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しかしシリコン系太陽電池が圧倒的シェアを占めている分野では、比較的新しい技術であるペロブスカイト型太陽電池は、高い電力変換効率(PCE)に加え、商用化の必須要件である安定性と拡張性の2つも満たす必要があります。
最近公開された「サイエンス」の論文の中で、KAUSTの研究者達はPSC太陽電池の高温多湿試験に世界で初めて成功し、重要な一歩前進を遂げたことを報告しています。
高温多湿試験は入念な加速エージング試験であり、太陽光パネルが長期間の高湿度暴露と高温に耐えられるかどうかを判断するものです。この試験は、湿度85%、温度85℃に制御された環境下で1000時間実行されます。このような環境に設定するのは、何年もの間屋外にさらされる状態を再現し、また腐食や層間剝離などの要因の評価するためです。
高温多湿試験に成功
この試験の過酷さは、太陽電池(PV)技術を商業化するための要件、つまり従来の結晶シリコンによるモジュールでは25年から30年の保証が必要という要件に沿ったものです。この試験に成功するためには、太陽電池は初期性能の95%を維持する必要があります。
Stefaan De Wolfが主導するKAUST太陽光発電研究所のポスドク・フェローであるRandi Azmiを中心とした研究では、封止されたPSCの耐久性の弱点である封止漏洩を防ぐ必要がありました。この3次元ペロブスカイト薄膜の弱点である封止漏洩は、大気中の望ましくない物質の浸透を許し、耐熱性能の不足を招きます。KAUSTの研究者らが見出した解決方法は、2次元ペロブスカイト不動態膜層のエンジニアリングと導入であり、これは電力変換効率向上とPSC長寿命化の両方を同時に実現します。
ペロブスカイトはシリコンを置き換え得るか?
ペロブスカイトの特徴は薄膜技術であることです。従来の太陽電池と同様、ペロブスカイトも特定材料で作られた2つの半導体の接合が必要です。1つの半導体は電子を集め、他方の半導体はプラスに荷電された(価電子帯の電子がないことを意味する)「正孔(ホール)」を集めます。しかしペロブスカイトはシリコンウエハーとは異なり、プレカーサー溶液を使用してガラス基板上に直接製膜することができます。プレカーサー溶液は溶媒で作られており、結晶化して固体状態になります。
ペロブスカイトには重要な利点が1つあり、プレカーサー材料は高価な設備なしで製造でき、大量のエネルギーを消費する1000℃以上の環境も必要ありません。こうした設備や大量のエネルギーはシリコンなど従来の半導体では必ず必要です。
De Wolfは、次のように語っています。「ペロブスカイトは太陽電池の製造方法として非常に単純です。またペロブスカイトの光電性能は特別なものではありませんが、性能は優れており、非常に高品質の従来型半導体と同程度です。これは非常に注目すべきことです。構成を変えることで、紫外光から赤外光まで太陽光スペクトル全体に対するスペクトル感度も調整できます。これは特定のアプリケーションにとって非常に魅力的です。」
性能と安定性の難題を克服したことから、残る難題は拡張性です。大部分の太陽光発電は発電所レベルの分野や屋上設置が中心です。
De Wolfは、次のように語っています。「市場はシリコンが基本であり、少なくとも今後20年はシリコンが基本でしょう。そこで我々は主にペロブスカイト太陽電池の性能改善に焦点を絞り、より高効率で従来のシリコンとペロブスカイトの両方を対にした『タンデム』ソリューションを前進させようとしています。今回の研究で分かったことは、そうしたペロブスカイト/シリコン・タンデム型の太陽電池の信頼性向上に大きく役立つはずです。」
*配信元:AETOSWire
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Najdat Boukarroum
Najdat.boukarroum@kaust.edu.sa