平野 賢一助教らの研究グループは、CNT研究室、Japan TGCV study groupとして新規疾患の発見から診断・治療法の開発までを一貫してアカデミアで行ってきました。脂肪酸の一種であるカプリン酸(※3)がTGCVで細胞内に蓄積した中性脂肪を分解すること、また、カプリン酸がTGCVの心臓でのエネルギー源になり、症状を改善し得ることを見出し、カプリン酸を用いたカプセル剤を開発しました。
医師主導治験等医薬品としての開発を続ける一方で、治験参加の機会がなかった重症患者さんに対して栄養療法を行いました。栄養療法により、重症心不全から心機能が正常化した患者さんや冠動脈硬化が改善し6年にわたり狭心症がなくなった患者さんもおられます。本治療法は、安全かつ低コストであり、昨今の医療費高騰による保険医療制度への影響が少なく、また、他の希少難病や心臓疾患、内分泌代謝疾患にも応用が期待出来ます。CNT研究室は、アカデミア開発でデスバレー(※4)を渡り切り、本治療法を1日でも早く患者さんのお手元に届けるため、平成31年1月から中性脂肪研究センター(Triglyceride Research Center, TGRC)として研究開発を展開して参ります。
治療法についても希少疾病用医薬品の価格高騰が患者の大きな負担、保険制度を圧迫することが珍しくない。Lancet誌は、2015年に “Reducing the cost of rare disease drugs”というEditorialを発表している。後述のごとく本研究開発で用いるカプリン酸は既知の栄養成分であり、低コストでの提供が可能である一方、実用化に際しては製薬会社等の関心を引きにくい。食品会社も機能性食品等はあくまで「健常人が対象」であるため重症疾患患者への提供は難しい。