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一般的なSiC MOSFETは、逆導通動作[注3]時にボディーダイオードがバイポーラー通電するとオン抵抗が増大していく信頼性の課題がありました。東芝のSiC MOSFETは、MOSFETチップにショットキーバリアダイオード(SBD)を内蔵することで、ボディーダイオードが動作しないように対策したデバイス構造を採用しています。しかしながら、内蔵SBDがチップ面積の一部を占有することは、MOSFETのオン動作の抵抗を決めるチャネル領域の面積を減少させ、チップのオン抵抗の上昇に直結します。
X5M007E120は、内蔵SBDの配置を従来のストライプ配置から市松模様に変更することで、ボディーダイオードのバイポーラー通電[注4]を効果的に抑制し、同じSBD搭載面積でも約2倍の電流範囲までユニポーラー動作の上限が向上しました[注5]。また、チャネル密度が向上し、単位面積当たりのオン抵抗が、ストライプ配置の従来プロセスと比較して20%~30%程度低減しました[注5]。これにより、逆導通動作時の信頼性を保ちながら、オン抵抗の低減を実現し、車載トラクションインバーターなど、モーター制御用インバーターの用途で省エネルギー化に貢献します。
SiC MOSFETのオン抵抗を低減すると、短絡動作[注6]時にMOSFET部に過剰に流れる電流が増加するため、短絡動作の耐久性が低下します。また、逆導通動作の信頼性向上のために内蔵SBDを動作しやすくすると、短絡動作時にSBD部の漏れ電流が増加し、短絡動作の耐久性の低下につながります。開発製品は、深いバリア構造[注7]を採用することで、短絡動作中のMOSFET部の過剰な電流とSBD部の漏れ電流を抑制します。これにより、逆導通動作に対する優れた信頼性を保ちながら、短絡動作時の耐久性を向上することが可能です。
また、ベアダイを採用することで、ユーザーのニーズに応じたカスタマイズが可能となり、用途に合わせたソリューションを提供できます。
当社は、X5M007E120のエンジニアリングサンプルの出荷を2025年に、量産出荷を2026年に予定しており、さらなる特性改善に向けた検討を進めていきます。モーター制御用インバーターや電動車両の電力制御システムなど、エネルギー効率が求められる分野での活用に向け、より使いやすく、高性能なパワー半導体をユーザーに提供することで、脱炭素社会の実現に貢献します。
[注1] 電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)で、バッテリーから供給される直流電力を交流電力に変換し、モーターを制御する装置。
[注2] パッケージ化されていないチップ状態の製品。
[注3] 回路中の電流の還流によってMOSFETのソースからドレイン方向に電流が流れる動作。
[注4] ドレインとソースの間に存在するpnダイオードに順方向電圧が印加されてバイポーラー動作が起こること。
[注5] 当社従来ストライプ配置製品との比較。
[注6] 正常スイッチング動作時の短時間の導通に対して、制御回路の故障などの異常時に長時間の導通が起こる現象。一定時間の短絡動作で故障しない耐久性が求められます。
[注7] 高電圧による高電界をコントロールするために設けられる、デバイス構造の要素。素子の性能に大きく影響します。
応用機器
開発製品の主な特長
[注8] 暫定値
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開発製品の詳細については、当社のニュースリリースも併せてご覧ください。
車載トラクションインバーター向け、低オン抵抗と高信頼性を実現した1200V耐圧SiC MOSFETのベアダイのテストサンプル出荷について
当社のSiCパワーデバイスの詳細については下記ページをご覧ください。
SiCパワーデバイス
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