レベル4の自動運転を市場最安値で
東海クラリオン株式会社 代表取締役 安部 源太郎
株式会社アジア・テクノロジー・インダストリー 代表 長尾 朗
JAXA 第一宇宙技術部門衛星測位技術統括 小暮 聡
東海クラリオン株式会社(代表取締役:安部 源太郎、以下「TCL」)※1、株式会社アジア・テクノロジー・インダストリー(代表:長尾 朗、以下「ATI」)※2、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長:山川 宏、以下「JAXA」)は、新たな発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(以下、J-SPARC)」※3の枠組みのもと、2023年6月より「後のせ自動運転システムYADOCAR-i(ヤドカリ)ドライブ※4」に関する共創活動を開始しました。
本共創では、東海クラリオンとATIが地域限定で自動運転レベル4※5の実現をめざし開発をすすめている“YADOCAR-iドライブ”に、JAXAのセンチメータ級測位補強信号を活用した高精度単独測位「MADOCA-PPP※6」を適用することで、測位の精度向上と高速化を実証します。YADOCAR-iドライブとMADOCA-PPPの組み合わせにより、過疎化の町における日常の足として、また、観光地におけるラストワンマイル(移動を必要している人が目的地に到着するための最後の区間)の移動手段としてレベル4の自動運転を市場最安値で実装することを目指します。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/364967/LL_img_364967_1.jpg
レベル4の自動運転を市場最安値で
【共創活動の背景】
全国に2000箇所以上ある限界ニュータウンにおいて、交通弱者の生活の足として自動運転車は期待されています。過疎地での高齢者の日常の移動に対しては、決まったルートかつ狭い道を低速で走行する安価な自動運転車が求められています。
また国内外のリゾート地において、観光スポットでのラストワンマイルやワイナリーの中での移動など、自動運転の車両が求められる場面は少なくありません。
これらのニーズに応えるべくTCLとATIが共同開発しているのが、既存のモビリティに最小限の機材の追加搭載で自動運転を実現するYADOCAR-iドライブです。追加機材を最小化するため、また、国内用と国外用のシステムを共通化するため、YADOCAR-iドライブでは、走行ルート作成に準天頂衛星“みちびき”を主軸にしたQZSSの位置情報を用いています。具体的には、アジア太平洋地域への展開等を想定し、“みちびき”2~4号機および初号機後継機のL6Eチャンネルで送信される実証実験向けのセンチメータ級測位補強信号を活用した高精度単独測位(MADOCA-PPP)を利用しています。
JAXAが行なう高精度測位技術(MADOCA-PPP)の高度化と、とTCL/ATIが行う自動運転システムの現場環境での走行実証を組み合わせることで、レベル4の自動運転の実現が期待できます。
【共創活動の内容】
TCLは、自治体及び観光関連業界に対し、低価格自動運転の活用モデルとして「後のせ自動運転システムYADOCAR-iドライブ」を提案、自動運転走行のデモンストレーションを実施し、システムの有用性、利便性を可視化します。
ATIは、MADOCA-PPPに対応したマルチGNSS受信機の開発・製造を行う株式会社コアと連携協力し現場ごとに違う環境に適応した自動運転システムの開発を実施します。また、走行結果を受信機開発にフィードバックすることで、受信機の自動運転利用への最適化を行い、自動運転システム全体の高度化を目指します。
JAXAは、衛星測位利用者が世界中で時間と場所を問わずセンチメータ級の高精度測位を行うことができるよう、MADOCA及びMADOCA-PPPの技術開発に継続的に取り組んでおり、その社会実装を目指しています。衛星測位はユーザの利用形態・環境に性能が大きく依存します。本共創では、低速のEVにおけるレベル4自動運転実現を目指すユーザの測位性能及び利便性を高めるため、MADOCAの“みちびき”L1/L5信号対応及び中国の衛星測位システムBeiDou3への対応を行います。これにより対応する衛星数が30機以上増えます。また上空視界が限られたアーバンエリアや山間地等においては準天頂衛星システムのMADOCA-PPPサービスを地上配信情報によって補完することで、測位精度の向上を目指します。
また、MADOCAが生成する補正情報を用いた演算処理により高精度単独測位を行うユーザ測位用ソフトウェアであるMALIBを高度化し、従来20分程度必要としていた初期収束時間を1分以内へと短縮を目指します。
3者の協力により、最初の1~2年で、MADOCA及びMADOCA-PPP高度化とYADOCAR-iドライブの実証走行を並行して実施し、開発と利用のフィードバックループを回します。そこで運用実績を積み、以降の現場実装を加速させる計画です。
【目指す未来】
自動運転を安価に提供することは、この国のスマートシティ化に繋がります。これまで、地域の課題は見えていても、高額な自動運転カーの導入に踏み切るのは困難でした。本共創では、衛星測位技術を活用することで、市場最安値の自動運転の提供を目指します。ラストワンマイルの移動手段がなかった観光地、介護や通院など日常の足に困っている市街地、高齢者の事故リスクに悩む限界集落、こうした地域へ導入ができれば、利便性・収益性の観点でさまざまなサービスとの組合せが生まれ、運用費を限りなくゼロにできると考えています。
※1 東海クラリオン株式会社
車載器の販売代理店として創業から75年間、変化する自動車業界の中で、目の前にいるお客様からのニーズを聞き取り、さまざまな商品・サービスを組み合わせ、お客様とともに必要な解決策のご提案をしてきました。そしてモビリティ社会がCASE呼ばれる今、自ら製品を企画・開発する会社へと進化を遂げ、「開発も行う商社」として、時代の変化を常に見据え、課題を抱えるお客様の声に耳を傾けて、その先にある「ほしい」をいち早くお届けできる企業でありたいと考えています。自動運転、通信、AI、画像処理など、これからのモビリティに求められる技術を組み合わせた、新しい製品とサービスを作り続けます。
