東京--(BUSINESS WIRE)--(ビジネスワイヤ) -- 東芝は、コイン型リチウム電池などで駆動するIoT機器向けに、Bluetooth®
low energy Ver.4.2規格注1に準拠し、従来注2と比較して動作時消費電流を50%削減したBluetooth®
low energy SoC (System on a Chip)
を開発しました。低消費電流化に適したアーキテクチャや回路を適用することで、受信時3.2mA、送信時3.5mAの動作時消費電流を実現し注3、長時間の電池駆動を可能にします。また、SoCにRF(Radio
Frequency)注4整合回路を内蔵することで、SoCの外付け部品点数を削減し、IoT機器の小型化を実現します。本成果について、富山県で開催されるIEEE主催の半導体回路技術に関する国際会議「A-SSCC
2016(Asian Solid-State Circuits Conference 2016)」で11月8日に発表します。




近年、IoT社会の急速な進展とともに、スマートウォッチ、活動量計といった電池駆動のウェアラブルなIoT機器は、さまざまなセンサ情報を利活用し、多機能化しています。小型で軽量、かつ長時間の電池駆動が要求されるため、低消費電流を指向した無線通信システムのBluetooth®
low energyが多くのIoT機器で用いられています。



一般に消費電流は、受信感度や送信出力などの無線性能とトレードオフにあり、従来のBluetooth® low energy
SoCでは両立が困難である一方、利用可能なコイン電池の種類を増やすために、3~4mAで駆動できる低消費電流Bluetooth®
low energy SoCが求められていました。



また、機器の小型化には、外付け部品をチップに内蔵するSoC化が有効ですが、RF整合回路まで内蔵すると、不整合損出のため受信感度や送信出力などの無線性能が劣化するという課題がありました。



当社はBluetooth® low energy
SoCの低消費電流化のために、(1)低消費電流化に適した受信アーキテクチャ、(2)変換効率の高い電源システム、(3)低消費電流RF回路の3つの技術を採用しました。




  • (1)の受信部では、従来の1/2のローカル周波数を受信機内部で生成し高周波ミキサに供給する受信アーキテクチャを採用し、ローカル発振器の低消費電流化を実現しました。周波数構成の複雑な本アーキテクチャを採用したことで生じる干渉波に対する脆弱性については、主な干渉波源である携帯電話の信号が、Bluetooth®
    low energyの所望周波数帯域に変換されないような周波数プランを採用することで、干渉波耐性を向上させました。


  • (2)の電源システムでは、レギュレータ(LDO:Low Drop Out)注5での電力ロスを改善するために、LDOを取り去った構成を採用しました。LDOを取り去るとDC-DCコンバータのスイッチング雑音による回路特性の劣化が懸念されますが、DC-DCコンバータのスイッチング周波数をPLL(Phase
    Locked Loop)注6 を用いて固定し、Bluetooth® low
    energyの所望周波数帯域から外すことで、この問題を解決しました。


  • (3)の低消費電流RF回路では、送信系と受信系で一つの電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled
    Oscillator)を共用すると、VCOに求められる周波数可変範囲が広くなり、消費電流を増加させる原因となります。今回、送信系と受信系でそれぞれ専用のVCOを用いることで、必要な周波数可変範囲を狭め、低消費電流化を実現しました。また、電力増幅器(PA:Power
    Amplifier)などの回路にもスイッチングアンプを適用し、徹底した低消費電流化を図りました。



上記3つの低消費電流化技術を採用することで、受信感度-93dBm、送信出力0dBmの実用的な無線性能と、従来比50%削減を実現した受信時3.2mA、送信時3.5mAの動作時消費電流を両立することに成功しました。



なお、本SoCは65nm-CMOSプロセスを用いて、RF整合回路をSoC化することで外付け部品を従来の19個から7個に削減しています。



今回発表した低消費電流化技術は、2016年12月に量産計画中の当社Bluetooth® low
energy製品に採用しています。注7



注1) Bluetooth®ワードマークは、Bluetooth SIG, Inc.が所有する商標です。



注2) 当社従来製品「TC35667FTG」との比較。



注3) 2016年7月11日時で世界最小の消費電流。(当社調べ)



注4) 無線通信で用いる周波数。



注5) 入出力の電位差が小さくても動作するレギュレータ。



注6) フィードバック制御により入出力信号の位相、周波数を同期させる電子回路。



注7) エンジニアリングサンプル(ES)は2016年10月から提供可能となっております。




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田中 耕一/山路
航太
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情報提供元: ビジネスワイヤ
記事名:「 東芝:受信時3.2mA、送信時3.5mAの動作時消費電流を実現したBluetooth® low energy SoCの開発について