また、その体重の個人差と関係する遺伝子多型と、他の疾患と関係する遺伝子多型が共通するかどうかを検討する研究も進み、精神疾患においては、統合失調症と低い体格指数(BMI:Body Mass Index)値が相関するという知見が報告されています。本研究では、日本人データと白人データを用い、BMIと精神疾患の遺伝的相関性を再解析・統合的に検討し、統合失調症と低いBMI値(生まれ持ったやせ傾向)の遺伝要因が相関することを確認しました。臨床的に統合失調症患者さんは、肥満との関係性が強く言われていますが、少なくとも遺伝学的には「やせ傾向」と関係する可能性が高く、現在問題視されている肥満は、後天的な要因と関係する可能性を示唆します。
この遺伝的相関解析を用いて、精神疾患と体型について解析した初めての報告は白人によるものでした。その中では、統合失調症と生まれ持つやせ傾向(低いBMI値:Body Mass Index ※4)を報告しています。そして、昨年、理化学研究所でも、BMIに関連するさまざまな遺伝子を報告し、また、体型と様々な疾患や体質に関連を調べていますが、やはり統合失調症と低いBMI値の相関を報告しています( http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170912_1/ )
■研究の手法
本研究では、白人データと日本人を含むアジア人の遺伝的相関解析の結果を用い、精神疾患(統合失調症、双極性障害、うつ病)とBMIの関係性を再解析し、包括的に解析する手法(メタ解析注5)を用いた検討を行いました。白人データは、精神疾患を対象とした最大規模データであるPsychiatric Genomics Consortiumで報告されている結果(統合失調症:33,640 の統合失調症vs 43,456人の対照者、双極性障害:7,481人の双極性障害 vs 9,250人の対照者、うつ病:130,664人のうつ病 vs 330,470人の対照者)と、BMIに関しては、GIANT Consortiumの結果(最大322,154人)を用いて行いました。
また、アジア人データでは、統合失調症(日本人:藤田保健衛生大学を中心に収集し、理化学研究所で解析:1,987人の統合失調症 vs 9,788人の対照者)、双極性障害(日本人:藤田保健衛生大学を中心に収集し、理化学研究所で解析:2,964人の双極性障害 vs 61,887人の対照者)、うつ病(中国人を用いた結果:Converge Consortiumで収集:5,303人の女性うつ病 vs 5,337人の女性対照者)の関連解析から得られた結果を、また、BMIに関しては、理化学研究所で解析された結果を用いました(Akiyama et al. 2017 Nature Genetics:158,284人)。