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A.T. カーニー(本部:米国イリノイ州シカゴ、東京オフィス:港区)のグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(以下、GBPC)は、2017年7月11日、グローバル企業の経営層を対象に実施した2017年「CxOの視点」調査について「Adapting to Disruption」というレポートにまとめ、結果を発表した。
本調査によると、グローバル企業の経営陣は、今後12カ月にわたって、経済的および財務的な変動性が昨年よりも高まると見ている。90%以上の経営層は、最近の政治・経済面の環境変化を理由に、サプライチェーンや海外事業展開を変更した、あるいは変更を検討していると回答した。しかしこの変動性は、ビジネス上の観点から見て、機会と課題の両方をもたらすと見られている。
課題面を見ると、多くの問題がビジネスリーダーの関心事になっている。その最上位が、高まる政治リスクである。僅差で二番目の課題は、厳正化する税制や規制で、これは二年連続で最重要課題として挙げられた。これに関連して、約3/4の経営層は、保護主義政策によって世界貿易が減少する中で、来年も引き続き、ポピュリズム的な政策が世界中で強い人気を得ると考えている。つまり、貿易は、ポピュリズムと保護主義が高まる脅威にさらされている今のグローバリゼーションを特徴づけるものだと、経営層は考えている。
本調査では、前回に引き続きテクノロジーの役割に焦点を当てており、これにも機会と課題の両面がある。経営層は、テクノロジーが今後1年で最も重要な集中事業領域だと考えている。グローバル経営層にとって一番の事業課題は、高まりゆくサイバーセキュリティのリスクで、43%の経営層はこれを主な懸念事項として指摘し、85%はサイバー攻撃の回数が今後1年間さらに増え、対応コストも増加すると考えている。そして、33%がテクノロジーの採用がトップ課題だと考える一方、38%は最大の機会だと捉えていることも分かった。加えて、78%の経営層は、テクノロジーの進化により今後1年で世界の生産性は向上すると考えている。
A.T. カーニー GBPCマネージングディレクターで、本調査の共同作成者であるエリック・パターソンは次のようにコメントしている。「テクノロジーと政治リスクに対する関心が、今回の結果で非常に目立っていた。テクノロジーは企業にチャンスと課題の両方をもたらすものだ。また、グローバル経営層は、地政学的な緊張や自国の規制・税制変化に由来する政府の対応やリスク特定に、これまで以上に注意を払っていることが分かった」。
69%のグローバル経営層は、政策が企業全体の意思決定に及ぼす影響が大きくなってきていると答えている。また、ほぼ全ての経営層は、リスク管理のため、ストラテジック・フォーサイト(戦略的洞察)技術の利用を一層重視するようになっていると答えた。つまり経営層は、最近のグローバル環境の「混乱状況に適応」しつつあるということだ。
A.T. カーニー名誉会長でGBPC会長のポール・ラウディシナは、次のようにコメントしている。「本調査の結果から、政治リスクの全ての”見える手”が経済的な成果や事業上の意思決定をより促進していることがわかる。将来を懸念するビジネスリーダーに対しては、リスクをマネージするようアドバイスしたい。グローバルの事業環境がさらに不確実性を増したことで、リスクや機会に対する機敏さと高い意識が成功の鍵になっている」。
GBPCは、現在のグローバル事業環境で成功するための提案を次の通りまとめた:
■サイバーセキュリティに関する防衛策と実施要項を強化する
テクノロジーへの適応やテクノロジーがもたらす混乱がビジネスに与える機会や課題は様々あるものの、経営層にとって、向こう一年で最も重要な事項は、企業のサイバーセキュリティ強化だ。最近のサイバー攻撃の様相は変化し、領域、規模ともに脅威を増している。経営層も認識しているように、サイバー攻撃の回数は今後1年でさらに増えるだろう。サイバー防衛のためのハードウェア/ソフトウェア投資を遅らせると、短期~中期的に見て非常にコストがかかることになりうる。少なくとも全従業員向けのサイバーセキュリティ・トレーニングへの投資は必須で、経営層も含め、事業全体にわたるサイバーセキュリティの良いお手本を示すことも重要だ。
■ 政治リスクを能動的に監視する
グローバル経営層は、地政学や自国の政策・規制上の変化が自社ビジネスに及ぼすリスクが増大していることには順応している。しかし、これらの政治リスクをきちんと管理するには、単にリスクを認識する以上のことが求められる。不測の政策変更に伴うリスクを回避し、企業にとって有利な政策を形成するために、経営層は政治リスクを能動的に監視し、主要マーケットにおける対政府関係強化に投資すべきだ。
■時代を先読みするために、ストラテジック・フォーサイト(戦略的洞察)を用いる
今回の調査で特定されたグローバルトレンドや変化の多くは、1年かそれ以上前に前兆があった。新たなトレンドを競合に先んじて正しく見抜くことができた経営層は、現在のグローバル事業環境でよりよいポジションを勝ち取っている。ストラテジック・フォーサイトの手法を戦略立案プロセスに取り入れることで、経営層は自社を差別化し、市場で勝ち抜く戦略的ポジショニングを構築できる。
■グローバリゼーション戦略を評価する
グローバル経営層は、現在の事業環境においてグローバル化戦略をシフトさせる必要があることには同意するが、しかし、どのようにシフトさせるべきかという方法は見いだせていない。適切な戦略は、地政学的な緊張やアンチグローバル化というトレンドが各企業の海外展開、サプライチェーン、ビジネスモデルにどう影響するのかに掛かってくる。この新たなグローバリゼーションの時代、現在および将来のリスクを軽減するために、経営層は慎重に選択肢を検討すべきだ。
なお、報告書「Adapting to Disruption」全文(英語版)はこちら:http://www.atkearney.com/VCS
*A.T. カーニー グローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(GBPC)とは
A.T. カーニーのマクロ経済部門シンクタンクで、20年以上にわたり、よりよい社会変革のための提言や調査報告書を発行するほか、企業経営者や政府要人を招き国際経済や政治について議論するフォーラム等を開催している
*「CxOの視点」調査とは
本調査は、世界中の主要企業の上級役員400人を対象とした調査の回答を一次データに使用している。実施時期は2017年4月。回答者の約27%はCEO、18%は取締役、55%がその他CxOレベルの役員。年間売上5億ドル以上の企業の経営層が参加
【この件に関するお問い合わせ先】
A.T. カーニー株式会社 広報
JP.Inquiry@atkearney.com