで新車に混じり販売されていた。しかしディーラーは新車を売るのが本業であり、中古車を脇役とするのは当然だった。また新車はどこのディーラーでどの車種を売るか決まっているが、中古車の場合はそうではなく、ユーザーにとって不便であった。
 こうした問題を解決するために、まずはディーラー間で中古車の車両を融通し合う行為が始まった。当初、仲介を買って出たのは業販店(業者間で販売を行う事業者)であるが、後にディーラー自身が集まって競りを行うようになった。これがオートオークションの始まりである。

2. オートオークションの普及と中古車流通の変化

 日本初のオートオークションは、トヨタ自動車系列のTAA(トヨタ・オート・オークション/現トヨタ・ユーゼック)が1967年に始めたのが最初と言われている。続いて1969年、地域の中古車販売店が集まった組合によるオークションが開催(後に組合の全国組織としてJU中販連に発展)。
 1971年、任意団体としてJAA(日本オートオークション協会/現ジェーエーエー)が設立され、業界初のPOSシステム(機械式入札機)によるオークションが開始された。
 これより前の1958年には、月ごとの中古車の相場を掲載したレッドブックと呼ばれる中古車価格情報専門誌が発行されるようになったが、こちらは主として交通事故時に保険会社が査定のため参考にする資料であった。
 旧式の中古車売買は、ブローカーが特定のディーラーから仕入れた中古車を自分の判断で中古車販売店に売却するというビジネススタイルであったが、公平性に欠けた。しかしオークションであれば、さまざまなディーラーから持ち込まれた中古車がオークションという同一の舞台に並び、それを求める中古車販売店は同じ条件で落札する。公平性が格段に高まったのである。
 競りの方法についても、競師が行う手競りからPOSシステムに移行したことも公平性をもたらした大きな要因である。出品台数の増加に伴い、人間の力では限界がきてしまい、オークションが長時間になり疲労によるミスが発生して競りの流れを狂わせる等問題が発生していた。また入札会場では来場者でどこの業者か分かるため、仲の良い業者と同じ車両を競った場合は手を挙げて入札しにくいという障害もあった。さらに中立の立場であるべき競師が顔馴染みの会員には競りで取り計らっている、気に入らない出品店の車は成約しないように流す等の噂が出てきてしまい、手競りに対する信頼感が薄れてきていた。
 POSシステム導入により、そのような問題の解決となったと同時に競りの進行が効率化し、参加者にとって公平で取引しやすい会場へと改善されたのである。

 ディーラーでなければ参加できなかったメーカー系オートオークションに比べると、JAAなどのオートオークションは門戸が広くなった。しかし協会の会員であることが参加条件になっており、すべての中古車が取り引きできたわけではなかった。
 この状況を改善するために、1980年代になってから登場したのがオークション企業だった。この分野のパイオニアは愛知自動車総合サービスという会社名でスタートしたUSS(ユー・エス・エス)で、参加企業から費用を徴収する代わりに、基本的にどの販売店であってもオートオークションに参加することができた。
 企業系オークションと呼ばれるこれらの会社は効率を追求するために、大規模な会場を用意し、競りの自動化を進めたことが、今までのオートオークションとの違いだった。次第にこの形態がオートオークションのスタンダードになり、自動車業界におけるオークションは一気に一般的な存在となった。 しかし完全に障壁がなくなったとは言えなかった。オートオークションに参加する場合、出品する側はオークション会場に車両を持ち込む必要があり、また落札する側も会場まで出向いて仕入れたい車を探したり、状態を自身の目で確認したりと大変な手間になっていた。
 この問題を解決するためにオークネットが1985年に始めたのが、TVオークションと呼ばれるお店にいながら仕入れや販売ができる在宅オークションだった。当時はインターネットが普及する前だったので、出展車両の記憶媒体としてレーザーディスクを用い、のちに衛星放送やインターネットに移行したが、落札する側はオークション会場に出かけることなく、店にいながらオークションに参加できる在宅オークションを実現した。オークション会場が遠い地方の中古車販売店や、会場に車両を持っていくことがリスクで手元に置いておきたかった高額車両専門店にとっては有難いものとなった。


 多くの問題を解消したTVオークションだったが、現車を見ることができないという不安もある。そのためにオークネットでは、AIS(オートモビル・インスペクション・システム)という第三者検査機関を立ち上げ10段階の独自の評価制度を制定、全国の訪問検査体制を整えた。このAISの検査体制が現車を見ずにデータのみで行うTVオークションの確立に貢献した。これについては次回詳しく解説することとするが、現在はトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業など主要自動車メーカーの販売店でも採用されている、信頼性の高いものとなっている。
 2001年4月にはNAK(日本オートオークション協議会)が設立され、「走行メーター管理システム」でメーター改ざん防止に寄与し、またオークション会場ごとに異なっていた「修復歴車(事故車)」の判断基準統一化を始めるなど、中古車流通はより信頼できるものになった。


