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キュリRMBの考える本件MBO手続きの問題点は以下のとおりです。
(ア)特別委員の適格性に疑義があること
2019年に策定された「公正なM&Aの在り方に関する指針」(以下「改定MBO指針」といいます。)では、特別委員会は「中立の第三者的な立場ではなく、対象会社および一般株主の利益を図る立場に立って(中略)検討や判断を行うことが期待される」と明示されています。そして、特別委員会の委員(以下「特別委員」といいます。)は、社外取締役が最も適任であり、社外監査役および社外有識者はあくまでも補完的な役割としての適格性を有するに過ぎないとされています。
しかし、本件MBOでは、特別委員には社外取締役が一切含まれておらず、本来補完的な役割しか期待されていない社外監査役2名および社外有識者1名のみが選任されています。
このような適格性が十分とは言えない特別委員の構成を前提とした場合、本件MBOを検討する際に、通常の場合にもまして、公正性を担保するために厳格な手続きを行うべきであることは自明です。
(イ)特別委員会が独自のFAを選任しなかったこと
そして、改定MBO指針では、利益相反の状況にあるMBOの場合、公正な手続きを担保し一般株主の利益を守るために、「特別委員会が自らのアドバイザー等を選任することが有益である」とされています。
それゆえ、上述のとおり特別委員の適格性が十分ではない以上、特別委員会は、自らフィナンシャルアドバイザー(以下「FA」といいます。)を選任し、同FAから専門的な助言を受け、一般株主の利益を図るために、本件MBOについて慎重な検討を行う等、公正性を担保するために、厳格な手続きを行うべきでした。
しかし、公表されている情報を前提とすると、本件MBOでは、特別委員会は独自にFAを選任しておらず、さらには、特別委員会は、取締役会が選任したFAである大和証券の意見を追認する形でしか、本件MBOを検討していないと考えられます。
上述した特別委員の適格性に対する疑義があるにも関わらず、特別委員会が独自にFAを選任せず、独自に専門的な助言を得ないまま本件MBOについて検討をしているため、特別委員会は本件MBO価格等について精緻な検討を行っていないとキュリRMBは考えます。
(ウ)本来の価値に対して低すぎるMBO価格となったこと
実際、一株あたり8,620円という本件MBO価格は、形式的には、直近の大正製薬の市場株価に対し50%超のプレミアムを上乗せしているとはいえ、一株あたりの純資産価格から約15%もディスカウントされています。また、本件MBO価格を決定する過程において、大正製薬が保有する潤沢な余剰資金が、どのように考慮されたのか明らかになっておらず、検討が十分になされていない可能性があるとキュリRMBは考えます。
それゆえ、本件MBO価格は、不当に低く抑制され、一般株主の利益が損なわれており、大正製薬の本来の株式価値は、少なくとも2023年9月末時点での一株当たりの純資産価格である約10,132円を下回らないとキュリRMBは考えます。
以上のことから、キュリRMBは、本件MBOには公正な手続きがなされていないと考えるため、大正製薬が開催する臨時株主総会において関連議案に反対する予定です。
以上
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