【デザインのポイントについて】 1 旧家の建物や樹木位置を踏襲した〈空間的記憶〉や生け捕りした欄間や建具を再構築する〈物質的記憶〉の継承 2 九州産の木材や石材・漆喰の使用によるMade in KYUSHUのコンセプトに呼応するデザイン 3 スーパー楕円のかたちの中庭・周囲の回廊のどの地点においても角を感じないやわらかい曲率の空間
【評価コメント】 モダンと伝統が調和した福岡市の「やまや総本店 膳/白金小径」。この革新的プロジェクトでは、旧家に残された空間の記憶、物質を継承し、地域遺産に結び付けることで伝統を讃えている。「Made in KYUSHU」のコンセプトを体現し、九州の豊かな食文化を紹介する。建物には焼杉や赤土の壁などの九州産素材が用いられ、特徴とする楕円形の中庭には九州の植物が生い茂る。地域の文脈を尊重し、継承されてきた機能と現代建築を融合させて新たな価値を創造することで、「進化する伝統」と「Made in KYUSHU」を体現するプロジェクトである。黒い矩形のボックスで閉じられた空間の中にスーパー楕円の中庭を配置し、都会の混沌の中に静寂のオアシスをもたらすというユニークなデザインアプローチを取り入れている。