 これにより中古車のオークション参加比率は飛躍的に伸びた。その結果、新たなビジネスが登場することになる。そのひとつが買取専門店だ。
 自動車販売店の下取りは、長い歴史と経験に基づくものであり、市場の人気はさほど反映されていなかった。しかしオークションでは当然ながら、人気車種は買い取り価格が上昇する。その結果、新車を買うユーザーでも下取りに出さず、買取業者により高価で引き取ってもらうことが多くなってきた。
 自動車販売店の中古車は基本的に、下取りの車両をそのまま店頭に並べて販売するため、一定の広さの展示場が必要であり、それがコストに跳ね返った。しかし買取専門店は、買い取った車両はすぐにオークションに出品するので、在庫はほとんど持たない。よって広大な車両置き場を確保する必要もなくなる。これが車種によっては販売店の下取りより有利な条件で引き取ってもらえる理由のひとつになっている。
 オートオークションの普及はもうひとつ、新しい業態を生んだ。特定の車種のみを扱う中古車専門店の登場である。フレックスオートのように、SUVやワンボックスなどの専門店を構えることで、その車種の購入を考えているユーザーが選びやすくしている。
 リアルな取引では下取りで入る車種は千差万別であり、こうした品揃えは不可能である。オークションによって特定の車種のみを仕入れることができるようになったことで、専門店が実現できたのである。

3. オートオークション会場とはどのような施設か?

 では実際のオートオークション会場はどうなっているのか。本来なら会員しか入場できないが、今回特別に許可を頂き、筆者は千葉県柏市にあるCAA(シーエーエー)東京会場を訪ねた。
 オークション会場を見るのが初めてだったこともあり、まずは建物周辺の駐車場の規模に圧倒された。出品者だけでなく落札者も多くが自動車で訪れるためだが、野球場が複数収まってしまうほどの広大な敷地を有している。
 建物内は1階が受付で、2・3階に休憩スペースや商談コーナーがあり、奥にオークション会場が位置していた。食堂もあるので、長時間の滞在も不自由なくできそうだった。
 オークション場に入ると、再びその規模に驚かされた。大きなコンサート会場を思わせる広さであり、それぞれのテーブルの前にはモニターが並んでいる。ただしステージにあたる部分には巨大なディスプレイが並ぶだけで、車両の姿はない。昔は車路(orオークション場内)に1台ずつ車両を通して入札を行っていたが、今は事前に撮影した写真と資料を元に入札を行う方式が一般的になっている。


 入札の電子化にはさまざまな利点がある。そのひとつが効率性であり、現在は約10秒に1台の割でオークションが進んでいく。多いときは1日で1万台をさばく会場もあるそうだ。世界を見渡しても、これほどのスピードでオークションが進む国は異例で、見学のために海外から訪れる人も多いという。
 筆者のような初心者には追いつくのさえ難しそうなスピードであるが、入札者は自分の欲しい車種をあらかじめ入力しておけば、その車種の順番をあらかじめ把握することも可能であり、全体的には確実に利便性が高まっているという印象を受けた。
 外国人の姿が多いことにも気づく。日本の中古車は走行距離が少なく、状態が良いものが多いので、新興国から注目されているようだ。オークション会場に訪れるのは日本に駐在している外国人スタッフであり、現地の状況を肌で知っているので、日本人が代行するより的確な判断ができるという。
 筆者も中古車を買う際には、なるべくなら現車を確認したい。しかし車両の状態を公平に評価・表示するシステムがあれば、インターネットでの購入する際の安心感・信頼感が高まる。
 オートオークションの分野でそれを実践しているのが前述したAISである。次回はその中身について、独自に取材した結果をもとにお送りしたい。


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著者:森口 将之(もりぐち まさゆき)
モビリティジャーナリスト・株式会社モビリシティ代表取締役

1962年東京都生まれ。早稲田大学卒業。自動車専門誌編集部を経て1993年にフリージャーナリストとして独立。自動車分野では自動運転からクラシックカーまで幅広いジャンルを担当し、新聞、雑誌、インターネット、ラジオ、テレビなどで活動中。自動車以外の交通事情やまちづくりなども精力的に取材しており、2011年には同分野でリサーチやコンサルティングを担当する会社、株式会社モビリシティを設立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。日本自動車ジャーナリスト協会、日仏メディア交流協会、日本福祉のまちづくり学会、各会員。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「富山から拡がる交通革命」(交通新聞社)「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」(秀和システム)など。

<オークネット総合研究所 概要>
当総合研究所は、1985年に世界初の中古車TVオークション事業をスタートし、以来30年にわたりオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営。これまで培った実績とネットワークを活用し、専門性、信頼性の高い情報を発信することで、更なる業界発展に寄与することを目指しています。

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情報提供元: Dream News