https://www.tokai-clarion.co.jp/
※2 株式会社アジア・テクノロジー・インダストリー
ATIはタイを拠点に立ち上げられた技術ベンチャー企業です。自動車の研究開発領域において、ハードウェアの設計製作、ソフトウェアの開発及び解析評価に精通し、お客様のご要望に応じて最適なシステムデザインのご提案から開発、製造、供給までのサポートを行います。また、お客様が現在抱えている技術的な問題解決にも取り組んでいます。
https://www.ati.co.th
※3 JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)
J-SPARC(JAXA Space Innovation through Partnership and Co-creation)は、宇宙ビジネスを目指す民間事業者等とJAXAとの対話から始まり、事業化に向けた双方のコミットメントを得て、共同で事業コンセプト検討や出口志向の技術開発・実証等を行い、新しい技術を獲得し、新しい事業を創出する共創型研究開発プログラムです。2018年5月から始動し、これまでに約40のプロジェクト・活動を進め、民間事業者による食、生活用品、教育、VR、エンタメ、アバター、通信、小型衛星コンステ事業の事業始動(商品化・サービスイン)にも貢献しています。事業コンセプト共創では、マーケットリサーチ、事業のコンセプトの検討などの活動を、事業共同実証では、事業化手前の共同フィージビリティスタディ、共同技術開発・実証などの活動を行います。
https://aerospacebiz.jaxa.jp/solution/j-sparc/
※4 YADOCAR-iドライブ
2人乗りのマイクロEVから、8人乗りのマイクロバスなど、既存車に後から自動運転機能を組み込むことができるシステムです。
「YADOCAR-i ドライブ」の走行イメージ動画
https://youtu.be/H0bWSrzJjgQ
※5 自動運転レベル4
高度運転自動化 システムが全ての動的運転タスク及び 作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行。
国土交通省自動運転車の安全技術ガイドライン https://www.mlit.go.jp/common/001253665.pdf による。
※6 MADOCA(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis):JAXAが開発した複数GNSS対応高精度軌道時刻推定を実現するソフトウェア。
MADOCA-PPP:MADOCAにより生成された補強情報により、cm級測位を実現するための、高精度測位補強サービス。内閣府が準天頂衛星システムから配信するサービスは2024年から正式サービスを開始予定。JAXAはこれを補完し、全世界で使えるインターネット配信サービスの技術開発を実施。
<東海クラリオン株式会社 代表取締役 安部 源太郎 コメント>
自動運転モビリティのサプライヤーとしては後発となる我々ですが、JAXAとの共創によりシンプルでありながら、安全性の高い自律走行の実用に向けた取り組みを加速できることは大変有難く、かつ光栄に存じます。いまある車へレベル4の自動運転を市場最安値で提供ができれば、多くの自治体の課題解決や、市民の方々の生活品質の向上にもつながります。社会の仕組みを変える一助になれるよう、努力を惜しまず取り組んでまいります。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/364967/LL_img_364967_2.jpg
東海クラリオン株式会社 代表取締役 安部 源太郎
<株式会社アジア・テクノロジー・インダストリー 代表 長尾 朗 コメント>
近年衛星測位において、利用できる衛星数が大幅に増えたことにより、測位精度、信頼性が著しく向上することが出来ました。これにより自動運転分野においてこの衛星測位を最大限利用することによりシステムコストを下げることが可能となります。JAXAとの共創の機会をいただき、今後さらに自動運転に必要とされる信頼性を高めたシステムの構築に取り組んでまいります。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/364967/LL_img_364967_3.jpg
株式会社アジア・テクノロジー・インダストリー 代表 長尾 朗
<JAXA 第一宇宙技術部門衛星測位技術統括 小暮 聡 コメント>
JAXA衛星測位システム技術ユニットでは、測位衛星の精密軌道クロック推定技術、並びにその応用利用技術の研究開発に取り組んでいます。今回、開発した技術成果を世の中の社会課題解決に貢献する機会を得ることができ、大変うれしく思っています。多くの方々に利用、嬉しさを実感いただけるには、低コスト化は重要なポイントと考えます。さまざまな利用環境でも高い性能が維持できるような測位アルゴリズムを開発することで貢献したいと思います。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/364967/LL_img_364967_4.jpg
JAXA 第一宇宙技術部門衛星測位技術統括 小暮 聡
(別紙)YADOCAR-iドライブの概要
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YADOCAR-i ドライブ
画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/364967/LL_img_364967_6.jpg
問題解決
画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/364967/LL_img_364967_7.jpg
YADOCAR-i ドライブ 仕組み
画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/364967/LL_img_364967_8.jpg
実証実験計画
情報提供元: @Press