◆研究内容 ・背景 1960年代から70年代の第二波フェミニズムでは、美容実践を女性身体への抑圧の問題とみなし、フェミニズムが取り組むべき課題としていました。第二波フェミニズム運動の中で誕生した『Ms.』の1972年の創刊号では、Lyons and Rosenblatt(1972)が女性の体毛は無用であるという考えが、女性の生身の自己を否定していると指摘し、やがては体毛を除くことが抵抗に会い、毛深い人も毛がない人も幸福に生きることができるようになるであろうと述べています。しかし現代日本では、Lyons and Rosenblatt(1972)が予想した、体毛に関するユートピアは実現していません。第二波フェミニズムは結局、女性は無毛であるべきという規範を変革できず、むしろ体毛の除去はその対象範囲を広げています。 一方、90年代後半から英語圏の研究において、若い女性が自己のアイデンティティの表現として身体や外見に関心を払うことが第二次性徴開始後すぐに起こり (Brumberg, 1998)、自己の身体が社会的に承認されるために絶え間なく奮闘していること(Aapola et al., 2005)が指摘されているので、日本の若い女性の美容実践への参加も低年齢化していることが予想されます。そこで、体毛の除去という美容実践が、日本の若い女性、特に10代の女子高生にも起こっているのではないかと予想し、彼女たちの実践について考察しました。
(参考文献) Aapola, Sinikka, Gonick, Marnina and Harris, Anita. (2005). Young Femininity: Girlhood, Power and Social Change, Palgrave Macmillian. Brumberg, Joan Jacobs. (1998). The Body Project: An Intimate History of American Girls, Vintage Books. Lyons, Harriet and Rosenblatt, Rebecca. (1972, July). Body hair: The Last Frontier. Ms. Magazine, 64-65,131. 鈴木公啓、2018、「日本人におけるむだ毛処理の実態及び心理的関連要因」 『Fragrance Journal』、56-61. Widdows, H. 2018. Perfect me: Beauty as an ethical ideal. Princeton University Press.
□■明治学院大学について■□ 創設者は“ヘボン式ローマ字”の考案や和英・英和辞書『和英語林集成』の編纂、聖書の日本語訳完成などの業績があるヘボン博士。建学の精神である「キリスト教による人格教育」と学問の自由を基礎とし、ヘボン博士が貫いた“Do for Others(他者への貢献)”を教育理念としています。広く教養を培うとともに、各学部学科において専門分野に関する知識・技能および知的応用能力を身につけた人間の育成を目指します。2024年に本学初の理系学部「情報数理学部」を開設し、既存の学部・組織との有機的な連携、産学官連携を行う「情報科学融合領域センター」も併せて開設しました。 https://www.meijigakuin.ac.jp