紫外線照射下での量子ドット混合マスターバッチ
量子ドット混合マスターバッチ
量子ドット混合マスターバッチの波長420nm照射下での発光スペクトル
GSアライアンス株式会社(Green Science Alliance Co., Ltd.:環境、エネルギー分野の先端材料を研究開発、製造販売する化学会社、本社:兵庫県川西市、代表取締役社長:森 良平工学博士)は、ペロブスカイト型量子ドットをポリエチレン樹脂に混合して量子ドット樹脂複合体(マスターバッチ)を作りました。産業化としては世界初です。このような複合体をもとに成型すると量子ドットシート、量子ドット樹脂成型品などが作れることが期待できます。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/154052/LL_img_154052_1.jpg
紫外線照射下での量子ドット混合マスターバッチ
量子ドット(Quantum Dot)とは、量子化学、量子力学に従う光学特性を持つナノスケールの超微細結晶である最先端材料です。量子ドットの大きさは通常0.5-9nmの直径というものすごく小さい構造体で、1個あたりの原子、分子数は10-1000個といわれており、人口原子とも言われています。ナノ結晶のサイズによってバンドギャップを調節することが可能であるため、粒径に依存した特徴的な発光特性を持ちます。よってサイズを変化せることにより発光波長が調整可能で、固体の蛍光体と比較してスペクトルの半値幅が狭いという特徴があります。さらに高い量子効率を持ち、一方で幅広い波長を吸収することができます。
基本的に、量子ドットは溶液(水、各種有機溶媒)に分散している状態ですので、低コストのプリント技術やコーティング技術に用いることが可能です。
量子ドットの発色は明るく、鮮やかに広範囲の波長の光が発光可能なうえに、高効率、長寿命、高い減衰係数を有するために、以下に示すように様々な用途で応用が期待されています。
1.太陽電池
2.ディスプレイ
3.生体イメージング、バイオマーカー、医療画像装置(がん細胞のイメージング、たんぱく質の分析、細胞の追跡など)
4.量子コンピューター
5.セキュリティタグ、セキュリティインク、偽造防止
6.量子ドットレーザー
7.トランジスタ
8.フォトニック結晶
9.LED
10.高密度固体メモリー
11.熱電材料
12.人口光合成
商業ベースとしてでも、このような液体状態の量子ドットを研究開発、製造している企業は世界でもまだ数が少ないですが、今回GSアライアンス株式会社は長年培われたナノ微粒子分散技術を応用して、ペロブスカイト量子ドットをポリエチレン樹脂と混合して世界初の量子ドット樹脂複合体(マスターバッチ)を作りました。樹脂固体中の量子ドット成分は0.5%以下でも非常に量子収率の高い明るいものができています。全半値幅は液体に分散した状態の量子ドットと同程度の19-24 nmぐらいです。
GSアライアンス株式会社は他にもZnS、InP/ZnS、CdS、CdSe、CuInS2(CIS)、CuInSe2、CuInS2/ZnS、PbS、AgInS2などの半導体系量子ドットや、シリコン量子ドット、グラフェン量子ドットなどの炭素系量子ドットも合成しており、これらの他の種類の量子ドットとポリエチレン以外の他の樹脂との複合体も作れるかは今後の研究課題です。
上記応用例を示した太陽電池、レーザー、LED、ディスプレイ、医学、バイオイメージング、偽造防止材料などの領域において、今回量子ドットを固体化できたことによってさらなる大きな可能性が広がります。
■量子ドット
量子ドットは直径1-9nm(原子、分子数10-1000)のサイズの超微細構造を有する微粒子で、そのサイズに基づいた特異的な性質を示し、物質の分子状態としての挙動とバルクとしての挙動の中間の状態の挙動を示すという点で非常に興味深い材料です。エネルギー準位、バンドギャップ、伝導帯、価電子帯といった概念は、通常のバルクサイズの半導体の概念がそのままあてはまりますが、一つ大きな違いがあります。バルク状態では、半導体結晶の粒径は、ボーア半径よりも大幅に大きくなり、励起子は自然限界にまで及びます。しかし、半導体結晶が小さくなると、物質のボーア半径のサイズにまで近づき、電子エネルギー準位はもはや連続ではなくなり、離れ離れになって行き、つまりエネルギー準位同士の間に小さな分離が生じます。
この分離したエネルギー準位の状態は、量子封じ込めと呼ばれ、この状態では、半導体物質はバルクではなくなり量子ドットと呼ばれる状態になります。
情報提供元: @Press