2025 AOCSでの発表


模式図




雪印メグミルク株式会社(本社:東京都新宿区 代表取締役社長:佐藤 雅俊)は、マーガリン類のような、水滴が油相の中に分散している乳化形態(W/O乳化物:Water-in-Oil Emulsion)の油水界面の構造が、香り成分の放出に影響することを明らかにしました。本研究成果は学術雑誌「Journal of Food Composition and Analysis」に掲載され、その一部を「2025 AOCS Annual Meeting &Expo」(American Oil Chemists'Society(アメリカ油化学会))において発表いたしました。

本研究では、油水界面のラメラ構造の有無がバター様の風味に重要な脂肪酸(香り成分)の放出に影響を与えることを明らかにしました。今後、得られた知見を活用して、バター様の風味を向上させた低脂肪マーガリン類の開発が期待されます。

当社は、今後も乳(ミルク)の価値を創造するとともに、植物性の食資源の有効活用に関する取組みと、人と自然が健やかにめぐる食の未来に貢献できる商品作りを推進してまいります。



【研究背景】



マーガリン類では、バター様の風味に近づけて嗜好性を高めるための研究開発が進められています。これまで、マヨネーズやドレッシングのようなO/W乳化物(Oil-in-Water Emulsion)の油水界面の構造と香り成分の放出の関係は研究されていましたが、マーガリン類のようなW/O乳化物(Water-in-Oil Emulsion)については、十分研究が進んでいませんでした。さらに、低脂肪マーガリン類は、高脂肪タイプと比較して香り成分の放出が弱く、バター様の風味の付与が難しいとされています。そこで、バター様の風味を向上させた低脂肪マーガリン類の開発を目指し、香りや味が放出されるメカニズムの研究を行っています。



【研究成果】



2種類のW/O乳化物※を対象として香り成分の分析(SPME-GC/MS)を行いました。

分析の結果、30℃における、ラメラ構造がある乳化物(USMG)の脂肪酸のリリース量は、ラメラ構造なしの乳化物(UMG)と比較して、大幅に減少することが分かりました。

この現象は、X線回折測定にて30℃のUSMGの界面に観察された、長さ44.5Åのパルミチン酸モノグリセリド2鎖長の繰り返しで形成されるラメラ構造により、脂肪酸(香り成分)のガス相への放出が抑制されたことによると推察されます。

※2種類のW/O乳化物:不飽和モノグリセリドを使用した乳化物(UMG)と飽和モノグリセリドと不飽和モノグリセリドを併用した乳化物(USMG)



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2025 AOCSでの発表



【用語説明】

●乳化、乳化剤

水と油のように混ざり合わないものを、均一な状態に混合させることを「乳化」といい、乳化を促進する食品添加物を「乳化剤」という。

乳化剤は、水になじみやすい「親水基」と油になじみやすい「親油基」の両方を有し、水と油の界面に作用して乳化を促します。

●SPME-GC/MS(Solid-Phase Microextraction–Gas Chromatography/Mass Spectrometry)

香り成分を効率よく集めて、分離・特定するための分析方法です。

●不飽和モノグリセリド

不飽和脂肪酸が結合したモノグリセリドを指します。モノグリセリドは、グリセリン1分子と脂肪酸1分子が結合したものです。混ざりにくい水と油を、均一に混ぜるための乳化剤として用いられます。

●飽和モノグリセリド

飽和脂肪酸が結合したモノグリセリドを指します。不飽和脂肪酸基モノグリセリドと同様に乳化剤として用いられます。

●ラメラ構造

親水基と親油基の繰り返しにより形成される層状の構造。



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【論文情報】

掲載誌:Journal of Food Composition and Analysis

論文タイトル:Elucidation of the Effect of Monoglycerides on Aroma Release at the Low-Fat Spread Interface

著者:Shiori Tsukagoshi, Ai Suzuki-Iwashima, Leo Tanaka

DOI:https://doi.org/10.1016/j.jfca.2025.107936




情報提供元: @Press